ドイツ語講読c
 Directed Reading in German c
 担当教員:渡辺 将尚(WATANABE Masanao)
 担当教員の所属:人文社会科学部人文社会科学科グローバル・スタディーズコース
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:演習
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
「ドイツはなぜナチズムへと突き進んでしまったのか」
1933年1月30日,ヒトラーが首相に任命され,ついに念願の政権の座を手に入れることになりました。しかしナチ党人気は,その遥か以前,20年代後半からすでに高まりを見せていました。ヒトラーの演説には多くの聴衆が詰めかけ,巧みな話術に熱狂し,また酔いしれました。彼の演説を聞いていると,第1次大戦の敗戦によって課せられた重い戦争責任のもとにあえぐドイツにも,再び希望の光が差していると信じることができたのです。そうした国民からの広い支持によって誕生したヒトラー政権のもと,やがてドイツは第2次大戦,さらにはユダヤ人等の大量虐殺へと突き進んでいくことになります。
本授業では,ヒトラーの演説記録・歴史資料・当時の新聞記事・書籍等の文字資料の読解を中心に,ドイツがなぜそれほどまでの状況に至ってしまったのかについて考察します。併せて,使用するドイツ語に関して詳しい文法説明および練習問題を行うことによって,ドイツ語力の強化を目指します。

【授業の到達目標】
1)文法学習用に作られたドイツ語ではなく,ドイツ人が実際に使用する生のドイツ語を理解し(一部の簡単な表現については、実際に自分でも使えるようにする),その内容を日本語で的確にまとめ発信できるようになる。
2)今なおドイツの国家運営に大きな影響を及ぼしている出来事の詳細を知ることにより,現在のドイツ(語圏)の社会をより深く理解できるようになる。
3)ドイツの事例を通じて,自国の社会のあり方や問題点について考えることができるようになる。

【授業概要(キーワード)】
第1次大戦,ヴァイマール共和国,ナチズム,第2次大戦,ホロコースト

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:1~25%
A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
この授業は,現在のドイツおよび世界のあり方に大きく影響した出来事について考察することを通じて,国際社会に関する高度な理解力を養うために編成される科目です(グローバル・スタディーズコースのカリキュラム・ポリシー)。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
10.人や国の不平等をなくそう
16.平和と公正をすべての人に

【授業計画】
・授業の方法
1回の授業は、以下のように構成されます。
0.予習
前の回に配付される「背景と単語プリント」と「本文プリント」に従って行います。「本文プリント」には,あらかじめ授業者による「読解のためのヒント」が掲載されていますので,それに従って試訳を作成した上で授業に臨んでください。
1.必要に応じて背景説明(写真資料等を使用)
2.文字資料読解・考察
※必要に応じて,さらに文法説明を加えます。
3.練習問題
「復習プリント」(行う際にその場で配ります)により,その日に学んだ文法事項・表現を復習し,実際に自分でも使える(つまり,それを使って会話できる)ものにしていきます。
4.次回の「背景と単語プリント」を配付します。
・日程
※「ドイツはなぜナチズム、大量虐殺、第2次大戦へと突き進んでしまったのか」を考える上で重要な出来事を時系列で追っていきます。各テーマ1回ないし2回の授業を使う予定です。
第一部 ナチズムへと至る過程
1.第1次大戦と「背後からの一突き」論
2.ヴァイマール共和国とは何だったのか?(1)ー客観的な視点、現在の「ドイツ基本法」との関わり
3.ヴァイマール共和国とは何だったのか?(2)ーヒトラーの見解
4.政権掌握前のヒトラー演説ー巧みな演説術と人々の熱狂

第二部 ユダヤ人等の大量虐殺へと至る過程
1.「ニュルンベルク法」
2.パンチ式カードの功罪
3.収容所(1)ー被害側の記録、ヴィクトール・フランクル『夜と霧』
4.収容所(2)ー加害側の記録、アウシュヴィッツ収容所長の手記

第三部 第2次大戦へと至る過程
1.「人生最良の日」ー1935年「英独海軍協定」
2.ポーランド侵攻(1939年)ー東欧は我が庭
3.どこまでも拡大する「ゲルマン」ー『ヒトラーのテーブルトーク』

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
〇背景説明:ナチズムを理解するために必要なキーワードがいくつか登場します。説明をよく聞いてください。
〇ドイツ語の読解:その都度必要な文法事項をまとめます。1年次の教科書を持参し,参照しながら聞くことも有効です。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
次回の予習をするとともに,前の回でとりあげた範囲をもういちど読み直しておいてください。

【成績の評価】
・基準
主体的な参加の度合い,知識の修得の度合い,理解の度合い,汎用的技能(論理的思考力・文章表現力など)取得の度合いのそれぞれの項目について判定し,その合計点を用いて評価します。特に,ナチズムがドイツに浸透していく過程について的確に説明できる能力が身に付いているかを重視します。
・方法
授業への取り組みとレポートで評価します。授業への取り組みでは,主に主体的な参加の度合い,知識の修得の度合い,理解の度合い,レポートでは主に汎用的技能(論理的思考力・文章表現力など)取得の度合いを見ます。
授業への取り組み60点、レポート40点
※ただし,レポート提出は必須とします。また,全授業時数の3分の2以上出席していなければなりません。

【テキスト・参考書】
プリントを配付します。
また,教員が文法表を持参し,必要に応じて黒板上に提示します。

【その他】
・学生へのメッセージ
外国語学習は,それ自体で十分目標になり得ますが,同時にいろいろな問題を考えるための非常に有効な手段にもなります。本演習では,そのどちらの側面をも視野に入れ,両者の相乗効果をねらいます。つまり,ドイツ語文をきっかけに問題を考えることによって,ドイツ語能力が向上し,また,ドイツ語能力が向上することによって,さらに様々な問題をより深く考察できるようになる,ということです。
・オフィス・アワー
木曜日12時〜13時,渡辺将尚研究室。
※会議・出張等が入る場合があります。事前にメール等で照会することをお勧めします。

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