ドイツ語講読d
 Directed Reading in German d
 担当教員:渡辺 将尚(WATANABE Masanao)
 担当教員の所属:人文社会科学部人文社会科学科グローバル・スタディーズコース
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:演習
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
「文学でたどる戦後ドイツの歩み」
1950年代,西ドイツの経済は見事に復活し(「経済奇跡」),人々はナチズムという一時の「病気」を経て,もとのまた「健全なドイツ」に戻ることができたと思いました。その後,欧州一の経済大国へと成長していく中で,経済の発展こそが「異常な過去」からの脱却の証であると考える人々が数多くいたことも事実です。しかし,そのような動きに警鐘を鳴らし,「過去」の問題がまだ過ぎ去っていないことを想起させ続けたのは,作家などの知識人たちでした。
本授業では,そうした作家たちの作品を読みながら,彼らが「過去」を含めて,戦後ドイツにどのような問題を見ていたのかについて考えます。

【授業の到達目標】
1)文法学習用に作られたドイツ語ではなく,ドイツ人が実際に使用する生のドイツ語を理解し(一部の簡単な表現については,実際に自分でも使えるようにする),その内容を日本語で的確にまとめ発信できるようになる。
2)今なおドイツの国家運営に大きな影響を及ぼしている出来事の詳細を知ることにより,現在のドイツ(語圏)の社会をより深く理解できるようになる。
3)ドイツの事例を通じて,自国の社会のあり方や問題点について考えることができるようになる。

【授業概要(キーワード)】
戦争責任,欧州一の経済大国,東西分裂,再統一

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:1~25%
A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
この授業は,日本にも大きく関わる戦後の問題を考察することを通じて,国際社会に関する高度な理解力を養うために編成される科目です(グローバル・スタディーズコースのカリキュラム・ポリシー)。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
16.平和と公正をすべての人に

【授業計画】
・授業の方法
1回の授業は、以下のように構成されます。
0.予習
前の回に配付される「背景と単語プリント」と「本文プリント」に従って行います。「本文プリント」には,あらかじめ授業者による「読解のためのヒント」が掲載されていますので,それに従って試訳を作成した上で授業に臨んでください。
1.必要に応じて背景説明(写真資料等を使用)
2.文字資料読解・考察
※必要に応じて,さらに文法説明を加えます。
3.練習問題
「復習プリント」(行う際にその場で配ります)により,その日に学んだ文法事項・表現を復習し,実際に自分でも使える(つまり,それを使って会話できる)ものにしていきます。
4.次回の「背景と単語プリント」を配付します。
・日程
※戦後ドイツの諸問題を考える上で重要な作品を時系列で追っていきます。各テーマ1回ないし2回の授業を使う予定です。
第一部 がれきの中からの再出発(1945年~50,60年代)
1.グルッペ47(47年グループ)
2.ラジオドラマの時代ー出版に必要な紙すら不足した時代

第二部 「過去」との対決の時代(60年代~80年代)
1.ベルリンの壁が落とした影(クリスタ・ヴォルフ『引き裂かれた空』)
2.父親世代への批判(1)ー自分の父親がナチズムの時代に生き,目の前で行われていたことを黙認していたのだとしたら(クリストフ・メッケル『隠し絵』)
3.父親世代への批判(2)ーナショナリズムというドイツ的病(ジークフリート・レンツ『国語の時間』)

第三部 再統一ドイツ
1.戦争犯罪者への温かな眼差しーベルンハルト・シュリンク『朗読者』
2.「過去」に拘泥するのは異常者ーマルティン・ヴァルザー『幼年時代の擁護』
3.ノーベル賞を受賞した女性作家

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
〇背景説明:戦後ドイツを理解するために必要なキーワードがいくつか登場します。説明をよく聞いてください。
〇ドイツ語の読解:その都度必要な文法事項をまとめます。1年次の教科書を持参し,参照しながら聞くことも有効です。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
次回の予習をするとともに,前の回でとりあげた範囲をもういちど読み直しておいてください。

【成績の評価】
・基準
主体的な参加の度合い,知識の修得の度合い,理解の度合い,汎用的技能(論理的思考力・文章表現力など)取得の度合いのそれぞれの項目につい て判定し,その合計点を用いて評価します。戦後のドイツがどのような問題を抱え,作家たちがその問題にどのように反応したのか,自分なりに説明できる能力を取得できたかどうかを重視します。
・方法
授業への取り組みとレポートで評価します。授業への取り組みでは,主に主体的な参加の度合い,知識の修得の度合い,理解の度合い,レポートで は主に汎用的技能(論理的思考力・文章表現力など)取得の度合いを見ます。 授業への取り組み60点、レポート40点 ※ただし,レポート提出は必須とします。また,全授業時数の3分の2以上出席していなければなりません。

【テキスト・参考書】
プリントを配付します。
また,教員が文法表を持参し,必要に応じて黒板上に提示します。

【その他】
・学生へのメッセージ
外国語学習は,それ自体で十分目標になり得ますが,同時にいろいろな問題を考えるための非常に有効な手段にもなります。本演習では,そのどち らの側面をも視野に入れ,両者の相乗効果をねらいます。つまり,ドイツ語文をきっかけに問題を考えることによって,ドイツ語能力が向上し,ま た,ドイツ語能力が向上することによって,さらに様々な問題をより深く考察できるようになる,ということです。
・オフィス・アワー
木曜日12時〜13時,渡辺将尚研究室。
※会議・出張等が入る場合があります。事前にメール等で照会することをお勧めします。

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