言語学特殊講義a
 Topics on Linguistics (a)
 担当教員:池田 光則(IKEDA Mitsunori)
 担当教員の所属:人文社会科学部人文社会科学科グローバル・スタディーズコース
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
 国際地域社会や多文化社会に関する高度な理解力を養い,グローバル化社会に関する広範な視野と見聞を持つようにするため,「言語類型論」の研究手法・成果について理解を深めることにより,世界の諸言語の多様性と普遍性のふたつの側面を知り,世界の諸言語を客観的に対象化する態度を身につけることを目的とします。
 言語類型論では,言語をさまざまな基準によって種々のタイプに分類することによって,人間の言語に共通する特徴(普遍性)と変異の幅(多様性)を解明します。たとえば,「S(主語),V(述語動詞),O(目的語)の語順」という基準では,6つのタイプ(SOV,SVO,VSO,VOS,OSV,OVS)[変異の幅]があり,日本語はSOV,英語はSVOに分類されます。また,世界の言語の8割程度はSOVがSVOのいずれかであり,これらが語順に関する普遍性(普遍的傾向)を示しています。
 この授業では,世界の様々な言語が言語類型論の基準においてどのようなタイプに分類されているかを概観しながら,世界の言語の多様性と普遍性を考えます。

【授業の到達目標】
(1) 「言語類型論」の研究手法と成果を理解することができる。【知識・理解】
(2) 日本語,英語や大学で学ぶ外国語の他に,数多くの世界の諸言語の実例に触れ,言語の多様性に目を向けることができる。【知識・理解】
(3) 人間の言語に共通する特徴(普遍性)を説明できる。【知識・理解】

【授業概要(キーワード)】
 言語類型論,言語の普遍性,言語の多様性

【科目の位置付け】
 グローバル・スタディーズコースの専門展開科目として,国際地域社会や多文化社会に関する高度な理解力を養い,グローバル化社会に関する広範な視野と見聞を持つようにするための科目である。

【授業計画】
・授業の方法
 主として下に挙げた《参考書》(1)と(2)を利用して諸言語の実例をプリントで紹介しながら,講義を進めます。
・日程
第1回 ガイダンス
第2回 言語類型論概説 (1) 言語類型論とは,(2) 言語の普遍性
第3回 音声・音韻に関する類型 (1) 母音,子音
第4回 音声・音韻に関する類型 (2) 音節構造,(3) 超分節素
第5回 名詞の文法範疇に関する類型 (1) 性,(2) 数
第6回 名詞の文法範疇に関する類型 (3) 定性,(4) 指示代名詞・人称代名詞
第7回 名詞の文法範疇に関する類型 (5) 数量類別詞,(6) 序数詞
第8回 動詞の文法範疇に関する類型 (1) アスペクト,(2) テンス
第9回 動詞の文法範疇に関する類型 (3) ボイス,(4) モダリティ,(5) 証拠性
第10回 形態に関する類型 (1) 主要部標示と従属部標示
第11回 形態に関する類型 (2) 接辞,(3) 格・人称等の融合
第12回 語順に関する類型 (1) S/O/Vの語順,(2) 名詞と修飾要素の語順
第13回 語順に関する類型 (3) 語順の一貫性
第14回 統語法に関する類型 (1) 関係節
第15回 まとめと学期末筆記試験

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
 ノートを取りながら講義を聴き,不明な点は遠慮なく質問して下さい。諸言語の実例と講義内容を関連づけて理解して下さい。(対面授業の予定です)
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
 ノートと配付資料を読み返し,講義内容を確実に理解して下さい。また,オフィスアワーを利用して教員に質問したり,《参考書》を読んで理解を深めたり,発展的事項の学習をするなどの努力を期待します。

【成績の評価】
・基準
 レポートと学期末試験を課し,知識の修得,理解の度合い,汎用的技能,参加の度合いのそれぞれの項目について判定し,その合計点を用いて判定します。言語類型論の考え方を理解していること,諸言語の資料からそれらがどのようなタイプに分類されるか,言語にはどのような普遍性があるかを的確に理解できることが合格の基準です。
・方法
 学期末筆記試験(ノート,配付資料,参考書の持ち込み可)80点,レポート20点,合計100点。なお,出席回数が授業回数の3分の2に満たない場合は単位認定の対象としません。

【テキスト・参考書】
《参考書》(購入する必要はありません)
(1) Martin Haspelmath, Matthew S. Dryer, David Gil, and Bernard Comrie (2005), The World Atlas of Language Structures,Oxford University Press. [オンライン版:https://wals.info/]
(2) リンゼイ・J.ウェイリー著 大堀寿夫,古賀裕章訳(2006)『言語類型論入門』岩波書店
(3) バーナード・コムリー著 松本克己・山本秀樹訳(1992)『言語普遍性と言語類型論』ひつじ書房
(4) 角田太作(2009)『世界の言語と日本語 改訂版』くろしお出版
(5) 山本秀樹(2003)『世界諸言語の地理的・系統的語順分布とその変遷』渓水社

【その他】
・学生へのメッセージ
「言語学概論」,「日本語学概論」,「英語学概論」のいずれかを履修しておき,言語研究で用いられる基本概念を理解しておいて下さい。それらの授業で学ぶ事項は理解しているものとして簡単な説明のみで授業を進めます。授業で取りあげる個々の言語についての予備知識は必要ありません。
・オフィス・アワー
 金曜日 12時から12時30分 および 16時30分から17時30分 池田光則研究室(メールアドレスは学部のHP,『学生便覧』に記載してあります)

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