【授業の目的】
本講義は、主に英独仏の憲法史と憲法問題を参照することで、日本国内の憲法問題をよりグローバルな視座から見つめ直すことをねらいとする。前半は、各国がたどった独自の憲法史を俯瞰し、現代立憲主義が抱える問題群を検討する。後半では、「女性の権利」、自己決定と人間の尊厳、民主主義の「敵」といった具体的問題について議論する。日本国憲法解釈論の枠組みにとらわれない思考法や視点を学習する。
【授業の到達目標】
①諸外国の憲法史を学ぶことにより、現代の憲法問題を相対的に見つめ直す視点を得ることができる。 ②諸外国の憲法問題を学ぶことにより、日本の憲法問題を相対的に見つめ直す視点を得ることができる ③諸外国と日本の憲法問題の共通性と特殊性を踏まえて、公共社会の課題に対する自らの考えを論理的に述べることができる。
【授業概要(キーワード)】
比較憲法学、憲法史、立憲主義
【科目の位置付け】
この授業は、憲法学の体系性を踏まえた専門的な知識を身につけるとともに、社会の複雑多様な問題を憲法の観点から論理的・批判的に深く考察する能力を身につけるものである。(人文社会科学部総合法律コースのディプロマ・ポリシー)
【SDGs(持続可能な開発目標)】
01.貧困をなくそう 03.すべての人に健康と福祉を 04.質の高い教育をみんなに 05.ジェンダー平等を実現しよう 10.人や国の不平等をなくそう 16.平和と公正をすべての人に
【授業計画】
・授業の方法
毎回、比較憲法論の諸問題を順次取り上げる。特に前半においては英仏独の憲法史を概観することで、憲法学の歴史性を検討する。後半においてはフランスのおける具体的事件を紹介し、同性婚やブルカ禁止といった問題を憲法上の観点から検討する。
・日程
1.ガイダンス 2.比較憲法学の方法 3.近代立憲主義の誕生~フランスにおける立憲主義の誕生 4.近代立憲主義の誕生~イギリス・ドイツにおける立憲主義の誕生 5.近代立憲主義の定着~イギリスにおける国会主権 6.近代立憲主義の定着~フランス第三共和政の安定化 7.近代立憲主義の危機~ドイツ・ヴァイマル体制の崩壊 8.現代立憲主義の危機~フランス・第三共和政の崩壊 9.映画鑑賞を通して比較憲法上の問題を考える 10.「戦う民主主義」~戦後ドイツの選択 11.「合理化された議会制」~戦後フランスの選択 12.人間の尊厳vs.個人の自由 13.女性の尊厳を守るためにブルカを禁止すべきか? 14.同性婚を認めることはできるか? 15.公立学校の教室に十字架を設置することは許されるか?
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
授業で配布されるレジュメを参考にしながら、記載されている判決文を熟読するなどして、講義内容を適切に把握すること。その上で、「答え」を教えてもらうのではなく、自分で主体的に考える努力をすること。授業中の質問には積極的に応答すること。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
①週3時間程度の学習時間を確保し、予習をしっかりしておくこと。レジュメ記載の用語の意味や判例の基本的内容を調べてくること。 ②授業後は疑問点や興味のある問題を自分で調べること。
【成績の評価】
・基準
2回のレポート提出を通して、知識の習得、理解の度合い、汎用的技能(論理的思考力、文章表現力)、参加の度合いを判定します。1)各国憲法史を踏まえた上で、現代日本の憲法問題についての自分の考えを論じることができる、2)法律学各分野に共通する法的思考の枠組みで問題を検討することができるといった点を基準とします。
・方法
中間レポートとして50点、期末レポートとして50点の配分で評価します。それぞれ、講義の前半および後半で取り扱ったテーマを選択し、自分の考えを論じてもらいます。
【テキスト・参考書】
代表的なテキストとしては樋口陽一『比較憲法〔第3版〕』(青林書院、2000年)がありますが、より読みやすいものもあります。講義の中で適宜紹介します。
【その他】
・学生へのメッセージ
特にヨーロッパの憲法史を概観することによって、日本の憲法学の普遍性と特殊性の両方を検討することができると思います。日本を見つめ直すという点でも、比較憲法は面白い領域です。
・オフィス・アワー
木曜15時~17時がオフィスアワーです。場所は人文社会科学部2号館3階です。メールでご連絡頂いても構いません。
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