経済法2
 Competition Law 2
 担当教員:宍戸 聖(SHISHIDO Sei)
 担当教員の所属:人文社会科学部
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:3年,4年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
 この科目では、日本の経済法の中核を成す独占禁止法(独禁法)を素材に、世界の経済法・競争法に共通する原理原則を概観する。市場の失敗に対応するための政府介入を認めるのが独禁法であり、独禁法は日本の競争政策を司る法といえる。米国やEUもそれぞれ競争政策を司る法を擁しており、各法の成立や変遷は異なるが、近年の経済のグローバル化に伴い各国の法解釈論に一定の収束がみられつつある。このような社会状況に鑑みて、本科目では、米国やEUの判例・議論も適宜参照しつつ、独禁法の基礎を学び、経済法・競争法の主要規定を網羅的に理解することを目的とする。

【授業の到達目標】
 1.経済法・競争法の全体像を把握したうえで、独占禁止法の主要な規制の内容とその経済的な背景を説明できる。具体的には、競争法がどのような理屈に基づいて各違反行為を規制しているかを理解することを⽬指す。【知識・理解】
 2. 独占禁止法の規律の根底にある倫理観・公平観を理解したうえで独禁法に関わる事案を読むことができる。【態度・習慣】

【授業概要(キーワード)】
競争政策・経済法・競争法・独占禁止法・反トラスト法・欧州競争法・消費者保護

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:26~50%
B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:26~50%

【科目の位置付け】
本科目は、独占禁止法に関わる専門知識の習得を通じて経済法・競争法の枠組みを把握し、新聞報道等を通じて実際の事例を⽬の当たりにした際に、経済法・競争法領域での思考方法を応用する力を培うためのものである。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
01.貧困をなくそう
05.ジェンダー平等を実現しよう
08.働きがいも経済成長も
09.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう

【授業計画】
・授業の方法
 パワーポイントを利用した講義形式を中心にしつつ、適宜グループディスカッション形式の授業も取り入れる。
・日程
16. 独占禁止法の思想と独占企業(諸外国の経済法の目的と現状を参考に)
17. 不公正な取引方法(概要、公正競争阻害性、制裁)
18. 不公正な取引方法:取引拒絶
19. 不公正な取引方法:不当廉売
20. 不公正な取引方法:差別対価
21. 不公正な取引方法:不当な顧客誘引
22. 不公正な取引方法:抱き合わせ販売
23. 不公正な取引方法:再販売価格の拘束
24. 不公正な取引方法:排他条件付取引・拘束条件付取引
25. 不公正な取引方法:不当な取引妨害
26. 不公正な取引方法:優越的地位の濫用
27. 景品表示法と下請法
28. 知的財産権と独禁法(21条:適用除外)
29. 独占禁止法の現代的課題(プラットフォームビジネス、アルゴリズム等)
30. 独占禁止法の現代的課題(社会格差、消費者の保護)

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
 各自教科書や事前配布資料の指定箇所を読了のうえ、適宜メモをとりながら講義を受講してください。なお、講義に必要な範囲内であればスマートフォン、タブレット、PC等の電子機器の利用も歓迎します。グループディスカッションでは、各講義の内容からテーマを提示しますので、そのテーマについてグループで話し合い、その成果をもとにリアクションペーパー1枚程度でご自身の議論を記載のうえ、講義終了時に提出してください。(※提出方法はメール等の電子的な手段に変更する可能性があります。詳しくは講義中にお知らせします。)
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
 講義で取り上げる各行為がなぜ競争法上問題視されるのかという観点から、行為が市場に及ぼす悪影響、行為が規制される理由を軸に理解しようとすることが競争法の知識習得の近道です。各講義の予習はテキストの該当箇所を読んでおくだけで十分ですが、復習では、講義で扱った概念をご自身の言葉で説明できるかどうか振り返りながら、テキストや講義資料を見返してください。ご自身の言葉で説明できるようになるまで復習することが望ましいです。わからなければ教員に質問してくださっても結構ですし、参考資料としてあげた文献を適宜読むことも理解を深めるうえで役立つと思います。

【成績の評価】
・基準
 経済法の基礎的な知識が習得できているか、新たな事案に直面した際に経済法の法的評価枠組みにあてはめた検討ができているかを軸に評価する。リアクションペーパーについては、講義で扱った新たな知識を用いて論理的な帰結を導き出せているかどうかも評価する。(知識の応用・論理性)
・方法
 定期試験60%、リアクションペーパー40%。履修者数や受講⽣の学習進度によって変更の可能性はあるが、原則、15回の講義のうち5回はグループワークを行い、その成果をリアクションペーパーとして提出することを求める。リアクションペーパーは8点満点、定期試験は60点満点として計算し、すべての点数の総計によって成績を評価する。定期試験は選択問題(15点分)と論述問題(35点分)で構成される。

【テキスト・参考書】
〈テキスト〉
 ・川濵昇ほか『ベーシック経済法(第5版)』(有斐閣、2020年)
〈参考書〉
 ・泉⽔⽂雄『経済法入門』(有斐閣、2018年)
 ・大橋弘『競争政策の経済学』(日経BP、2021年)
 ・⾦井貴嗣ほか編『経済法判例・審決百選(第2版)』(有斐閣、2017年)
 ・Einer Elhauge and Damien Geradin, Global Competition Law and Economics (2d ed. 2011).

【その他】
・学生へのメッセージ
 経済法・競争法は経済学的な理論や政策との密接な関わりのなかで法的な評価枠組みを形成してきた非常に独特かつエキサイティングな法領域です。ぜひ、一緒に奥深い経済法の世界を探求しましょう。
 なお、経済法1では独禁法の主要規定のうち、企業結合、私的独占、不当な取引制限を、経済法2では不公正な取引方法を中心に学ぶため、両科目を受講することが望ましいです。
・オフィス・アワー
毎週月曜日の15時から16時まで対面でのオフィスアワー(必要に応じてZoom等Web空間でも同時に)を設けます。また、授業の前後にも質問等を受け付けます。

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