行政法演習
 Seminar on Administrative Law
 担当教員:和泉田 保一(IZUMIDA Yasuichi)
 担当教員の所属:人文社会科学部人文社会科学科総合法律コース
 担当教員の実務経験の有無:
 担当教員の実務経験の内容(有の場合):教員は地方自治体の行政職経験者であり、関連事例をその経験に基づいて取り扱い、法律と現実の行政現場の架橋を試みる
 開講学年:3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:演習
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
≪市民の中の行政法≫
 市民生活との関わりにおいて、行政法的問題は具体的にどのように現れ、どのような解決が図られるか。
 私たちが市民として(または将来行政機関の職員として)行政法に関わる問題と直面するとき、それらは多くの場合、教科書や問題集に載っているような項目立てられ整理されたような形では現れてきません。時には複合的に、あるいは法的問題には見えないような形で現れてくるかもしれません。例えば、高層ビル建設計画によって何らかの近隣トラブルが生じる場合、都市計画法、建築基準法、更には地方自治法や自治体独自の条例、加えて、指導要綱や近隣の暗黙のルール等まで関係してくるのが常です。
 この演習では、そのように現れてくる行政法的問題について、まずは、分析的に論点を見出し検討し、できれば解決法まで探ってゆきたいと思います。

【授業の到達目標】
(1)行政法の基礎的知識について、自ら説明することができる。
(2)主体的に、行政法に関するテーマを設定、論点を発見・提示し、調査・研究することができる。
(3)上記について、議論することを通じて、具体的な行政法的問題について整理・解釈(場合によっては解決)するための思考手段を身につける。

【授業概要(キーワード)】
取消訴訟、情報公開争訟、住民訴訟、国家賠償訴訟、まちづくり

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25%
C-1.自分の意見をまとめて発表する機会がある。:1~25%
A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25%
C-2.事前学習(下調べ、調査等含む)をした上で、プレゼンテーションを行い、互いに質疑応答や議論を行う機会がある。:1~25%
A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:1~25%
C-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を発表し理解してもらえるようプレゼンテーション、質疑応答、リフレクションを行う機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
本講は、法律学分野の高度な「専門知」を獲得し、多様な場面で応用可能な法的知識とその運用能力を養うための、専門展開科目に位置付けられ、かつ、学生が自ら課題を見出し、その解決に向けて探求を進め、成果を実現する実践的な能力を身につけるための授業(人文社会科学部のカリキュラム・ポリシー)に該当する。
本授業を受講する前に、憲法や、行政法1を受講しておくこと、また、同時に行政法2、3、4を受講することが望ましい。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
11.住み続けられるまちづくりを

【授業計画】
・授業の方法
 行政法学の基本的項目の復習(テキスト講読形式による)とともにそれらに関連する近年の重要判例を読み、争点となっている問題やそれに対する裁判所の判断について把握し議論する。
 また、受講者の希望により、随時、具体的問題を題材にして、政策法務演習を行う場合もある。
 なお、人文ニュース'Agora'41-2(2009.10.1)P.4も参照。
・日程
 基本的には、テキスト順序通り、講読してゆく。また、取扱おうと考えている判例(一例)は次の通り。
・市議会における出席停止処分の司法審査対象性に関する最判R2.11.25
・ふるさと納税に係る総務省告示が地方税法の委任の範囲を逸脱し、違法とされた事例・最判R2.6.30
・公有水面埋立法の埋立承認は国の「固有の資格」に対するものか否かに関する最判R2.3.26
・地方自治体の議会による請求権放棄議決の違法性に関する最判H30.10.23
・環境保全協定の一部条項について法的拘束力が認められた事例・大阪高判H29.7.12
・路上喫煙防止条例による過料処分の違法性に関する東京髙判H26.6.26

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
 テキスト及び判例・事例について、報告箇所を分担し報告を行う。その際、報告に当たらない受講者にも質疑等の発言の機会がある。
 報告者は、報告日の数日前にレジュメ・資料をその他の受講者に配布し、全員がその判例やテーマについて事前に予習しておくこととする。
 演習時間中に考えた(又は考えが及ばなかった)り発言した(又は発言できなかった)内容について、関連するニュース等に注意し、随時、反芻・反省・否定・補強等を試みてほしい。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
1)テキスト講読:準備学習として、事前にテキストの該当箇所を読んでおくことが必須である(参考文献・判例等を読んでおくよう指示する場合がある。)。報告者に当たった場合はその準備、レジュメ作成の作業が加わる。
2)判例・事例報告:対象の判例・事例について概要を理解しておくことが必要である。報告者に当たった場合はその準備、レジュメ作成の作業が加わる。
3)必要に応じて、補足や再検討を指示する場合がある。
 準備学修に必要な学修時間の目安は以下のとおり。
・事前準備(各回):1時間×15回
・報告準備(報告該当者):5時間×6回
・補足、再検討(必要による):3時間×5回程度


【成績の評価】
・基準
 出席や調査活動状況、レポート等の内容・発表、質疑等における発言による。これらについて、本学部の定める評価基準(①「主体的な参加の度合い」、②「知識の習得の度合い」、③「理解の度合い」、④「汎用的技能の習得の度合い」)に従って評価する。具体的には、次欄を参照。
・方法
①調査活動の状況や質問・議論の頻度等(20%)
②報告や判例研究における、前提知識部分(30%)
③報告や判例研究における、内容の深度(30%)
④報告や判例研究における、表現技術(20%)

【テキスト・参考書】
稲葉馨他『リーガルクエスト行政法(第4版)』有斐閣(2018年)。

【その他】
・学生へのメッセージ
 本講は法律学ですが、対象とする事象は行政です。従って、本講を受講することは、法律学に加え、行政の制度に関しても学修することになり、政策問題を扱う入り口でもあります。
・オフィス・アワー
 月曜日 14:40~16:10 和泉田研究室(人社棟3号館(C4)7階703号室)。
 但し、会議や出張等で不在にすることもあるため、確実に面談したい場合は事前に予約することをお勧めします。連絡先は、初回の授業でお知らせします。

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