労働経済学
 Labor Economics
 担当教員:増井 淳(MASUI Makoto)
 担当教員の所属:人文社会科学部非常勤講師
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:3年,4年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
労働経済学は、人と仕事の組み合わせの仕組みや、人々が与えられた時間をどのような労働にどれだけ費やすかということに焦点を向けます。市場に関する経済学の基礎的な概念を理解することは労働市場を分析する際にも有益ですが、そこで取引されるものは人間が供給する労働サービスであるため、通常の財・サービスを扱う場合とは若干異なる分析ツールを用いて議論を行う必要があります。以上を踏まえ、この授業の目的は以下の3点になります。
(1)ミクロ経済学の知識を用い、働き手と雇用主の意思決定がどう定式化されるかを理解すること。
(2)社会で働くにあたり自分がどんな価値観をもっているか、およびそれを経済理論にどう落とし込めるかを把握すること。
(3)現実の法制度が何を目的にどのような労働・雇用問題に対処しようとしているのかを理解すること。

【授業の到達目標】
(1)企業、労働者を取り巻く現実の労働環境を、経済モデルを用いて定式化することができる。【知識・理解】
(2)働き手の職業選択・労働時間選択および企業の採用・解雇行動の経済学的合理性を判断することができる。【知識・理解】
(3)経済理論と現実の労働問題とを関連付けて討議することができる。【態度・習慣】

【授業概要(キーワード)】
余暇-消費選択、留保賃金、企業の利潤最大化、男女の雇用機会均等化、雇用保護、準固定費用、非正規雇用、失業、社会的余剰、買手独占市場、最低賃金、ヘドニック・モデル、補償賃金格差、ファミリー・フレンドリー政策、人工知能

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:1~25%
C-1.自分の意見をまとめて発表する機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
カリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解したうえで履修すること。なお本授業を受講する前に、ミクロ経済学の履修が済んでいることを前提とする。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
05.ジェンダー平等を実現しよう

【授業計画】
・授業の方法
基本的にパワーポイントを用いて授業を行い、適宜、黒板も使用します。また教員による講義に加え、理解度を確認するために受講者に質問をしたり、現実の雇用・労働問題に関するディスカッションを行ったりします。原則的に対面で授業を実施しますが、社会情勢を鑑み、リアルタイム遠隔で授業行う可能性もあります。
・日程
第1回:イントロダクション【データで見る日本の労働市場】
第2回:労働供給(1)【労働者の効用最大化問題の定式化】
第3回:労働供給(2)【限界原理と代替効果・所得効果】
第4回:労働供給(3)【留保賃金の決定】
第5回:労働需要(1)【2つの生産要素を伴った利潤最大化問題】
第6回:労働需要(2)【代替効果と規模効果、アファーマティブ・アクション・プログラムと男女雇用機会均等】
第7回:労働需要(3)【雇用調整費用、準固定費用、労働者派遣法の改正】
第8回:労働市場の均衡(1)【各種余剰の計算】
第9回:労働市場の均衡(2)【移民労働力流入の影響】
第10回:労働市場の均衡(3)【買手独占均衡とパート労働の市場】
第11回:補償賃金格差(1)【右上がりの無差別曲線と等利潤曲線】
第12回:補償賃金格差(2)【ヘドニック賃金曲線と補償賃金格差】
第13回:補償賃金格差(3)【ファミリー・フレンドリーなフリンジ・ベネフィット:ベネッセのカフェテリア・プラン】
第14回:人工知能の発達とこれからの働き方
第15回:最終試験

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
基本はパワーポイントを用いた講義形式です。授業を聞きながら配布資料の空白を埋めたり、問題を解いたりしていただきます。また、適宜、授業内容について個人やグループで考える時間を設けます。理解しにくい内容がある場合には周囲の友人や教員に質問をし、疑問を解消してください。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
希望者には授業で用いたパワーポイントのファイルを配布しますので、それを使って授業内容の復習を行うことをお勧めします。また、全授業を通じて復習課題を3回課しますので、理解を深めるために活用してください。

【成績の評価】
・基準
下記の授業目標を達成できているかどうかが、成績評価の基準になります:
(1)企業、労働者を取り巻く現実の労働環境を、経済モデルを用いて定式化することができる。
(2)働き手の職業選択・労働時間選択および企業の採用・解雇行動の経済学的合理性を判断することができる。
(3)経済理論と現実の労働問題とを関連付けて討議することができる。
具体的には、以下の項目が達成できているかどうかを考慮します:
(1)⇒企業、労働者を取り巻く現実の労働環境の構造を理解し、それを記述する適切なフレームワークを選ぶことができる。
(2)⇒数式を用いて個々の労働者や企業の行動を記述することができ、該当する最適化問題を解くことができる。
(3)⇒個々の経済主体の最適化行動や市場均衡において得られる結果に基づいて、現実の労働問題の本質や対応策について自分の考えを述べることができる。
・方法
(1)全3回の復習課題への取り組み:30点(10点×3回)(2)最終試験の成績:70点

【テキスト・参考書】
テキストは指定しません。授業で使用するパワーポイントのコピーを配布します。参考書は下記の通りです:
(1) 大森義明 『労働経済学』日本評論社 2008年 3456円
(2) 川口大司 『労働経済学--理論と実証をつなぐ』 有斐閣 2017年 3024円

【その他】
・学生へのメッセージ
(1) ミクロ経済学を履修していることが、この講義の履修の前提となります。
(2) 経済理論を用いた分析が中心になりますが、皆さんが働き手の立場から労働や余暇にどのような価値を見出すかを考えることで、分析の内容が実感を伴ったものになるはずです。理論から示唆される結論と現実との共通点や差異を感じ取りながら、社会で働く上での参考となる知識・情報を得ていただけたら幸いです。
・オフィス・アワー
授業時間外に学生の質問に答えるオフィスアワーについては、授業初回時に提示します。

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