【授業の目的】
村上春樹の初発期における文学的営為を概説し、具体的なテクストの読解を通してその特質を解明することを目指す。 本講義の題材としてとりあげるのは、作家本人によってその特質を《デタッチメント》と明言されるテクスト群であるが、実のところ、そこに見られるのは先行する世代の文学に対する批評意識である。本講義においては同時代作家の動向をも視野に収めつつその具体的な様相を探究したい。
【授業の到達目標】
1970~80年代にかけての日本現代文学史の概略を踏まえて、テクストの構造を説明できる。【知識・理解】 現代文学を方法論的な見地から理解する態度を身につけ、授業を踏まえた分析レポートにそれを表現できる。【態度・習慣】
【授業概要(キーワード)】
日本現代文学 ポストモダニズム サブカルチャー 批評
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25% C-1.自分の意見をまとめて発表する機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
この授業は、文化と社会について理論的に考察することで、健全な批判精神に裏打ちされた幅広い知識を習得するものである。
【授業計画】
・授業の方法
プリント資料とコンピュータスライドを使用する(スライド資料は非配布)。中間レポートの提示を求め(提出日については数週間前から予告する)、その講評を行う(提出レポートの幾つかは匿名で引用し、受講者にプリント配布する)。その他に授業内に作成する小レポートの提出が求められる回、授業内に発言を求められる回が随時ある。
・日程
1 ガイダンス 2 政治の季節 ―1960年代 3 1970年という断層 4 初期春樹評価の諸問題 5 1970年代以降の作家にとっての「言葉」と「世界」 6 『風の歌を聴け』における断章形式 7 『風の歌を聴け』におけるミステリの可能性 8 『風の歌を聴け』における〈物語〉の復活 9 『風の歌を聴け』におけるアイデンティティのゆくえ 中間レポート提出(6月11日を予定も変更可能性あり、授業内で2週前から告知) 10 中間レポートの解説 11 『1973年のピンボール』における「政治」と「聞くこと」 12 『1973年のピンボール』における「ピンボールマシン」 13 『1973年のピンボール』と「政治と文学」 14 『1973年のピンボール』におけるサブカルチャー 15 試験と解説
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
提示・配布された資料を利用して(スライド資料は上映のみで、配布しない)、自分のノートを作成する。授業内で発言を求められた場合や、小レポートの作成を求められた場合には積極的に取り組む。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
本授業科目においては、以下の課題等を課す。必要な学修時間の目安は1時間/週。 ・予告された期日までに、テキストを確実に読了すること。 ・ノートを整理しながら、レポート及び試験に備える。 ・課題が提示された回は、それを期日までに確実にこなす。
【成績の評価】
・基準
・社会的背景を踏まえて文学テクストの特定の部分を理解し、論理的に記述できる。 ・講義内容を筋道立てて理解し記述した上で、それを別のテクストに応用できる。 上記の点について、中間レポートとまとめの試験、及び授業内提出物によって評価する。 出席点はない。
・方法
評点(100点満点)の内訳は、中間レポート30点、まとめの試験60点、授業内提出物10点。
【テキスト・参考書】
以下のテキストと参考書を事前に示すが、授業内で参考文献はその都度紹介する。 [受講者が購入すべきテキスト]村上春樹『風の歌を聞け』『1973年のピンボール』(何れも講談社文庫)(Kindle版も可) [参考書]加藤典洋『村上春樹イエローページ』
【その他】
・学生へのメッセージ
受講者に好悪の判断や感想文を求めてはいません。文化的なテクストを分析する視点を身につけて欲しいと願っています。
・オフィス・アワー
授業時間外に学生の質問にこたえるオフィスアワーについては、木曜日14:40〜16:10 森岡研究室(人文社会科学部1号館4階425室)に設定します。ただし、その他の時間についても相談に応じますので、メールなどでアポイントをとってください。
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