地域の課題を熟議する(共生を考える)
 Deliberating Regional Issues (Living with Diversity)
 担当教員:源島 穣(GENJIMA Yutaka)
 担当教員の所属:人文社会科学部人文社会科学科地域公共政策コース
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:1年,2年,3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
今日の日本は、かつての高度経済成長時代と異なり、財政赤字や人口減少に直面しています。場合によっては、増税や公共サービスを廃止しなければなりません。こうした不利益を最小限に抑えるためにも、限られた予算を使っていかに政策を「効果的」に実施するかが重要になります。ここでの「効果的」とは、性別、世代、職業を問わずあらゆる人々が可能な限り不利益を被らずに生活を送れること――人と人の共生が可能になること――を意味します。
 そこで、この授業は地域をめぐる代表的な政治課題(公共事業、農業、コンパクトシティ)を題材に、「効果的」な政策について「熟議」することを目的とします。「熟議」とは、課題に対する正確な情報の取得を前提に、参加者間の意見共有を通じて、解決に向けた合意を形成していくことを意味します。そのため、自分の意見を言うだけの「議論」や、相手を論破し、勝ち負けを決める「ディベート」とは異なります。「熟議」を通じて、「効果的」な政策についての思慮を深める手がかりとします。

【授業の到達目標】
この授業を履修した学生は、
1)地域の課題に関する情報(現状、背景、原因、既存アプローチの限界)を正確に把握することができる。
2)地域の課題に対する意見を表明できる。
3)グループワークを通じて、協調性やプレゼンテーション能力を高めることができる。

【授業概要(キーワード)】
学生主体型授業(アクティブラーニング)、熟議民主主義、地域内・地域間共生

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25%
B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:26~50%
A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25%
B-2.事前学習(下調べ、調査等含む)をした上で、他の学生の意見を尊重しつつグループとしての結論を出すために議論をする機会がある。:26~50%
C-2.事前学習(下調べ、調査等含む)をした上で、プレゼンテーションを行い、互いに質疑応答や議論を行う機会がある。:1~25%
A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:1~25%
B-3.習得した知識を活用する中で、学生グループがテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、互いの考えを理解し合う中から新たに独自の意見や考え方を創り出す機会がある。:26~50%
C-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を発表し理解してもらえるようプレゼンテーション、質疑応答、リフレクションを行う機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
この授業は、地域の課題についての情報を正確に把握するだけでなく、意見交換を通じてその解決策を構想する能力の習得を目指します。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
08.働きがいも経済成長も
09.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを

【授業計画】
・授業の方法
地域の代表的課題を3つ取り上げ(公共事業、農業、コンパクトシティ)、各課題について以下のプロセスで授業をすすめます。
1)課題の現状、背景、原因、解決に向けた既存アプローチの限界について映像資料や新聞記事、学術文献などを活用して説明します。
2)履修者をグループ分けし、課題解決についてディスカッションを行います。その内容を各グループでまとめ、発表を行います。
・日程
主要なテーマと順序は次のとおりです。
(1)講義のすすめ方とガイダンス
(2)「熟議」の意味と重要性
(3)~(4)「公共事業」の課題についての説明
(5)「公共事業」についてのディスカッション
(6)ディスカッション内容の発表
(7)~(8)「農業」の課題についての説明
(9)「農業」についてのディスカッション
(10)ディスカッション内容の発表
(11)~(12)「地方都市」の課題についての説明
(13)「地方都市」についてのディスカッション
(14)ディスカッション内容の発表
(15)授業のまとめ(小レポート)

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
・課題について説明する週では、多くの情報を提示します。事前に入手したレジメに線を引くなどして、情報の要点をつかんでください。
・グループごとにディスカッションを行う週では、自分の意見を積極的に表明するだけでなく自分と異なる意見を受け入れる姿勢も求められます。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
予習・復習の時間を毎週2時間程度確保し、以下の内容に取り組んでください。
<予習>
・レジメを授業前にwebclassにアップします。ですので、必ず事前にレジメを入手してよく読んでおきましょう。その上でレジメに線を引くなどして、理解できなかったことなどをまとめておいてください。
<復習>
・レジメを見直して、理解できなかった点を自分で調べておきましょう。あるいは、教員に質問するなどして、次回の授業までに解決しておくのが望ましいです。
・以下の参考書も授業と並行して読み、この授業の趣旨のさらなる理解に努めてください。

【成績の評価】
・基準
1)地域の課題に関する情報を正確に把握している。
2)自分の意見を持つと同時に、他者の意見も理解している。
3)ディスカッションでの役割を全うできている。
・方法
平常点:30点
ディスカッションへの主体的参加の度合い:60点
小レポート:10点
出席を重視します。無断欠席や遅刻は認めません。

【テキスト・参考書】
テキスト:特に指定しません。
参考書:杉田敦『政治的思考』(岩波新書)、湯浅誠『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(朝日新聞出版)、田村哲樹・近藤康史・堀江孝司『政治学』(勁草書房)

【その他】
・学生へのメッセージ
今日の日本は、もはや政治家や行政に「任せきり」では、「不利益」分配を避けられなくなりつつあります。身近に存在する政治課題について「知恵を出し合う」機会を提供したいと思います。
・オフィス・アワー
火曜日 12:30~14:00 源島研究室(人文社会科学部2号館4階402)。
それ以外の日時は事前に連絡ください。適宜調整します。

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