【授業の目的】
人々がお互いに助け合い共に生きていくことは人間の本源的な営みといえる。この営みを共生と呼ぶならば、社会が分断され対立が起こり格差が拡大した際や災害・飢饉・疫病・戦争といった危機時などに、しばしば共生の関係は破綻したり、あるいは強められたりした。人類が培ってきた共生の営みは世界各国での生存権の確立と発展にもつながっていく。近年、世界や日本で格差社会化が進むとともに大震災やコロナ禍のために、国内外では生存と共生をめぐる様々な課題が提出され、生存権の存在意義が問い直されている。こうした生存と共生をめぐる歴史を現代の観点から考察し、その意義や課題について学ぶことを目的とする。
【授業の到達目標】
生存権が人類史のなかでどのように形成されたのか、生存権が認められるまでには世界でどのような対立と問題があったのかについて、共生を求める思想・運動や基本的人権形成の諸段階、日本国憲法の制定過程などをふまえて説明できる。【知識・理解】 現代世界や日本における生存と共生をめぐる課題について認識し、生存権をめぐる今日的な課題について考察することができる。【態度・習慣】
【授業概要(キーワード)】
生存権、所有権、環境権、自然法、基本的人権、憲法、国連憲章、民衆運動、食糧、東日本大震災、新型コロナウィルス、生活保護、アンダークラス
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:76~100%
【科目の位置付け】
本学の教育の基本方針である「社会に求められる豊かな人間力」に必要な生存と共生に関する基礎的な思考力を養う科目である。現代を他者と共に生きるために必要となる多様なものの見方を自ら作り上げる力を養うために、自然と人間の共生、人と人の共生、社会と個人の関係性、事象の多元的解釈などを題材とする授業を行う。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
01.貧困をなくそう 02.飢餓をゼロに 03.すべての人に健康と福祉を 05.ジェンダー平等を実現しよう 07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに 08.働きがいも経済成長も 10.人や国の不平等をなくそう 11.住み続けられるまちづくりを 16.平和と公正をすべての人に 17.パートナーシップで目標を達成しよう
【授業計画】
・授業の方法
全回オンライン・オンデマンド方式で実施する。受講にはPDFを閲覧できWordを読み書きできる通信環境が必要である。WebClassに毎回掲載する講義資料を読み自由な感想・意見を書いたメモを毎回提出する形で受講する(講義資料の掲載からメモ提出まで1週間の期間を毎回確保する)。メモに書かれた意見や質問に応える双方向の授業とする。期末に講義全体の要旨をまとめるレポート課題に取り組み自己の理解を確認する。
・日程
本講義の計画は以下の通りです。 事前 ガイダンス資料 第1回 「生存と共生」という観点 第2回 基本的人権の歴史 第3回 生存権の形成史 第4回 市民革命と生存権(1) 第5回 市民革命と生存権(2) 第6回 生存権と所有権 第7回 食糧蜂起とモラル・エコノミー 第8回 地方民衆の食糧確保(1) 第9回 地方民衆の食糧確保(2) 第10回 大正の米騒動(1) 第11回 大正の米騒動(2) 第12回 日本国憲法と生存権 第13回 生存権と現代社会 第14回 持続可能な社会へ求められるもの 第15回 現代から学ぶこと
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
WebClassに毎回掲載された講義資料をよく読み、自分なりの感想・意見を自由にメモに書き提出する。期末に講義全体の要旨を正確にまとめるレポート課題に取り組む。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
2単位の本授業科目では90時間の学修が必要と文科省が定めています。オンデマンド方式でおこなう全15回の本講義では1回あたり平均すると6時間の学修が求められることになります。WebClassに掲載した講義資料を熟読するとともに、そこで紹介された参考文献を図書館やインターネットで自分なりに調べて理解を深めてください。また、講義資料の用語でわからないものは事典やインターネットで調べて理解しながら講義資料を読了してください。また、毎回のメモの作成にあたっても講義資料を全体的に理解できているのかを確かめながら時間をかけて自分なりの感想・意見を考えて書くように努めてください。
【成績の評価】
・基準
毎回のメモではWebClassに毎回掲載した講義資料をよく理解した上で自分の感想・意見をまとめることができたか、期末レポートでは講義資料全体の要旨の正確なまとめをするなかで授業の到達目標で示した諸点の理解ができたかどうか、を合格の基準とします。
・方法
毎回のメモ14回×5点=70点、期末レポート30点の配点とする(100点満点)。なお、メモは各回200字以上、期末レポートは2000~2200字とする。
【テキスト・参考書】
事前のテキストとして個別に指定するものはありません。WebClassに毎回掲載する各講義資料で参考文献を適宜紹介します。また、講義本文とは別にプリント資料をWebClassに掲載する回もあります。主な参考文献は以下の通り。 遅塚忠躬『ロベスピエールとドリヴィエ』(東京大学出版会、1986年)、岩田浩太郎『近世都市騒擾の研究』(吉川弘文館、2004年)、橋本健二『アンダークラス』(ちくま新書、2018年)、など。他に適宜講義で紹介する。
【その他】
・学生へのメッセージ
高校で地歴・公民科目を学んでいない学生も理解できるようにわかりやすい講義を心掛けます。積み重ね型の講義なので、WebClassを通じて毎回講義資料を読了しメモを提出することが大事です。
・オフィス・アワー
月曜の正午から13時まで 岩田研究室(人文社会科学部2号館3階) 連絡先:iwata@human.kj.yamagata-u.ac.jp
|