学校カウンセリングの実践と課題
 Practice and Tasks of School Counseling
 担当教員:松﨑 学(MATSUZAKI Mabanu),小林 知可志(KOBAYASHI Chikashi)
 担当教員の所属:大学院教育実践研究科
 担当教員の実務経験の有無:
 担当教員の実務経験の内容(有の場合):「発達心理学」「学校心理学」「生徒指導・進路指導」科目担当者として、また、SCとして公教育のあり方等にかかわってきた経験を踏まえて、それぞれの子どもがよく育つ喜びを共有したい。
 開講学年:1年,2年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:教育実践研究科1年  科目区分:必修科目 
【授業の目的】
学校における援助チームには、その当該児童・生徒の保護者が十分に組み込まれていない現状がある。保護者を交えたチーム援助を機能させるために、解決志向アプローチの考え方とその具体的方法を演習を通して学習する。 また、学校での一次的・二次的援助サービスには、かえって悪循環を創出してしまう介入が多々含まれている。その悪循環の構造を理解しつつ、それらの介入を、子どもの自立支援につながるものであるかどうか、整理することのできる視点で整理し、それらに替わるより適切な介入法を学習する。

【授業の到達目標】
 三次的援助サービスとして、不登校などへの支援の実践的方法として、チーム援助とそれを機能させる解決志向アプローチを身につけることができる。
 一次的・二次的援助サービスとして、問題を創り出さない日常のかかわりのあり方と具体的コミュニケーション技法を身につけることができる。
 それらを通して、学校における心理教育的援助サービスを包括的に機能させる方向性を身につけることができる。

【授業概要(キーワード)】
一次的・二次的援助サービスの適正化、アドラーの個人心理学による“不適切な言動の目標”・“問題の所有”と基本技法、SFAの考え方と基本技法、“問題モード”から“解決モード”へ

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:51~75%
B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:76~100%
A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:51~75%
B-2.事前学習(下調べ、調査等含む)をした上で、他の学生の意見を尊重しつつグループとしての結論を出すために議論をする機会がある。:76~100%
A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:26~50%

【科目の位置付け】
教育実践研究科の共通科目群の「教育相談・生徒指導」に位置する必修科目である。本研究科の理念である「理論と実践の融合」およびすべてのDPに関連する科目である。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに

【授業計画】
・授業の方法
 対面授業ないしはオンライン授業とします。
 基本的には演習(グループ討議、具体的場面での支援に関する事例研究,ロールプレイ等を含む)を中心に進めます。
・日程
第1回:オリエンテーション/リレーションづくりと学校カウンセリングに関する現状の問題意識の明確化(小林知可志・松﨑学)
第2回:学校心理学の視点/心理教育的援助サービスに関する理解と課題との関連検討(松﨑学・小林知可志)
第3回:「悪循環を断つ」/アドラー心理学による問題行動の目標理解と基本的対応(松﨑学・小林知可志)
第4回:主体的問題解決支援/子どもの問題への支援方法:“反映的な聴き方”“問題解決への模索”(松﨑学・小林知可志)
第5回:「責任感を育てる」/注意・叱責・罰に替わる対応:“I-メッセージ”“選択の余地を与える”(松﨑学・小林知可志)
第6回:「良循環を創出する」/“ほめる”に替わる“勇気づけ”(松﨑学・小林知可志)
第7回:人間関係と学力他/実践校によるそれらの要因の力動的なメカニズム理解(松崎学・小林知可志)
第8回:前半のまとめと後半に向けて(松﨑学・小林知可志)
第9回:三次的援助サービス/SFA演習①リソース探し(小林知可志・松﨑学)
第10回:三次的援助サービス/SFA演習②例外探し(小林知可志・松﨑学)
第11回:三次的援助サービス/SFA演習③未来志向アプローチ(小林知可志・松﨑学)
第12回:三次的援助サービス/SFA演習④外在化(小林知可志・松﨑学)
第13回:三次的援助サービス/SFA演習⑤保護者対応(小林知可志・松﨑学)
第14回:三次的援助サービス/チーム援助のロールプレイとまとめ(小林知可志・松﨑学)
第15回:全体的なまとめ/トータルな援助サービスのあり方についての理解確認(小林知可志・松﨑学)

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
特に現職教員にあっては、新しい考え方と方法を学ぶとき、これまでの自分の中に根付いた考え方と方法がその学習に抵抗を示すときがある。それはそれで、自分なりにどう整理していくかが重要です。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
予習としては、テキストや配付された資料において、専門用語など、関連の辞典等である程度調べて臨むようにしてください。
もともともっていた考え方や方法と何がどう違うのか、自分で考えたことや感じたことを、付箋紙などのメモで残しておくと、自分の考えの変容などを、最終レポートで整理するのを助けてくれることになります。

【成績の評価】
・基準
最終評価では、それぞれの理論や概念の理解と学びにおける取り組みへの応用、内面的には実践への意欲と教育観・子ども観等の見直しと整理の進み方などに評価のウエイトを置きます。
C(合格に必要な最低限度)基準:実態に応じてカウンセリングを実践できる(現職)。カウンセリングの意義とその方法を説明できる(ST)。
その応用可能性や自己の見直しの程度や実践可能性については、より発展的な評価(S・A・B)に対応するものとします。
・方法
以下の評価の観点に則り、総合的に評価する。①日常的には、事前学習の程度と討論における集団への貢献の程度(25%)。②途中での数回のレポート(25%)。③最終レポート(全体表の整理と自己変容など)(50%)

【テキスト・参考書】
[テキスト]石隈利紀・田村節子(著)『チーム援助入門―学校心理学・実践編―』図書文化社、黒沢幸子(著)『スクールカウンセリング・ワークブック』金子書房、野田俊作・萩昌子(著)『アドラー心理学でクラスはよみがえる』創元社
[参考書]石隈利紀(著)『学校心理学』誠信書房、河村茂雄(著)『日本の学級集団と学級経営』図書文化社、吉川悟(編)『システム論から見た学校臨床』金剛出版、森俊夫・黒沢幸子(著)『解決志向ブリーフセラピー』ほんの森出版、岸見一郎(著)『アドラー心理学入門』KKベストセラーズ

【その他】
・学生へのメッセージ
自分の教育実践を束ねることのできる理論的枠組みをもてるようになることを願っています。
・オフィス・アワー
事前の連絡をお願いします。(ep266@kdeve.kj.yamagata-u.ac.jp)。

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