【授業の目的】
樹木,キノコ,シロアリなどの生理・生態的特徴を,それらの構成成分の構造と性質から解析し,化学成分を通じた森林生物間の相互交渉現象から学習する。 樹木を中心とした生物体が形成する生態系(森林生態系)の仕組みを構成化学物質の化学構造,性質,反応性から学ぶ。森林の保護と資源利用に関する開発・研究の現状を把握し,新たな森林および森林資源の存在価値を創造する能力を養うための基礎的知識を得ることを目的とする。
【授業の到達目標】
樹木は高分子物質と低分子物質の精妙な組み合わせで構成されている。材料として重要な高分子物質と低分子の生理活性物質について最新の情報を基に講義を行い,森林生態系の生産者としての樹木,分解者としてのキノコ・シロアリ,消費者としての人間の関係を学習する。これらを基に森林資源利用と環境保全の両立を図る方法を探ることができる。【知識・理解】
【授業概要(キーワード)】
天然物化学,化学生態学,樹木,腐朽菌(キノコ等),樹木害虫,化学成分,生理活性物質,森林資源利用,樹木と他生物との化学的相互作用
【科目の位置付け】
化学の視点で森林生物の特徴を把握し、相互関係を類推する力を養い、森林環境保全と資源利用のあり方を考える基礎のひとつと考える。本科目は、研究遂行上のテクニック,自己実現・表現のためのテクニック,高度な専門技術を身につけるための科目である。(森林科学コースのカリキュラムポリシー)
【SDGs(持続可能な開発目標)】
11.住み続けられるまちづくりを 12.つくる責任つかう責任 15.陸の豊かさも守ろう
【授業計画】
・授業の方法
面接授業と遠隔授業の併用。文献講読を交えた講義と参加者による討論を組み合わせて行う。 受講者の希望により,授業の日程・内容については柔軟に対応する。
・日程
1.樹木化学 樹木化学成分の基礎 樹木化学成分の特徴 成分の反応性 成分の生物活性 成分の生合成 成分の生分解 木材の化学加工 成分利用 木材利用と環境保全 2.微生物化学 森林の微生物(菌根菌と腐朽菌)の種類と構造 菌根菌と腐朽菌の性質 微生物と樹木の化学的交渉 3.昆虫の化学 森林に生息する昆虫の種類と構造 樹木害虫の生理 昆虫と樹木の化学的交渉
尚,内容は受講者の専門性を勘案し,変更することもありうる。
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
配布または指定された資料は講義前までに予習して内容の理解に勤めること。 講義中は積極的に質問・討論に参加すること。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
欧文雑誌の論文や総説,図書を用いるので,事前に内容を予習しておくこと。 講義内容を各自の研究等に如何にいかせるかを勘案しつつ,内容の復習を行う。
【成績の評価】
・基準
目標に掲げた化学的視点から森林内の生態系や資源利用について理解しているか,学習態度,討論の準備と状況,レポート内容が十分であることを基準となる。
・方法
学習態度,討論の準備と状況,レポートの内容等が十分であるかを総合的に判断する。
【テキスト・参考書】
学術論文,総説等の報告を中心に適宜資料を配布 1.J.B.Harborne:Introduction to ecological biochemistry (Academic P.) 2.P.M.Dey ,J.B.Harborne:Plant Biochemistry (Academic P.) 3.G.N.Agrios:Plant pathology (Academic P.) 4.H.Lambers,FS.Chapin lll, T.L.Pons:Plant physiological Ecology(Springer) 5.Kurt B. G. Torssell: Natural Product Chemistry (Apotekarsocieteten; Swedish Pharmaceutical Society) 6.MB.Smith, J. March, Advanced Organic Chemistry 5th edition (Wiley-Interscience)
【その他】
・学生へのメッセージ
化学的視点を中心とすることで、森林生物の個性発現の原因と、それに基づく生物間相互交渉現象が新しい展開を示すことに興味を持ってほしい。 有機化学,生化学の知識が必要であるので各自学習しておくこと。
・オフィス・アワー
講義で説明する。随時受け付けるがメール等による事前連絡が望ましい。
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