【授業の目的】
地球環境ならびに国土環境の保全が大きな問題となる中で、農地の国土保全機能の評価と強化を目的とした資源環境計画が重要な課題となっている。特に湖沼、貯水池、溜池等の水域では窒素による水質悪化が進行しており、その農業集水域における農地や森林の水質環境浄化機能を強化し、活用する計画が緊急に必要である。本授業ではこうした課題に応えるため、「植物生産を効率的に行い得る生産環境の創造」に加えて「持続可能な農業・農村環境の創造」について、土地環境科学からの接近を試みる。特に、農業的土地利用がもたらす環境ストレスの解明、さらに、その環境ストレスを低減するための環境保全型農業を支える農業基盤創成技術の開発と計画に関する近年の研究状況について基礎的な知識を得るとともに「資源循環型流域水環境管理を目的とした農地土壌系の窒素流出制御メカニズム」の理解を深めることを目的とする。また、学生が、完成形の研究結果を知識として得るだけではなく、それがまとまる過程を様々な視点から追体験することにより、自らの研究において必要な考え方や注意点を習得することも目的とする。
【授業の到達目標】
学生は3つの専門性の高い技術「農地土壌系における窒素浄化過程と流出水質への影響度合」「農地の水質環境浄化機能」「施肥の地下水層帯での脱窒作用メカニズムとその水質・大気・土壌保全機能の強化策」といったスケ-ルが異なるマクロ、セミマクロ、ミクロの環境保全技術について、対比し、関係づけることによって、資源環境バランスを考慮した農業集水域における土地利用計画のあり方、農地の適切な活用方法、土壌レベルでの水質環境保全対策について結論づけることができる。また、担当教員が国際論文賞を受賞した、自身の博士研究成果が完成するまでの過程(問題発見・仮説創出→情報収集→解析→学会発表→論文執筆、投稿、出版など)を、学生が当事者としてだけでなく、様々な視点、例えば査読者や編集者等の立場から、秘訣や失敗を追体験することにより、学生の研究活動において必要な考え方や注意点を習得し、自らの研究活動に工夫できる。 以上、この授業を履修した学生は、 1)農村地域の実態について、生物環境学の本質的な観点から説明できる。【知識・理解】 2)資源循環型流域水環境管理計画立案事例を作成できる。【技能】 3)身につけた研究プロセス能力を自身の研究に反映させ、研究を効率良く実施でき。【態度・習慣】 4)環境に配慮した農村の資源環境計画について、論理的に討議することができる。【態度・習慣】
【授業概要(キーワード)】
SDGs(持続可能な開発目標),水質環境保全型農業、生物学的脱窒、資源循環、流域水環境管理、農村計画学、農地環境工学、アクティブラーニング
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
この授業は豊かな人間力、食料・生命・環境科学に関わる幅広い知識や深い専門性を身につけ、国際社会や地域社会の課題解決のために創造力を豊かに発揮できる人材の養成を教育理念として行われる。具体的には、安全な農畜産物の持続的生産やそれを担う農業経営、地域の活性化等の研究領域において、より高度な知識を修めるとともに、実践的な能力を養うためのプログラム、森林科学ならびに水土環境科学に関する専門的な講義を主体とするプログラム、等を展開し、地域社会や国際社会における諸問題を解決し、人類社会の進歩と福祉に貢献できる独創的な科学技術開発を担う研究者、技術者や創造的な事業に従事できる人材を養成することを目標とするものであり、以下の農学研究科及び農学専攻のディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーに該当する。 【ディプロマ・ポリシー:】 ① 豊かな人間力 (1)食料・生命・環境科学に強い関心を持ち、主体的・自律的に学習を継続できる。 (2)専門職従事者としての倫理観と責任感を持ち、コンプライアンス遵守の精神を身につけている。 ② 深化した専門的知識・技能と文理兼修による幅広い視野 (1)各自の専門分野における高度な知識や技術を身につけている。 (2)文理を超えた様々な分野の専門的知識を理解し、多様化・複雑化した社会の要請に応じてそれを活用できる能力を有している。 ③ 多様な文化の理解とその共生に向けて行動できる能力 (1)国際社会や地域社会における専門分野に関わる課題を抽出・探求でき、その解決のために研究・開発する行動力を有している。 (2)他分野との共同作業ができ、創造的な事業に従事するための実践的な能力を有している。
【カリキュラム・ポリシー:】 1 教育課程の編成・実施等 (1)高度な専門職従事者としての知識と技能を身につけるため、体系的に構成されたカリキュラムを編成する。 (2)多様で学際的な知識と技能を身につけるため、文理兼修を含む幅広い分野の科目を履修できるカリキュラムを編成する。 2 教育方法 (1)自ら課題を発見し、その解決に向けて探求した成果を表現する能力を身につけさせるため、授業への学生の主体的な参加を促す。 (2)他分野の学生との共同作業や討論会を推進する。 3 教育評価 (1)不断の教育課程の点検・学生からの評価を組織的に行い、到達度を確認できる明確な成績評価基準を策定した上で、その基準にもとづく評価を行う。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
02.飢餓をゼロに 06.安全な水とトイレを世界中に 11.住み続けられるまちづくりを 12.つくる責任つかう責任 13.気候変動に具体的な対策を 15.陸の豊かさも守ろう
【授業計画】
・授業の方法
面接授業と遠隔授業の併用 1)研究論文の精読を中心に進め、スライド等も併用する。 2)基本的な事項から説明し、最終的に深く考察します。 3)教員からの一方通行の授業ではなく、学生の質疑応答や討論によって授業を進めていきます。
・日程
この授業は学生の学習状況に合わせて、以下の内容で行います。 第1回Practical Approach to Water Quality Improvement in Agricultural Areas 第2回Nitrogen Discharge from Farmland 第3回Maximizing and Controlling the Ability of Paddy Fields to Remove Nitrogen 第4回New Notation and Equation for Predicting Ammonia Nitrogen Concentrations in Paddy Percolation Water 第5回Adsorption and Movement of Ammonia Nitrogen into Soil Layers with Paddy Percolation Water 第6回Clarification of Adsorption and Movement by Predicting Ammonia Nitrogen Concentrations in Paddy Percolation Water 第7回~第8回 溶脱施肥の地下水層帯での脱窒作用メカニズムの解明に関する水質データの解析演習
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
1)プリント資料の重要部分に線を引くなどして活用する。 2)授業内容をノートなどに筆記して内容の理解に努める。その際、言われたことを鵜呑みにしないで、自分の頭で考える。 3)体調を整え、遅刻をしないこと。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
本授業科目では、以下の課題等を課します。単位制度の実質化のため、授業外における以下の予習・復習等の自主的な学修に取組んでください。 1)準備学修に必要な学修時間の目安は以下のとおりです。 2時間/週 1)参考書や資料論文を通読すること。 2)授業内容とそれと関連する参考書の箇所について、各自で整理し、自分用のノートを作成すること。 3)図書館やインターネットを活用し、情報を収集し、整理しながら復習し、自分の考えをまとめておく。 4)回を重ねるごとに知識の連携が必要になるので、資料論文の該当箇所を自分で探し関連づける。 5)わからないことは担当教員に遠慮無く質問すること。
【成績の評価】
・基準
合格の基準:授業終了時に、授業の到達目標に示した以下の四つの事項がすべて達成されることを合格の基準とします。 1)農村地域の資源環境実態について、適切に述べることができること。 2)計画立案事例の問題点や改善方法について、主体的に考え、準備できること。 3)身につけた研究プロセス能力を自身の研究に反映させること。 4)環境に配慮した農村の資源環境計画について、論理的に討議することができること。
・方法
『宿題や授業への意欲と発言内容の論理性』(20点)+『作成したレポート(80点)』です。授業内容について毎回レポートを作成(100点満点)し、レポート回数を考慮して、レポートの合計を80点に圧縮し、成績を評価します。やむを得ない事情がある場合を除き、すべての回の授業に出席することが大前提です。病気、忌引など、やむを得ない事情で欠席する場合には、事前に、あるいは事後1週間以内に、担当教員へ知らせて、当教員から指示を受けてください。
【テキスト・参考書】
1)この授業では参考書として『Ishikawa、 Masaya : Consolidation to sustainable farmland、 Bogor Agric. Univ. Press、1-129、 1998』『Ishikawa、 M.、 Tabuchi、 T. and Yamaji、 E. : Clarification of adsorption and movement by predicting anmonia nitrogen concentrations in paddy percolation water、 Paddy Water Environ.、1、27-33、 2003』を使用します。 2)事前のテキストとして個別に指定するものはありませんが、最新情報に関する資料を授業ごとに配布し、授業進度、学生の理解に合わせて、適宜、紹介します。
【その他】
・学生へのメッセージ
1)学習への熱意をもち、自学自習によって研究論文を理解する姿勢が大切です。 2)知識の量が増えた後でも「知的興奮」が持続できれば、よく勉強したといえるでしょう。 3)理系の学生に特化した授業内容です。
・オフィス・アワー
1)授業時間外に学生の質問に答える「オフィス・アワー」を石川雅也研究室(2号館2階2252号室)において、本授業終了後から1時間と木曜日の12:00~13:00の間に設けます。 2)会議や出張などで不在にすることもあるため、確実に面談したい場合は事前にメールなどでの予約をお願いします。メールアドレスなどの連絡先については初回の授業でお知らせします。
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