生物環境学特別講義Ⅵ
 Invited Lecture on Bioenvironmental Science VI
 担当教員:飯田俊彰(IIDA Toshiaki)
 担当教員の所属:非常勤講師(岩手大学農学部)
 担当教員の実務経験の有無:
 担当教員の実務経験の内容(有の場合):国内外での農山村地域におけるフィールドスタディを行った経験から、積雪寒冷地での水環境への影響に関するメカニズムを解説するとともに、水田稲作に関する具体的な課題の視点から、課題解決に向けた実践的な農業水利の在り方を学ぶ。
 開講学年:1年,2年  開講学期:通年  単位数:1単位  開講形態:講義
 開講対象:農学専攻(1年)、生物環境学専攻(2年)  科目区分:選択科目(1年)、選択必修科目(2年) 
【授業の目的】
本学が立地する庄内地方は東北地方の日本海沿岸地域に位置するため、その気候は冬季の北西季節風の影響による積雪地域特有の特徴を持っています。ここでは古来より、積雪寒冷地での水田稲作を中心とする農業が発展してきました。そこで本講義では、積雪融雪現象と農業水利の最先端の2つのトピックに焦点を当て、主として生物環境学専攻の修士課程の学生を対象として講義を行います。まず前半では、積雪融雪現象の水環境への影響について、実際の観測データを示しつつそのメカニズムの解説を行います。次に後半では、現在の水田稲作の現場での問題とそれに対する最先端の取り組みについて詳しく紹介します。非常勤講師による集中講義の利点を生かし、水文学、農業水利学分野の通常の講義ではあまり取り上げられないこれらのトピックについて詳しく解説することにより、これらの問題についての受講生の理解を深め、視野を大きく広げることを目指します。

【授業の到達目標】
この授業を履修した学生は、
(1)日本海沿岸地域の降水水質の変動の特性とその原理を記述できる。【知識・理解】
(2)融雪現象の物理と積雪内の溶存イオンの動態について記述できる。【知識・理解】
(3)積雪が土砂流出に及ぼす影響について述べることができる。【知識・理解】
(4)日本の水田稲作の現在の問題点とその対策について討議できる。【態度・習慣】
(5)最新技術を用いた農業水利の将来像について討議できる。【態度・習慣】

【授業概要(キーワード)】
SDGs(持続可能な開発目標)、水質水文、積雪、融雪、農業水利、アクティブラーニング

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:1~25%
B-2.事前学習(下調べ、調査等含む)をした上で、他の学生の意見を尊重しつつグループとしての結論を出すために議論をする機会がある。:1~25%
B-3.習得した知識を活用する中で、学生グループがテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、互いの考えを理解し合う中から新たに独自の意見や考え方を創り出す機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
気候変動下での積雪融雪現象や変革期にある農業水利について、庄内地域の状況を踏まえて深い知識を身に着け、将来像を考えていく力を養うための科目です。山形大学大学院農学研究科のディプロマ・ポリシーの中の、1(1)多様化・複雑化した社会の要請に対応できる高度な専門的知識と技術を身に付けている、2(1)研究、調査、開発等の創造的な事業に従事するための実践的な能力を有している、を実現するための科目のひとつです。水文学、農業水利学分野の通常の講義ではあまり取り上げられないトピックについて詳しく解説することにより、受講生の視野を大きく広げることを目指します。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
13.気候変動に具体的な対策を
15.陸の豊かさも守ろう

【授業計画】
・授業の方法
面接授業と遠隔授業の併用
この授業は主として面接授業で行われます。教室での講義形式で、主にパワーポイントスライドを用いて、授業を行います。前半では、水文学、農業水利学に関わる積雪融雪現象について、物理的、化学的な側面から解説します。後半では、農業水利の最新の状況に関して解説するとともに、農業水利の将来像について学生グループによる討論を行って考えて頂きます。
・日程
1.積雪地域での水資源と水利用
日本海沿岸地域での降水量および河川流量の変動、非積雪地域との比較
2.日本海沿岸地域での降水の水質
気象状況による降水の水質の変化、アジア大陸からの長距離輸送
3.積雪と融雪水の水質の観測
融雪の原理、積雪の変態、積雪断面観測
4.積雪融雪現象のモデル解析
積雪からの選択的溶出、積雪融雪現象のモデル化
5.積雪の土砂流出への影響
積雪による土砂流出の抑制、融雪の段階による土砂流出の変化
6.農業水利サービス
現在の農業水利の課題、サービス学の発展、農業水利サービス
7.日本の農業水利の将来像
スマート農業水利、ITとビッグデータ、農業水利の将来像(グループ討論)

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
講義内容の概要をプリントにして配布しますので、口頭で述べられた内容のポイントを適宜メモして補足して下さい。講義中に随時、教員の側から質問をしたり、疑問点が無いかどうか確認したりしますので、何か気になる点がある場合には積極的に発言して下さい。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
 本授業科目では,以下の課題等を課します。単位制度の実質化のため,授業外における以下の予習・復習等の自主的な学修に取組んでください。
・準備学修に必要な学修時間の目安は以下のとおりです。4時間/週
・渇水、洪水、土砂災害や、水環境、水資源配分、気候変動、異常気象など、「水」に関わる様々な問題が世界各地で起きています。このような問題は本講義の内容と関連する場合も多いですので、新聞、テレビ、ネット等での「水」に関する報道を日頃から関心を持って見て下さい。特に、2020~2021年の冬には、日本国内で雪による自然災害が多発しました。どこで、どのような気象条件の際に大雪が降り、それが人々の生活にどのような影響を及ぼしたのか、調べてみましょう。

【成績の評価】
・基準
授業の到達目標に示した、水文学、農業水利学に関わる積雪融雪現象の物理的、化学的な理解度を評価の基準とします。また、農業水利の最新の状況に関する知識を評価の基準とします。
・方法
小テストを、講義の前半終了時と全体終了時の2回行います(40%)。講義中に示す課題について、講義終了後にレポートを提出して頂きます(60%)。

【テキスト・参考書】
テキスト・参考書として、事前に指定するものは有りません。必要な資料を、講義時にプリントとして配布します。

【その他】
・学生へのメッセージ
庄内地域での気候や農業生産についての専門的な知識を広げるとともに、農業水利の最新の状況と将来像についての認識を深めて頂くことを期待しています。
・オフィス・アワー
質問等がある場合には、メールで飯田まで伝えるか、本科目の世話人の石川雅也先生(エコサイエンスコース)まで伝えて下さい。アドレス等の連絡先は授業時にお知らせします。

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