【授業の目的】
歴史学にとって、各々の時代や地域の固有の慣習は大変重要なテーマである。しかし実際には、人間は社会習慣に忠実に生きているわけではない。文学の特性のひとつは、個人の人生と社会習慣との間の葛藤を、物語として描き出すところにあるといえるかもしれない。文学は厳密な歴史研究の素材とはならないが、しかし過去の社会習慣と人間の生の関係を理解するためには、有益な資料でもある。授業では、古代から現代まで、代表的なヨーロッパ文学を採りあげ、それを通じてヨーロッパの歴史社会について考察することを目的とする。
【授業の到達目標】
古代から現代までのヨーロッパ史について関心を深めることができる【態度・習慣】。ヨーロッパの代表的な文学について知識を身につけることができる【知識】。 歴史や文化についての関心や知識を、文章にしてレポートに仕上げることができる【技能】。
【授業概要(キーワード)】
ヨーロッパ 歴史 文学
【科目の位置付け】
ヨーロッパ史の概観をたどる中で、人間の生が社会習慣との関係でどのように変化していったのか、文学をとおして考える。歴史と文学をともに学ぶための機会とする。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに 08.働きがいも経済成長も 16.平和と公正をすべての人に
【授業計画】
・授業の方法
毎回1つの作品をとりあげ、その概要を紹介した後、作品を通じて当時の社会慣習の特性について考察する。
・日程
第1回 序論 第2回 ソフォクレス「アイアス」 ― 古代ギリシアの民主主義 第3回 シェークスピア「マクベス」 ― 封建王政の意義 第4回 セルバンテス「ドンキホーテ」 ― 騎士の没落と騎士道 第5回 オースティン「高慢と偏見」 ― イギリス貴族と地方社会 第6回 トルストイ「戦争と平和」 ― ロシア貴族の「根なし草」的性格 第7回 シュトルム「人形遣いポーレ」 ― 職人と旅芸人の世界 第8回 サンド「愛の妖精」 ― 農村における魔女の消滅 第9回 バルザック「幻滅」 ― ブルジョワ社会と野心 第10回 ユーゴー「レミゼラブル」 ― 近代都市と公衆衛生 第11回 スティーブンソン「宝島」 ― 植民地と階級社会 第12回 シリトー「土曜の夜と日曜の朝」 ― 労働者階級の気概 第13回 フォースター「インドへの道」 ― 非ヨーロッパ世界との出会い 第14回 カフカ「審判」 ― 現代社会における悪 第15回 フォーサイス「オデッサ・ファイル」「ジャッカルの日」 -「負の遺産」の重み
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
板書はあくまで説明のための補助手段である。言葉による説明を正確に理解し、それをノートに書き取る能力を高めてほしい。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
ヨーロッパに関する歴史書と文学をできるだけ読んでほしい。30時間くらいかけて、文学の古典の学習が必要になる。
【成績の評価】
・基準
レポートと学期末試験によって、授業の基本的な内容を理解しているか問う。
・方法
レポート40点と学期末試験60点
【テキスト・参考書】
松岡正剛『物語の函 世界名作選I』角川ソフィア文庫 松岡正剛『方法文学 世界名作選II』角川ソフィア文庫 サマセット・モーム『読書案内―世界文学 』岩波文庫 山川出版社「世界各国史」シリーズのヨーロッパ史の巻
【その他】
・学生へのメッセージ
文学を通じて歴史への関心を深める授業です。授業を機会に小説や歴史書をたくさん読んでほしい。
・オフィス・アワー
火曜日 10時30分~12時10分 山崎研究室(人文学社会科学部2号館4階)
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