数学特論I
 数学特論I
 担当教員:小島 武夫()
 担当教員の所属:大学院理工学研究科(工学系)数物学分野
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:2年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
物理学の現実的な模型は大抵複雑すぎて、近似なしに解くことは望めない。天体力学の3体問題(太陽、地球、月など)ですら一般には解けない。しかしながら厳密に解ける模型も知られており、それらは一般に可積分系と呼ばれる。その代表例である2次元Ising模型は、近似ではない厳密な計算により相転移の存在が示された最初の模型である。この授業では2次元Ising模型の自由エネルギーの厳密解を導く。この目的のための数学的道具立てとして、転送行列、離散フーリエ変換、フェルミオンについて学び、広い意味での場の理論に触れる。可積分系は物理現象を記述するという物理的興味にとどまらず、厳密に解けるということの背後にある深い数学的構造が興味深い。この授業で体得する数学的思考法を、日々の実験等に役立てていただきたい。

【授業の到達目標】
1次元Ising模型とその分配関数、自由エネルギーの厳密解導く。
2次元Ising模型とその分配関数、自由エネルギーを定義する。
分配関数を転送行列で表す。
転送行列をスピン行列で表す。
転送行列をフェルミオンで表す。
転送行列の対角化をフェルミオンを活用して行なう。
転送行列の対角化を用いて、自由エネルギーを熱力学的極限で導く。

【授業概要(キーワード)】
2次元 Ising 模型、転送行列、離散フーリエ変換、フェルミオン、可積分系、厳密解、自由エネルギー

【科目の位置付け】
学部における微積分(微積分解法、数学I)、線形代数(数学C,数学II)の知識を仮定する。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに

【授業計画】
・授業の方法
黒板を用いた講義を行う。少ない予備知識でも理解できるように自己完結した授業とする。レポート課題により理解を深める。
・日程
以下の項目を概括する。

1.分配関数、自由エネルギー
2.転送行列
3.1次元Ising模型
4.2次元Ising 模型
5.フェルミオン
6.離散フーリエ変換
7.転送行列の対角化
8.自由エネルギー

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
受講にあたっては、単に、黒板を書き写すだけでなく、原理の理解につとめる。疑問点は遠慮せず質問していただきたい。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
学部で学んだ線型代数、微分積分学を理解していることを前提にしている。知識や理解が不足している場合には、授業にあわせて復習をすることを薦める。

【成績の評価】
・基準
2次元Ising模型の自由エネルギーの厳密解の積分表示を、フェルミノンを活用した方法で再構成できることを合格の基準にする。
・方法
授業中に出題する10問のレポート課題(授業中に省略した証明の詳細をまとめていただく)の答案で評価する。

【テキスト・参考書】
教科書:B. Kaufman, Crystal Statics. II. Phys. Rev.76, 1232-1243 (1944): L.Onsager, Crystal Statics I, Phys. Rev. 65, 117-214 (1944)
参考書:神保道夫著「ホロノミック量子場」岩波書店

【その他】
・学生へのメッセージ
線型代数と微分積分学の基礎は理解していなければならない。厳密解を導くことは容易ではないが、近似解にはない素晴らしさがあることを理解していただきたい。
・オフィス・アワー
各回の授業の開始前あるいは終了後を受講者からの質問に答える「オフィス・アワー」とする。その他,連絡に応じて,随時,質問等には対応する。

59000192-2022-15-56001