高分子レオロジー特論
 Polymer Rheology
 担当教員:瀧本 淳一(TAKIMOTO Junichi)
 担当教員の所属:有機材料システム研究科
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:1年,2年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
高分子液体のレオロジーをなるべく簡単な理論により理解する。
高分子の希薄溶液のレオロジーは、高分子科学の最も基礎的な分野の一つであり、分子量測定法としての意味も大きい。一方、濃厚溶液や溶融体のレオロジーは、高分子材料の成形加工性を支配する物性として重要である。これらの高分子液体のレオロジーを、簡単な理論モデルにより直観的に理解することで、各自の研究に応用する力を付ける。

【授業の到達目標】
排除体積相互作用・流体力学的相互作用・絡み合い相互作用という3つの相互作用について、それぞれどのような場合に重要となり、どのようにして理論的に取り扱われるか、その結果どのようなレオロジーが現れるかを理解する。特に、緩和時間、粘度、拡散係数などの分子量依存性を理解する。

【授業概要(キーワード)】
排除体積相互作用、流体力学的相互作用、絡み合い相互作用、Rouseモデル、Zimmモデル、管模型、固有粘度、絡み合い点間分子量

【科目の位置付け】
高分子希薄溶液は、高分子科学の生まれた場であり、分子量測定を始め、分子鎖1本の性質を調べる事が出来る重要な系である。一方濃厚溶液や溶融体は、薄膜作製や成形加工に用いられ、そのレオロジーは加工プロセスの制御・最適化に非常に重要である。

【授業計画】
・授業の方法
Webで配付した資料を用いて講義する。必要に応じて動画・アニメーション等も用いる。
・日程
1 序論
2 高分子鎖のランダムコイル状態
3 拡散現象の基礎と、ランダムコイルとの類似
4-5 拡散現象の簡単な数学モデル
6 Stokes-Einstein則
7-8 レオロジーの復習(ひずみ、応力、種々の弾性率、粘度)
9-10 Rouse モデル
11 希薄溶液と排除体積相互作用
12 流体力学相互作用と Zimm モデル
13-14 絡み合い相互作用と管モデル
15 最近の話題(分岐高分子、多分散系、非線形レオロジー)

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
理論モデルの解説が主になるので、数式を使用することは避けられないが、全ての数式についてその直観的意味を説明するので、必ず式の意味を理解すること。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
予習は必要無い。しっかり復習すること(重要な計算は自分でもう一度行ってみること)。疑問点を残さないように、解らない点は直ぐに質問すること。
レオロジーの基礎の復習は随時行うが、学部でレオロジーの講義を受講していない場合は、参考書等で基礎的な部分を自習しておくことが望ましい。

【成績の評価】
・基準
排除体積相互作用・流体力学的相互作用・絡み合い相互作用がどのような相互作用で、どのような場合に重要かを説明出来る。Rouseモデル・Zimmモデル・管模型がどのような場合に適用可能かを説明出来る。さらにそれぞれのモデルでの緩和時間・粘度・拡散係数の分子量を、簡単な理由をつけて自分の言葉で解りやすく説明出来ること。
・方法
2~3回程度のレポートを課す。1~2回は幾つかの公式を応用する計算課題。最後のレポートは、Rouse、Zimm、管模型の意味と論理構造をまとめて解りやすく解説する課題。

【テキスト・参考書】
M. Doi and S.F. Edwards, "The Theory of Polymer Dynamics", Oxford University Press (1986)
村橋俊介、小高忠夫、蒲池幹治、則末尚志 編、「高分子化学 第5版」(特に8章)、 共立出版
日本レオロジー学会編「講座・レオロジー」あるいは「新講座・レオロジー」

【その他】
・学生へのメッセージ
講義の関連資料をweb上に置くが、自分でも要点をまとめたノートを作ること。
・オフィス・アワー
解らない点は、講義中に積極的に質問すると、他の学生にとっても有用である。

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