【授業の目的】
電磁気現象に関する古典物理学がマクスウェルの方程式に集大成されることを統一的かつ平易に叙述して,古典電磁気学を場の概念の基礎から電磁波まで学ぶことが電磁気学の授業全体の目的である。電磁気学Ⅰでは,その根幹をなす静電場を扱う。クーロンの法則から基本法則(ガウスの法則,渦なしの法則)を導き,全体を静電ポテンシャルに対するポアソン方程式にまとめる。さらに,物理だけでなく自然科学の記述に不可欠な数学,多変数関数の微分積分とベクトル解析を習得することも,この授業の重要な目的である。
【授業の到達目標】
1) 静電場に対するガウスの法則,渦なしの法則を理解し,説明できる【知識・理解】 2) ポアソン方程式とその物理的内容を理解し,説明できる【知識・理解】 3) 数学的記述に必要な多変数関数の微分積分とベクトル解析を習得し,静電場に関する基本的な問題を解くことができる【技能】
【授業概要(キーワード)】
ベクトル解析,クーロンの法則,静電場,ガウスの法則,渦なしの法則,静電ポテンシャル,ポアソン方程式
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
古典電磁気学は,力学と並んで物理学を構成する最も基本的な科目であり,現代物理学を学ぶために必須である。この授業はその根幹をなす静電場を学び,選択したコースカリキュラムの専門的知識を身につけ,その分野の先端的な研究内容を理解し,説明できる能力を習得する。詳しくは理学部理学科ディプロマ・ポリシー参照。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに 09.産業と技術革新の基盤をつくろう
【授業計画】
・授業の方法
通常の講義形式で,基本概念,法則等を説明し,関連する例題を解いて内容の理解を深める。取り上げる各テーマについて,まとめ,例題と問題のプリントを配布する。適宜,演習課題を出題して授業内容の理解レベルを確認する。
・日程
取り上げる主要なテーマとその順序(カッコ内は数学に関する項目)は,次のとおりである: はじめに --- 電磁気学について(+多変数関数の微分積分1 --- 偏微分) Ⅰ 静電場 1. クーロンの法則(+ベクトル,多変数関数の微分積分2 --- 連鎖律) 2. クーロンの法則と電場(+スカラー積,ベクトル積) 3. 電場(+多変数関数の微分積分3 --- 重積分) 4. 電場とガウスの法則(+デルタ関数,多変数関数の微分積分4 --- 面積分) 5. ガウスの法則(積分形)(+ベクトル解析1 --- 発散とガウスの定理,立体角) 6. ガウスの法則(微分形)(+多変数関数の微分積分5 --- テーラーの定理) 7. 渦なしの法則(積分形)と保存力の条件(+多変数関数の微分積分6 --- 線積分) 8. 渦なしの法則(微分形)(+ベクトル解析2-回転とストークスの定理) 9. 静電ポテンシャル(+ベクトル解析3 --- 勾配) 10. 静電ポテンシャルと電場(+ベクトル解析4 --- ラプラシアン) 11. ポアソン方程式 12. ポアソン方程式のさまざまな解と電場 13. 静電場のエネルギー 14. 電気双極子
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
1) ノートへの筆写だけの受身の姿勢で受講しないようにして,内容の理解と計算力の習得に努める 2) ベクトル解析などの数学は,授業できちっと説明するが,これらについても物理数学として体系的に学習する 3) 出題する演習課題のレポートは添削し,返却時に要点や略解等を補足説明するので,静電場に対する基本的な考え方と計算力の習得に活用する 4) 「電磁気学演習Ⅰ」の授業にも積極的に取り組み,気に入った演習書を併せて活用する
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
本授業科目では,次のとおり,授業時間外における予習・復習等の自主的な学修に取り組む: 1) 予習として,次回の授業で扱うテーマについてテキストや参考書にあらかじめ目を通す 2) 復習として,内容をまとめた自家用サマリーを作成する,問題を実際に解くなどして,授業内容(基本概念や法則)と計算力を身につける 3) 毎回,新しい事項を学ぶので,何を理解できたか,何が理解できないのかを明確にし,オフィス・アワーを積極的に活用する 4) 出題される演習課題を必ず解いてレポートを提出し,静電場に対する基本的な考え方と計算力の習得に努める 5) 授業ですべてを扱えるわけではないので,選んだテキストの静電場に関する部分全体を通読して内容を体系的に学習する
【成績の評価】
・基準
静電場の基本法則とその物理的内容,ベクトル解析を理解し,基本的な問題を解く基礎学力があることを合格の基準とする。
・方法
演習課題を複数回出題し,期末に試験を行う。基本として,試験(70%),演習課題(30%)の重みで評点とする。
【テキスト・参考書】
授業は特定のテキストに準拠しないので,自分の気に入ったテキスト(たとえば,電磁気学演習Ⅰで使用するテキスト「郡司修一著,電子書籍 電磁気学Ⅰ」)を活用するとよい。 出版されている電磁気学のテキストは非常にたくさんあり,代表的なテキストを例示すると次のとおりである(レベルはかなり異なる)。 テキスト: 長岡洋介 著,「物理入門コース3 電磁気学Ⅰ」,岩波書店 テキスト: 飯田修一 監訳,「バークレー物理学コース 電磁気」,丸善出版 テキスト: 太田浩一 著,「電磁気学の基礎Ⅰ」,東京大学出版会
【その他】
・学生へのメッセージ
現代物理に関係する自然科学を学び,研究するには,さまざまな局面で古典電磁気学と場の概念についての知識(素養)が必要になる。このようなときに使用される大学院レベルの代表的な専門書として,次のテキストがある。これらを読み進められるようになることがこの授業の目標ともいえるから,いずれかを手元に置いてときどき参照すると,よい刺激になる。 参考書: ジャクソン 著,「電磁気学 上,下」,吉岡書店 参考書: ランダウ=リフシッツ 著,「電磁気学 =連続媒質中の電気力学= 1,2」,東京図書(絶版か) 参考書: パノフスキー,フィリップス 著,「新版電磁気学 上,下」,吉岡書店(POD版) 参考書: 砂川重信 著,「理論電磁気学」,紀伊國屋書店
・オフィス・アワー
授業に関する学生からの質問は,各回の授業終了後または開始前に受け付ける。その他,WebClassを活用して,随時,質問等には対応する。
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