【授業の目的】
本講義では、農村地域の歴史と生活に対する理解を深める目的で、世界および日本の農村社会がこれまでに経験してきたさまざまな社会“問題”への着目という切り口から、社会の歴史的変容の経緯を探り、問題発生の背後で進展した伝統的な地域の社会関係の重層的な変容の有様を考察します。そのさい、問題発生の基本的メカニズムへの理解を確かなものにするために、<地縁的秩序から貨幣媒介的秩序への変容>という視座を強調しながら講述を進めます。
【授業の到達目標】
1)眼前の諸社会問題を、歴史的・文化的・経済的・および社会学的視座から複眼的に考察することができるようになる。【知識・理解】 2)今日の食料・農業・農村分野での諸課題に対して、さまざまな当事者の立場の違いを乗りこえて、高い見識と展望をもって、具体的な問題解決策を提示しうる力を身につける。【技能】【態度・習慣】
【授業概要(キーワード)】
農村社会学、農業をめぐる歴史社会学、農業をめぐる政治経済学
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25% A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25% A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
本講義は、農学部のディプロマ・ポリシーに掲げられている、環境・食料・農業問題等についての総合的な判断力、諸課題への高い見識と展望および解決能力をもつ力を身につけるための教育の一環です。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
01.貧困をなくそう 02.飢餓をゼロに 03.すべての人に健康と福祉を 04.質の高い教育をみんなに 05.ジェンダー平等を実現しよう 08.働きがいも経済成長も 09.産業と技術革新の基盤をつくろう 10.人や国の不平等をなくそう 11.住み続けられるまちづくりを 12.つくる責任つかう責任 16.平和と公正をすべての人に 17.パートナーシップで目標を達成しよう
【授業計画】
・授業の方法
本講義では、映像型講義と講義型講義を相互に重ねるという講義形式で進めます。そのことによって、世界と日本の農村地域社会の歴史的変容過程にたいする、具体的なイメージに裏付けられた、理論的かつ本質的な認識を深めてゆきます。 なお、この授業は面接授業を基本におこないます。
・日程
第1回目 NHKスペシャル「ヤノマミ 奥アマゾン原初の森に生きる」 第2回目 人類史における農業革命の意味ー余剰が生み出した文明の形 第3回目 NHKスペシャル「激流中国 富者と農民工」 第4回目 人間社会の類的本質と個的本質の矛盾と、その二つの解決のあり方 第5回目 NHKスペシャル「イタリア賞受賞・映像詩・里山・命めぐる水辺 第6回目 前近代社会の土地所有・土地利用と農業生産力の特徴 第7回目 NHKスペシャル「映像の世紀・Japan 世界が見た明治・大正・昭和」 第8回名 資本の時代、帝国の時代の下での、中進国・日本の近代化の歩み 第9回目 NHKスペシャル「映像の世紀・独立の旗の下」 第10回目 戦後占領下の民主化から朝鮮戦争下の「逆」コース、Japan Inc,の形成へ 第11回目 NHKスペシャル「映像の世紀・ベトナムの衝撃」 第12回目 高度成長ー日本を変えた6000日 第13回目 ETV特集「なぜ希望は消えた?ーあるコメ農民と霞ヶ関の半世紀」 第14回目 NHKスペシャル「ワーキングプア?働いても働いても豊かになれない」 第15回目 戦後農村社会の変貌:何が変わったのか、何故変わったのか、どう変わったのか
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
しっかりと物事を理解するためには、具体的イメージに裏付けられた体験的認識と、深い概念的認識を両立させることが肝要です。五感をフル回転させて、ココロとアタマの両輪で、しっかりとした像を結ぶ認識をつくるということを、この学生主体型授業を通じて身につけて下さい。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
私たちの身の回りの日常も、授業で取り上げている歴史的変容の過程の一コマとしてあります。自明で平凡な日常理解を壊す、理論的想像力を、さまざまな場面で意識的に培うように心がけて下さい。
【成績の評価】
・基準
授業の到達目標で示したように、農業をめぐる地域や社会の変遷について、多面的かつイメージ豊かに考察でき、今日の食料・農業・農村地域の諸問題に対して、自らのしっかりした見解を述べられることを合格の基準とします。また、授業に積極的・能動的に参画できていることも合格の基準です。
・方法
毎回の授業ごとに、当日の授業内容の学びや疑問点をシャトルカードに記載して貰います。このシャトルカードの記載に基づき、出席と履修の態度の評価として、成績全体の60%分の評価を行います。加えて、1レポート20点満点で評価するレポート課題を4-5課題ほど課します。レポートの提出数は皆さんがそれぞれ自分で判断下さい。成績評価は、出席点にレポート点を加算し、全体の合計点とします。採点合計値が100点を上回っても、上限は100点となります。
【テキスト・参考書】
以下は、レポート課題で皆さんに読んでもらう予定にしている図書です。 宮本常一『生きている民俗・生業の歴史』河出文庫 小熊英二『日本という国』理論社 山下惣一『農から見た日本 ある農民作家の遺書』清流出版 上野千鶴子『サヨナラ、学校化社会』太郎次郎社 西原理恵子『この世でいちばん大事なカネの話』理論社
【その他】
・学生へのメッセージ
毎回の授業において、皆さんにとっての深い学びが得られる授業を心がけますが、皆さん方も、ぜひ、それぞれの学びの内容を、シャトルカードやレポート、その他で、私に積極的に伝えて下さい。本当に面白いレポートを提出して貰えれば、それをしっかりと評価しますので、単位取得にむけては、その点を一番心がけて下さい。
・オフィス・アワー
講義終了後の昼休みの時間等に、1号館3階の研究室に、気軽に尋ねて下さい。また、個別相談等の場合、夕方以降の時間でも対応します。
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