【授業の目的】
日本民法典のうち、物権編(第2編)のうち、総論的部分と、所謂「担保物権」に該当しない領域を主として扱う(必要があれば、一部総則や債権に含まれる内容も本編との関係で扱う)。様々な権利殊が存する中で、「物権」という権利がどのような権利として存在しているか、そしてかかる権利が、民法という私法に於ける一般秩序としてどのような役割を果たしているかを学習する。
【授業の到達目標】
・物権法に於ける基礎知識の陶冶(知識・理解)。 ・後に学習する債権や、それを担保する目的で設定される担保物権を学習する基礎となる(知識・理解)。 ・上記の知識と理解から、物権秩序の特質を踏まえた権利概念を理論的に検討する基礎を陶冶することが可能となる(技能)。
【授業概要(キーワード)】
民法、権利客体、物権、物権変動、所有権、占有、地上権、永小作権、地役権、入会権
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25% D-2.事前学習(下調べ、調査等含む)で習得した知識等を踏まえて演習、実習、実験等を行う機会がある。:26~50% A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
(1) 本講義の導入科目として、「私法入門」及び「金融法入門」という講義もありますので、履修を推奨します(強制ではない)。 (2) 民法総則とも関わるため、「民法基礎(総則)」も履修していることが望ましい。 (3) 民法は、特に法典(コード)全体での体系(矛盾がないか、特則がないか)が問題となるため、今後も民法他分野の講義も履修することが望ましい。 (4) また、金融関係・行政関係の基礎知識ともなりうるため、これらに関係する科目を履修する場合、本講義を受講することで理解の促進となるため、上記の履修予定者は、本講義を履修して戴きたい。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
01.貧困をなくそう 04.質の高い教育をみんなに 05.ジェンダー平等を実現しよう 08.働きがいも経済成長も 09.産業と技術革新の基盤をつくろう 11.住み続けられるまちづくりを 15.陸の豊かさも守ろう
【授業計画】
・授業の方法
原則、講義形式で行うが、適宜学生諸君にも思考訓練の一環として、教員側から議論を求めることがある。その場合、上記の趣旨に照らして、答えが誤っていても減点することはしないし、寧ろ、諸君の率直な考えを聞いた上で、授業内容も適宜調整し、より理解の進む講義としたいため、誤りを恐れずに積極的に議論に参加して戴きたい。
・日程
1. 民法体系の中の「物権法」(1): 物権法の日本民法典に於ける位置付け。物権と債権の峻別。 2. 民法体系の中の「物権法」(2): 物権法の体系化プロセスと、それによる現代日本物権法の有する特質について。 3. 権利の客体としての「物」: 物権と債権の峻別を踏まえ、権利客体たる「物」概念について。 4. 物権法定主義の意義: なぜ物権は法で定められなければならないか?民法施行法を踏まえて。 5. 不動産物権変動の基礎理論(1): 公示の意義、公信力の否定、そして「物権の移転時期」に関する前史的検討・考察。 6. 不動産物権変動の基礎理論(2): 物権変動及び対抗要件に関する諸論の講義と、事例を用いた検討。 7. 不動産物権変動の具体的事例を用いた検討(1): 実際に、判例を素材とした具体的問題を、前回までに学習した知識を基に教室内で検討を行う。今回は、あくまでも物権変動に関する基本的事例を扱う。 8. 不動産物権変動の具体的事例を用いた検討(2) 実際に、判例を素材とした具体的問題を、前回までに学習した知識を基に教室内で検討を行う。今回は、前回より発展的(複合的)事例を扱う(逐次教員が考え方についてリードする)。 9. 動産の物権変動と即時取得 教員による前回までに扱った具体的事例を復習、不動産物権変動秩序を総括した上で、動産に於ける物権変動秩序と即時取得について対比的に説明を行う。 10. 占有 「占有」という行為は、法的にどのように位置付けられるか?そして占有を認める意義は何か。 11. 所有権(1): 基本となる所有権概念とその制限について扱う。 12. 所有権(2): 共同所有に於ける所有権能。 13. 用益物権(1): 所謂「所有権」とは異なり、各種用途に従って設定する特殊な物権について。今回は、地上権と永小作権について扱う。 14. 用益物権(2): 地役権と入会権 所謂「所有権」とは異なり、各種用途に従って設定する特殊な物権について。今回は、地上権と永小作権について扱う。 15. 総合的考察: これまでの内容について、全て終わった段階で、物権法の位置付けとそのあり方について総合的な復習を行う。
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
① 講義内容について、必ずしも全ての内容のノートテイクは求めませんが、必要に応じて配布するレジュメに各人のメモを加えるなどの形で、後で自身が見直した際に理解できるようにしておくことを求めます。 ② 六法は常に持参してください。特に、条文中のどの文言にどのような解釈・争いがあるかは、民法典解釈に於いて最も重要なものとなります(テクスト研究的手法)。 ③ 適宜ディスカッションを行うため、授業中は集中し、自身の考えをまとめておいてください。尤も、理解できないという場合は人間である以上誰しもありますので、その際は直ちに挙手の上、質問してください。この世に愚問はありません。あるとすれば、それは「これは愚問であるか?」という問いのみです。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
・予習: 上記・授業計画に挙げたキーワードを指定教科書や図書館などで調べてみてください。 ・復習: レジュメを読んだ上で、レジュメにも指定教科書のページを予め脚注に書いておきますので、それに従って併せて復習してください。 ・教員への個別質問: 授業後に質問に来るでも良いですし、下記オフィスアワーに弊研究室にいらっしゃった場合、対応致します。本講義の担当教員は質問されるのが大好きなので、恐れずに質問に来てください。
【成績の評価】
・基準
・物権法分野の基礎知識の定義を適切に理解しているか、そして、その内容を個別具体的事案に適用し、扱うことができるかを問う。その意味で、定義・議論に関して記述する抽象問題を1題(30点*2)、事例問題を一題(40点)の100点満点とする(評価への割合はこれを以て100%とする)。
・方法
方法としては、上記の通り、期末試験100%とするが、上に述べたように、本講義は講義内にて適宜学生の発言を促す目的で、積極的な発言を行なったものは、その正誤に関わらず加点する場合がある(評価は試験100%として行うが、加点要素とする)。
【テキスト・参考書】
・民法判例百選Ⅰ 総則・物権 [第9版] ・安永正昭『講義 物権・担保物権法 〔第4版〕』(有斐閣, 2022)
【その他】
・学生へのメッセージ
財産権の具体化たる物権をどこまで認めるべきかという問題は、それこそフランス革命前の「売官特権」の是非から、後の共産主義革命に於いても「個人所有」は「特権」であるかなど、多分に政治学的根幹に関わる要素であります。伴って、物権秩序は経済的安定性にも多分に影響を及ぼします。そのため、本講義は、総合法律コースの学生のみならず、人文社会学科の他コースの学生の履修も推奨・歓迎します。
・オフィス・アワー
担当教員が新任であるため、未定。初回授業等で適宜提示する。
|