【授業の目的】
法と正義についての哲学的思考とはどのようなものか、それにはいかなる意義があるのかについて概説し、法哲学の基礎的知識を得ることを目的とする。法哲学1では「現代の正義論」について、リベラリズムと呼ばれる考え方とそれに対する批判を軸に、現代の法哲学者による正義論の展開を検討する。家族・親密圏における正義や国境を超える正義等の個別の論点に対する考察も織り交ぜる。全体を通じて、正義という理念への信頼と懐疑の双方に十分目配りしつつ、法に対する柔軟で主体的な考察のための機会を提供したい。
【授業の到達目標】
正義について哲学的に考察するための基本的知識を身につける。 現代社会の抱える難問について適理的に討議することができる。 法と正義の意味について自分なりの観点をもつ。
【授業概要(キーワード)】
正義、リベラリズム、功利主義、リバタリアニズム、フェミニズム、自由、平等、共同体
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25% A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
この授業は、現代社会で活躍するために必要な知識と教養を身につけ、法学分野の高度な専門知を獲得するための科目である。
【授業計画】
・授業の方法
講義形式で行うが、受講生とのディスカッションを極めて重視する。論点提示や参考文献紹介のためのレジュメをWeb Classにアップロードする。
・日程
初回をイントロダクションにあて、2回目以降は概ね以下のトピックを扱う予定である。詳細は第1回授業で示す。
1 法哲学は必要か 2 アナキズムと国家の存在 3 デモクラシーの未来 4 問題としての自由 5 正義・平等・再分配 6 正義論の深化:フェミニズムと多文化主義の挑戦 7 正義の縮尺:国民国家とグローバルな正義
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
テキストの該当箇所を必ず予習した上で参加すること。授業時は講義の内容を各自ノートにとりながら、論点を把握すること。授業中の発言・WebClass等を通じて、授業内容に積極的に応答すること。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
受講ノートを見直し論点をまとめる。疑問点を質問する。授業で紹介する参考文献(映像資料を含む)にあたり、授業内容への理解を深める。授業と関連する国内外のニュースに関心を持ち、授業内容と結びつけて考える習慣をもつ。なお、折に触れて憲法学、政治思想史、公共政策学等との関連性について言及する予定なので各自の学習の参考としてください。
【成績の評価】
・基準
正義について哲学的に考察するための基本的知識を身につけたこと、現代社会の抱える難問について適理的に討議することができること、法と正義の意味について自分なりの観点をもつこと、が合格の基準である。
・方法
期末試験(50%)、課題提出等による授業への主体的参加(50%)。ただし、受講生の人数に応じて配分を変えることがあり得る。
【テキスト・参考書】
テキスト:デイヴィッド・ミラー『はじめての政治哲学』(山岡龍一・森達也訳)、2019年、岩波現代文庫。
参考書〔授業内でも適宜紹介する。図書館に所蔵しているものを中心とするが、仮に所蔵がない場合も教員が所有している場合があるので、遠慮せず問い合わせてほしい。〕 (本授業と現代の大学を取り巻く情況について)佐藤郁哉『大学改革の迷走』(2019年、筑摩書房)
井上達夫編『現代法哲学講義〔第2版〕』(2018年、信山社)、J.S.ミル『自由論』(翻訳は各種あり)、深田三徳・濱真一郎編『よくわかる法哲学・法思想〔第2版〕』(2015年、ミネルヴァ書房)、瀧川裕英・宇佐美誠・大屋雄裕『法哲学』(2014年、有斐閣)那須耕介・平井亮輔編『レクチャー法哲学』(2020年、法律文化社)。小林史明『法と文学――歴史と可能性の探求』(2020年、勁草書房)、宇佐美誠・児玉聡・井上彰・松元雅和『正義論――ベーシックスからフロンティアまで』(2019年、法律文化社)、マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』(2011年、鬼澤忍訳、ハヤカワ文庫)、池田弘乃『ケアへの法哲学』(2022年、ナカニシヤ出版)。
【その他】
・学生へのメッセージ
この授業が、正義と法という言葉は「切れば血の出る」生々しい概念であることに触れるきっかけになり、法学という学問領域に魅力を感じている学生はもちろん、そうでない学生にとっても、法への新鮮な関心を喚起する時間になれば、と思います。総合法律コース以外の学生も大歓迎です。
なお、第1回を受講する前に必ずWebClassで本科目の欄を確認してください。
・オフィス・アワー
火曜日10:30~12:00(これ以外でも研究室在室中は随時可能)/人文2号館3階、池田(弘)研究室。
|