【授業の目的】
人間のみが享受する「ことばの能力」を客観的に検討し、言語学における基本的な課題や問題意識について理解するとともに、言語学における研究内容や学問的課題を分析的・批判的に検討し、諸問題を自己に関わる問題として思慮し分析する態度や能力を養う。
【授業の到達目標】
ことば・言語・文法を、人間の認知活動として議論することができる。【知識・理解】 言語学における基本的な課題や問題意識について述べることができる。【知識・理解】 言語学における研究内容や学問的課題を分析的・批判的に検討し、考察することができる。【態度・習慣】
【授業概要(キーワード)】
生物言語学、生成文法、言語獲得、脳の機能局在
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:26~50%
【科目の位置付け】
この授業は、人間が持つ「ことばに関する知識」を様々な視点から理論的に考察することで、健全な批判精神に裏打ちされた幅広い知識を習得する ものである。 [前期火7-8校時]
【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに
【授業計画】
・授業の方法
原則として対面授業(講義形式)です。 教員が準備するハンドアウト(講義資料)に基づいて、トピックごとに実例や用法等を見ながら、何が分かってきたか、どんな見方をするのか、どんな分析をするのかなどを紹介し、基本的な概念や分析手法を学習します。 学期の期間中に、適宜、宿題・課題を織り込みます。
・日程
おおむね下記順序で授業を進めます。 なお、1週目の授業のみ、新型コロナウイルスによる密を避けるため、オンライン授業(オンデマンド形式)です。第2週目の授業からは教室で実施します。 0. ガイダンス 1. イントロ 2. 私たちは文法に関する「直感」を持っている。(例:「太郎が 花子は描いた絵を 購入した」という表現は文法的にヘンな感じがしませんか) 3. 生得的な知識というものはあるのか(プラトン『メノン』、デカルト『方法序説』) 4. 言語獲得の時期は限られているという仮説(レネバーグ) 5. ピジンとクレオールから見る「文法」の力 6. 認知能力はモジュール構造を持つ(言語サバンChristopherの事例) 7. ブロードマンの脳地図(ブローカ失語、ウェルニケ失語) 8. SLI (specific language impairment)について考えてみる 9. 文法の構造依存性(例:「太郎の弟が 自分の夢を 語った」で「自分」とは誰のことか) 10. 復習と中間テスト 11. 言語の普遍性と多様性:生成文法理論からの回答(遺伝と母語獲得) 12. 個別言語の文法の多様性:パラメータ 13. 人類はいつ言語を手に入れたのか 14. 各論:英語の過去分詞のズレ("the broken radio"ではラジオが壊れている意味だが、"the claimed birthplace of Plato"はどんな意味か) 15. 各論:英語の形容詞のズレ("a wannabe Michael Jordan"はどんな意味か) 16. まとめと期末テスト
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
本授業の問いは、人間であればほぼすべての人がことばを自由自在に操れますが、そもそも、その「ことばに関する知識」の中身は何なのか、とい うことです。 この問いに答えるため、「文法」をコンピュータプログラムのように厳密な(冷酷無比な)仕組みとして、客観的に捉える態度が有用です。 また、常に、なぜ?どうして?という疑問をもってアプローチすることも重要です。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
ほぼ毎回、宿題/課題に取り組みますので、関連する復習/予習のほかに、毎回1~2時間の学習を伴います。 〔予習〕毎回の授業内容に継続性があり、前回までの授業内容のうえに次の授業内容が成り立つ関係にあるので、前回の授業内容を確認して授業に臨むことが大切です。また、適宜、宿題・課題を設けますので、取り組んだうえで授業に臨んでください。 〔復習〕授業内容を再確認してください。疑問点などは翌授業時に質問するなどして早い段階で解決しましょう。
【成績の評価】
・基準
言語学の諸問題に関する基本的な概念や分析法を理解し、種々の事項について説明できることを合格の基準とします。
・方法
宿題・課題40点、中間試験40点、期末試験20点。 なお、出席が10回以下の場合、60点未満の成績になります。
【テキスト・参考書】
テキストはありません。ハンドアウトをpdf形式で提供します。 参考資料はそのハンドアウトに掲載します。 参考資料の例: ・プラトン(著)藤沢令夫(訳)(1994)『メノン』東京:岩波文庫. (ΠΛΑΤΩΝΟΣ ΜΕΝΩΝ) ・Chomsky, Noam (1965) Aspects of the theory of syntax, Cambridge, Mass.: MIT Press. ・Lenneberg, Eric H. (1967) Biological foundations of language, New York: John Wiley & Sons. ・Hauser, Marc D., Noam Chomsky, and W. Tecumseh Fitch (2001) "The faculty of language: What is it, who has it, and how did it evolve,” Science 298, 1569-1579. ・Berwick, C. Robert and Noam Chomsky (2016) Why only us?, Cambridge, Mass.: MIT Press.
【その他】
・学生へのメッセージ
当たり前と思っている現象に疑問を抱くことから新たな発見や感動が得られるよい例の1つとして、言語を見てみてください。
・オフィス・アワー
年間を通して火曜日16:30~17:50(人文社会科学部1号館4階 富澤研究室)
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