医療、製造、そして教育と「消費者法」(法学)
 ‘Consumer Law’ for Health services, Manufacturers, and Educations
 担当教員:森 勇斗(MORI Yuto)
 担当教員の所属:人文社会科学部
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:1年,2年,3年,4年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
我々の日常生活に於いては、様々な法律関係が張り巡らされている。その中でも、とりわけ、日常の消費活動に関わる法律全般及びそれにかかる理論を「消費者法」と呼び、その力関係の衡平を保つ「法則」の検討が為されている。本講義では、これにつき、学生諸君を「消費者」として想定した上での知識は勿論、各学部学生が将来、就くであろう職業上、「事業者」として課せられる諸義務が「何故存在するのか?」という疑問の解決となるべき基礎理論の修得を目的とする。

【授業の到達目標】
・「消費者」としての権利を用いた「防衛術」【知識・理解】。
・「事業者」として課される義務の「理由」を知り、理解する【知識・理解】。

【授業概要(キーワード)】
法学入門、消費者契約法、製造物責任法、PL法、消費者教育、職業倫理

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:26~50%
D-2.事前学習(下調べ、調査等含む)で習得した知識等を踏まえて演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25%
A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
(1)本講義は、全学部向けの教養科目であるため、基礎知識及び理論の修得を目指すものであるが、応用的論点にかかる質問も歓迎する。
(2)また、本学の有する人文社会科学部、医学部、工学部、理学部及び教育学部いずれの学部を出ても、就職後に「事業者」側として本講義で扱う法的思考に関わる可能性があるため、その意味でも自身の専攻に活かして頂ければと思う。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
01.貧困をなくそう
03.すべての人に健康と福祉を
04.質の高い教育をみんなに
05.ジェンダー平等を実現しよう
06.安全な水とトイレを世界中に
08.働きがいも経済成長も
09.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
16.平和と公正をすべての人に

【授業計画】
・授業の方法
原則、講義形式で行うが、適宜学生諸君にも思考訓練の一環として、教員側から議論を求めることがある。その場合、上記の趣旨に照らして、答えが誤っていても減点することはしないし、寧ろ、諸君の率直な考えを聞いた上で、授業内容も適宜調整し、より理解の進む講義としたいため、誤りを恐れずに積極的に議論に参加して戴きたい。
・日程
1.「教養」としての消費者法概論①: 
「消費者法」と呼ばれる法ないしその具体化たる法律群が、消費者側及び事業者側双方の視点から、社会にどのように関わるかを俯瞰する。なお、医事法や金融商品取引法等の隣接分野の領域で、消費者法と通じる理論に基づく事例についても扱う。
2.「教養」としての消費者法概論②:
基本的には、第一回の復習と続きも兼ねつつ、消費者法が消費者・事業者双方の視点からの「消費者法」の社会的効用・利用場面の具体化を行う。また、適宜、上記隣接分野の内容も扱う。
3.「消費者法」の法典アルゴリズム①:
消費者法と呼ばれる法律群は、法学上「特別法」として扱われる領域であるが、その対義語たる「一般法」とはどのようなもので、どのような性質のものであるかの検討を行う。これを、法典(コード)の中での構造として論じる意味で、アルゴリズム的検討と呼ぶ。
4.「消費者法」の法典アルゴリズム②:
前回講義の内容を踏まえて、具体的事例を俯瞰し、「一般法」だけでは何が問題で、「特別法」、特に消費者法がどのような「修正」を加えているのかについての検討を行う。
5.消費者契約法①:消費者契約法上の「消費者」の定義と趣旨
消費者法として括られる法律の一つであるところの、消費者契約について扱う。今回は、特に消費者契約法の射程(適用範囲)と、それに照らした一般法の「修正」の趣旨についての検討を行う。
6.消費者契約法②:消費者契約法上の「契約法」の修正
消費者契約法が、具体的に、どのように一般法(民法)上の契約関係の規定を修正しているか、条文を牽きつつ検討する。
7.特定商取引法①: 消費者契約法より具体的且つ強力な「契約の修正」
特定商取引法という、消費者契約法に類似するが、一方で特定の数種類の業態に於ける取引(特定商取引)に限定した上で、より細かく強固な規定を置く法律について、その趣旨と射程(及び限界)について検討する。
8.特定商取引法②:各論(1)
特定商取引法各規定について、具体的事例を挙げながら逐条的に検討を行う。今回は、マルチ商法・連鎖販売取引について検討する。また、これらが何故規制に値するのか、経済的観点からの検討を行う。
9.特定商取引法③:各論(2)
特定商取引法各規定について、具体的事例を挙げながら逐条的に検討を行う。今回は、訪問販売、電話勧誘、通信販売、インターネット取引を中心に、クーリングオフ制度の意義について論じる。とりわけ、本来の射程と、インターネット取引等への拡張を検討する。その上で、クーリングオフの科学的検討を行う。
10.特定商取引法④:
特定商取引法の効用について、社会科学的検証を試みる。
11.製造物責任法①:
製造物責任法の意義について、その趣旨、定義、射程を具体的事例の上で検討する。今回は、特に「イシガキダイ」
12.製造物責任法②:
製造物責任法に関する事例を用いた検討。法の概要を説明の上、同法に於ける「製造物」該当性について、イシガキダイ事件を参考にディスカッション交え検討する。また、国際取引に於ける製造物責任について。
13.広告・表示規制
今回は、広告・表示規制について、クロレラチラシ事件を題材に検討を行う。その上で、近年の社会的事例としての、ソーシャルゲームに関する問題も一部取り扱う。
14.現代消費者法①: 適合性原則とAI
消費者法や金融商品取引法に於ける「適合性原則」とロボットアドバイザー(AI)による処理の問題点。
15.現代消費者法②: 消費者の権利の実現にかかる諸問題
消費者紛争(訴訟に限らない)に於いて、屡々その少額多数性から、消費者に於ける権利の実 現コスト、またはそのインセンティブが問題となる。アメリカに於けるクラスアクションや、アメリカ・中国に於ける懲罰的損害賠償のメリット・デメリットについて述べたのち、日本が行なっている施策(e.g.二段階訴訟; 東京医科大学事件を題材に)等について扱う。その上で、消費者アドバイザーとしてAIを活用する可能性と、その困難性(特に、GPT 4.0にかかる問題)について検討する。

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
①講義内容について、必ずしも全ての内容のノートテイクは求めませんが、必要に応じて配布するレジュメに各人のメモを加えるなどの形で、後で自身が見直した際に理解できるようにしておくことを求めます。
②教養科目であることに鑑みて、資料は適宜配布する(テクスト研究的手法)。
③適宜ディスカッションを行うため、授業中は集中し、自身の考えをまとめておいてください。尤も、理解できないという場合は人間である以上誰しもありますので、その際は直ちに挙手の上、質問してください。この世に愚問はありません。あるとすれば、それは「これは愚問であるか?」という問いのみです。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
・予習: レジュメを読んだ上で、レジュメにも指定教科書のページを予め脚注に書いておきますので、それに従って併せて復習してください。
・教員への個別質問: 授業後に質問に来るでも良いですし、下記オフィスアワーに弊研究室にいらっしゃった場合、対応致します。本講義の担当教員は質問されるのが大好きなので、恐れずに質問に来てください。
・その他: 日々の消費者関係のニュース、例えばリコール問題などもそうですし、最近ですと、高校生による「後払い」サービスにおける諸問題などにアンテナを張ってみてください。

【成績の評価】
・基準
・消費者法分野の基礎知識の定義を適切に理解しているか、そして、その内容を個別具体的事案に適用し、扱うことができるかを問う。その意味で、定義論述問題を二題(30点*2)出題の上、自身の専門で想定しうる消費者問題について論じることができるかを問う(40点)。
・方法
方法としては、上記の通り、期末試験100%とするが、上に述べたように、本講義は講義内にて適宜学生の発言を促す目的で、積極的な発言を行なったものは、その正誤に関わらず加点する場合がある(評価は試験100%として行うが、加点要素とする)。

【テキスト・参考書】
《テキスト》
・消費者法判例百選 [第2版]

《参考書》
※以下は、本講義では購入を強制しないが、簡潔且つ網羅的であり、本講義のためのみならず役に立ち得るため、手元にあることが望ましい。
・中田邦博=鹿野菜穂子(編)『基本講義 消費者法 [第5版]』(日本評論社, 2022)

【その他】
・学生へのメッセージ
「授業の目的」欄にも記載したが、高等教育機関たる大学に進学した諸君は、将来的に、事業者側として責任ある立場につく可能性が高い。そこで、「消費者法」を以て、消費者としても事業者としても、法的防衛手段として戴きたい。その意味で、本講義を「教養」として戴ければ幸いである。
・オフィス・アワー
担当教員が新任であるため、未定。初回授業等で適宜提示する。

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