【授業の目的】
固体地球を構成する物質の基本単位は“鉱物”である.地球には4000種を超える鉱物があり,鉱物が集まって岩石を形成している.これらの岩石や鉱物の特性の理解は,地球の発達・進化の解明をもたらすことを可能にする.この授業では,偏光顕微鏡を利用し,主要な造岩鉱物を鑑定・記載する能力を身につける.
【授業の到達目標】
本実験を通じて以下の達成を目指す. (1)偏光顕微鏡の使用に関する基礎知識を身につける. (2)基本的な造岩鉱物の光学的特徴を理解する.(3)主要な造岩鉱物を記載・鑑定する知識を身につける.(4)偏光顕微鏡観察で得た鉱物の情報から,岩石試料の形成過程を推定する方法を身につける.
【授業概要(キーワード)】
造岩鉱物,岩石記載,偏光顕微鏡,学生主体型授業
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25% D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:26~50% A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25% D-2.事前学習(下調べ、調査等含む)で習得した知識等を踏まえて演習、実習、実験等を行う機会がある。:26~50%
【科目の位置付け】
この授業は,顕微鏡観察を中心とした科目であり,専門的知識と技能を身に付け,地球科学分野の先端的な研究内容を理解し,説明できる能力を身に付ける(理学部のディプロマ・ポリシー).岩石・鉱物学Ⅰ〜Ⅲ,野外演習Ⅰ〜Ⅲ(岩石・鉱物学分野)の理解に相互に関与する.
【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに 07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに 15.陸の豊かさも守ろう
【授業計画】
・授業の方法
前半で結晶光学理論を学び,結晶光学に関する基礎的な確認試験を行う.偏光顕微鏡を用いた実習では,主要造岩鉱物の観察様式について学んだあとに,実際の薄片を用いて観察・記載を行う.最終的には『指定する薄片試料に対して岩石記載,それに基づいた岩石名決定』という課題で期末試験を実施する.本演習は7・8校時に行うが,偏光顕微鏡の片付けが9校時にかかるため,9・10校時に他の授業がある者はあらかじめ相談するように. 履修は地球科学コースカリキュラムを選択したものに限るほか,顕微鏡の台数に限りがあるため,別途履修調整を行うことがある.
・日程
1.ガイダンス:偏光顕微鏡とは何か?岩石・鉱物の鑑定について 2〜3.結晶光学: 光の性質,光学的等方体・異方体,光線速度・垂線速度・屈折率曲面 結晶の光学的性質,一軸性・二軸性,正号・負号 など 4〜5.観察様式と観察事項 ポーラライザーとアナライザーの調整,長さ・角度の測定,屈折率の観察 など 6.主要造岩鉱物の観察:石英,斜長石,カリ長石 7.主要造岩鉱物の観察:黒雲母,角閃石 8.主要造岩鉱物の観察:単斜輝石,直方輝石 9.主要造岩鉱物の観察:カンラン石,火山岩の組織 10.火山岩の組織の観察 11.副成分鉱物の観察 12.変成岩の観察 13.変成岩の観察 14.結晶光学の筆記試験,岩石薄片記載試験 15.岩石薄片記載試験(続き)
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
実験・演習がただの作業になってしまわないように,目的を明確にし,実験に取り組むこと. 本演習は「共通地球科学実験」「岩石・鉱物学Ⅰ」を履修していることが望ましい.
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
講義で配布した資料を用いて復習を行うこと.特に授業での学習内容に関連することを自ら教科書・参考書などで自分なりに調べて,理解を深める努力が不可欠である.単位の実質化のため,授業外における予習や復習等の自主的な学修に取り組むこと.準備学修・復習に必要な学修時間の目安は60時間.博物館などで岩石鉱物試料を観察することも良い時間外学習となる.
【成績の評価】
・基準
到達目標(1)~(4)を達成し,その内容を受講者自身の言葉で説明でき,実際の薄片観察で実践できることを合格の基準とする.
・方法
到達目標(1)~(4)の達成度を実習レポート,中間試験(筆記)および期末試験(岩石記載)にて評価する(実習レポート25%+中間試験25%+期末試験50%).
【テキスト・参考書】
テキスト: 必要な資料は授業中に適宜配布するが,岩石系に進む希望があるものは,下記参考書は購入しておくのが望ましい. 参考書:黒田・諏訪「偏光顕微鏡と岩石鉱物」 共立出版, 周藤・小山内「記載岩石学」共立出版, 都城・久城「岩石学」I・II・III 共立出版, Rocks and Minerals in Thin Section:Colour Atlas by Adams, A. E.
【その他】
・学生へのメッセージ
偏光顕微鏡観察は岩石・鉱物学的研究の基礎部分を担います.偏光顕微鏡を用いて鉱物を調べることで,地球規模の地質現象をひも解く足掛かりとなります.学生の皆さんの積極的な実験への参加を期待します.スケッチの際に,色鉛筆があると便利です.将来的に岩石学や鉱物学の研究を望む学生には,参考書の購入を勧めます.
・オフィス・アワー
原則,授業終了後としますが,これに限らず在室している時は随時対応します.
|