人体物質代謝学
 Human Metabolism
 担当教員:藤井 順逸(FUJII Junichi)、中島 修(NAKAJIMA Osamu)、田中 敦(TANAKA Atsushi)、
 担当教員の所属:医学部医学科
 担当教員の実務経験の有無:
 担当教員の実務経験の内容(有の場合):該当分野の教科書の執筆・翻訳・問題集作成の経験を活かして、学習の量と質のバランスのとれた教育を行う。
関連学会の役員の経験を活かし、最先端の知見を紹介しながら学生の探求心を高める。
 開講学年:1年  開講学期:通年  単位数:4単位  開講形態:講義・実習
 開講対象:医学部医学科  科目区分:専門教育・必修 
【授業の目的】
 講義と実習を通して、「医学・医療の発展のための医学研究の重要性 」を理解し、「リサーチマインドを醸成」して次世代における医学や医療の発展につながる人材の育成を目指す。
[講義]
細胞の基本的なしくみと特徴について理解したうえで、物質代謝・エネルギー代謝に関わる遺伝子とその発現・酵素・生化学反応などについて体系的に理解する。
生物を構成する基本単位である細胞の活動と個体における役割について、分子機能に基づいて理解する。
[実習]
講義で学んだ知識を、実験操作を通じて確認し、得られた結果をまとめて考察する機会とする。
実習グループ内で得られた結果について討議することで、探究心を高め科学的な思考方法を身に付ける。

【授業の到達目標】
[講義]
人の行動の基盤となる神経系および行動を可能とする運動器系の活動を支えるエネルギー・物質代謝について理解し、それらがどのように身体機能や生活活動につながるかについて、行動科学の見地から以下に示す項目について説明できるようになる。
・栄養素の摂取とエネルギー代謝について理解し、主要臓器における代謝経路の相違点と特徴を説明できる。
・糖・脂質・タンパク質の代謝によって、生命活動がどのように支えられているか説明できる。
・膜のイオンチャネル・ポンプによる細胞内外のイオン勾配の形成を理解し、神経系における静止電位と活動電位の形成と役割、それに連動する筋肉系の活動を概説できる。
・細胞の形を支える細胞骨格と細胞運動を担うモータータンパクの役割を説明できる。
・生命活動を支える酵素の機能とビタミン・金属・補酵素の役割ならびにその調節機構を説明できる。
・血液やホルモンによる細胞間および細胞内の情報伝達経路を理解し、概略を説明できる。
・細胞分裂・分化・死について概説できる。
・生命活動を脅かす、活性酸素・フリーラジカル・その他の毒素の発生と、そうした障害から身体を護る抗酸化・解毒系を説明できる。
[実習]
実験を行い、講義や教科書で得られた知見を総合して結果について考え、グループ内で討論することで、論理的思考とコミュニケーションのスキルを身につける。

【授業概要(キーワード)】
エネルギー代謝、細胞生物学、細胞内情報伝達

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:26~50%

【科目の位置付け】
専門科目の中でも最初に修得しておくべき生命科学に共通する基本科目として学ぶ。
<山形大学医学部医学科教育到達目標(コンピテンシー)>
2. 医学知識と問題対応能力(基礎医学)
8. 科学的探究(リサーチマインド、研究成果の発表能力)
9. 生涯にわたって共に学ぶ姿勢(生涯学習、自己研鑽、共同学習)

<医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)>
RE-01-01-01
RE-01-01-02
RE-01-02-01
RE-01-02-02
RE-02-01-01
RE-03-03-01
RE-05-02-02
PS-01-01-01
PS-01-01-02
PS-01-01-03
PS-01-01-04
PS-01-01-05
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PS-01-02-33
PS-01-02-34
PS-01-02-35
PS-01-02-36
PS-01-02-37
PS-01-04-05
PS-01-04-20

【SDGs(持続可能な開発目標)】
03.すべての人に健康と福祉を

【授業計画】
・授業の方法
[講義]
主にスライドを用いて行い、毎回印刷した資料を配布する。またWeb siteからファイルをダウンロードしての利用も可能とする。
成績の評価のためではなく、履修者が自分の理解度を確認できるように、定期的(概ね2-3コマごとに1回)に小テストを行う。
[実習]
生化学分子生物学講座・遺伝子実験センター・生化学解析センター・動物実験センターと合同で行なう。5つのグループに分かれて5種類の内容をローテーションで行う実習に加えて、1回はコンピューターを用いたバイオインフォマティックスに関する実習を全員で行う。
・日程
[講義]
・ 細胞の概要
・ 消化・吸収
・ アミノ酸
・ タンパク質構造と機能
・ 糖の構造と機能、解糖反応
・ TCAサイクル
・ 電子伝達系、グリコーゲン代謝
・ 脂質の構造と機能
・ 脂質の分解、脂質の合成
・ タンパク質構造と酵素反応
・ 酵素反応の調節、生体金属
・ ビタミン・補酵素
・ アミノ酸代謝I、II
・ ヘムの合成・分解
・ タンパク質分解、タンパク質合成
・ タンパク質の選別輸送
・ 7人体物質代謝学 試験(前半)
・ 細胞骨格と運動
・ 実験動物の取扱I、II
・ 細胞接着
・ 細胞周期と細胞分裂、細胞小器官I
・ 細胞小器官II
・ 細胞間情報伝達
・ 細胞内情報伝達I、II
・ 核酸の生合成と分解 、実習説明・レポートの書き方
・ DNAの複製、DNAの傷害と修復
・ RNAの機能、細胞老化と死
・ 活性酸素とレドックス反応、癌細胞の特性
・ 主要臓器の代謝、オミクス解析
・ 放射線と生物I、II
・ 人体物質代謝学 試験(後半)
・ 人体物質代謝学 再試験(前半)、 再試験(後半)

[実習]
・ゲノム解析学の実習と共同で、①遺伝子のクローニング、②遺伝子多型の解析、③酵素、④タンパク質、⑤動物実験、の5種類の実習を小グループに分かれてローテーションで行い、⑥バイオインフォマティクスについては、CBT室にて全員で行う。
・実習書の配布・レポートの作成についての説明(1コマ)
・1回目の実習 (1日半)
・2回目の実習 (1日半)
・3回目の実習 (1日半)
・4回目の実習 (1日半)
・5回目の実習 (1日半)
・6回目の実習 (半日)

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
講義については、きちんと出席し、単なる暗記ではなく、総合的・論理的に理解すること。
積極的に実習を行い、得られた結果について考察すること。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
・講義ごとに大事なスライドについてはプリントを配布するので、整理して活用すること。
・授業では重要なポイントを中心に説明するが、それだけでは不十分なので、教科書や参考書を活用して理解を深めること。

【成績の評価】
・基準
講義内容に関する試験に合格し、実習を修了した者にだけ単位を認定する。
[講義]
・日程に示すように、内容全体を前半と後半の2回に分けて試験を行ない、いずれについても合格点をとる必要がある。
・前半と後半の試験で60点に満たない者については、再試験をそれぞれ一度ずつ行い、60点以上を合格とする。
[実習]
・基本的に遅刻・早退・欠席は認めず、病欠等の場合も含めて別の日に補講等を行う。
・出席して実習を行った者が提出する実習レポートで評価する。
・方法
講義に関連した試験と実習を合わせて評価を行う。
[講義]
・試験は、筆記(マークシート)にて行なう。
 前半と後半のそれぞれについて再試験を一度ずつ行う。
・理解度をみるために小テストを講義期間中に何度か行うが、試験の結果には反映させない。
[実習]
・出席とレポートの提出をもって受講修了と認める。

【テキスト・参考書】
[講義]
特定の教科書を指定しない。以下の生化学・分子生物学に関する教科書・参考書に加えて授業中に適宜紹介する。
「ハ―パ―生化学」(丸善)、「分子細胞生物学」(東京化学同人)、「シンプル生化学」(南江堂)、などの最新版
[実習]
実習直前に行なう説明会で実習所を配布し、内容の説明を行う。

【その他】
・学生へのメッセージ
代謝を分子レベルで理解しておくことは、専門を学ぶ上だけでなく健康な生活をおくる上でも役立つので、日ごろの生活とりわけ食事や運動時に代謝がどのように行われているか考えることを勧める。
・オフィス・アワー
木曜日の授業終了後(16:30-17:30)

<山形大学で教えていること>
臓器ごとの代謝の違い・癌細胞の代謝の特性・放射線とその生物学的影響についての基礎的な事項・実験動物の取扱い(講義と実習)・PCを用いたバイオインフォマティックス解析(実習)。

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