【授業の目的】
Ⅰ.講義 ・遺伝子の構造・機能を理解し、塩基配列の違いや遺伝子変異がどのような影響を与えるかを予測できることを目的とする。 ・遺伝子の構造・機能を明らかにするために、どんな実験手法を利用すべきかを判断できること、また、その原理を説明できることを目的とする。 ・上記の知識をもとに、遺伝子の違いが個体差や疾患をもたらすメカニズムを説明でき、遺伝子の違いに基づく、治療戦略の選択の基本原理を説明できるようになることを目的とする。
Ⅱ.実習 ・PCR、PCR産物のクローニング、大腸菌に対する遺伝子組換え実験、組換え大腸菌選別のための、組換えDNAの抽出、制限酵素処理、電気泳動によるDNAの分析の実験方法を体験・学習し、それぞれの原理を説明できることを目的とする。
【授業の到達目標】
ゲノム・染色体・遺伝子 ①メンデルの法則、ミトコンドリア遺伝、エピゲノム修飾(インプリンティングを含む)及び多因子遺伝について理解している。 ②遺伝型と表現型の関係について理解している。 ③染色体の構造を理解し、ゲノムと染色体及び遺伝子の構造と関係性、体細胞分裂及び減数分裂における染色体の挙動について理解している。 ④DNA の複製と修復、DNA から RNA への転写、タンパク質合成に至る翻訳を含む遺伝情報の発現及び調節(セントラルドグマ)について理解している。 ⑤染色体分析・DNA 配列決定を含むゲノム解析技術について概要を理解している。 ⑥ゲノム編集技術とその応用について概要を理解している。 分子進化 ⑦進化の基本的な考え方について理解している。 ⑧生物種とその系統関係について理解している。 ⑨アミノ酸配列や塩基配列の比較による分子系統樹について概要を理解している。 病因と病態 ⑪ゲノムの多様性に基づく個体の多様性について理解している。 ⑫単一遺伝子疾患、染色体異常による疾患、ミトコンドリア遺伝子の変異による疾患を挙げ、遺伝様式を含め理解している。 ⑬多因子疾患における遺伝要因と環境要因の関係について理解している。 遺伝医療・ゲノム医療 ⑭集団遺伝学の基礎としてハーディ・ワインベルグの法則について概要を理解している。
【授業概要(キーワード)】
Mendel の法則、ミトコンドリア遺伝、ゲノムインプリンティング、遺伝型、表現型染色体、ゲノム、減数分裂、遺伝子、DNA、複製、修復、RNA、転写、翻訳、遺伝子発現制御、PCR、ゲノム編集、分子進化、ハーディ‐ワインベルグの法則、遺伝様式、ゲノムの多様性、エピゲノム、多因子疾患
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25% D-2.事前学習(下調べ、調査等含む)で習得した知識等を踏まえて演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
遺伝・遺伝子に関する基本的な内容の理解を目標とする。
<山形大学医学部医学科教育到達目標(コンピテンシー)> 1.プロフェッショナリズム(研究者としての倫理観) 2.医学知識と問題対応能力(基礎医学) 8.科学的探究(リサーチマインド、課題発見と問題解決、研究成果の発表能力) 9.生涯にわたって共に学ぶ姿勢(生涯学習、自己研鑽、共同学習)
<医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版> PS-01-01: 生命現象の科学 PS-01-01-06~PS-01-01-14 ①~⑨ PS-01-04: 病因と病態 PS-01-04-01~PS-01-04-03 ⑪~⑬ PS-03-01: 遺伝医療・ゲノム医療 PS-03-01-01 ⑭
【SDGs(持続可能な開発目標)】
03.すべての人に健康と福祉を 09.産業と技術革新の基盤をつくろう
【授業計画】
・授業の方法
テキストに沿って、スライドおよびレジメを利用して、到達目標の内容を具体的に説明する。既習内容の理解を確認させるため、授業日ごとに、授業終了後、当日の内容に関する課題の提出(Excelファイルメール添付)を求める。理解を深めるため、課題ファイルに記入された質問・感想に対して、次回講義で回答する。対面授業の場合、出席カードの提出を求める。100分授業のため、中ごろに5分程度の休憩を入れる。
・日程
講義時間 木曜日
5/16(7-8校時):遺伝子と染色体の構造 5/23(5-8校時):メンデルの法則、分子進化、ハーディワインベルクの法則、遺伝型と表現型、遺伝様式 5/30(5-8校時):DNAの合成、複製と修復、変異 6/6(5-8校時):減数分裂、性決定,DNAからRNAを経てタンパク質合成に至る遺伝情報の変換過程 6/13(5-8校時):DNAからRNAを経てタンパク質合成に至る遺伝情報の変換過程(つづき)、変異の影響 6/20(5-8校時):プロモーター、転写因子などによる遺伝子発現の調節 6/27(5-8校時):ヒトの遺伝的多様性とその影響,遺伝子とゲノム解析(クローニング、PCRの原理、ゲノム編集) 7/4(5-8校時):遺伝子とゲノム解析(クローニング、PCRの原理、ゲノム編集)(つづき) 7/11(5-6校時):DNA組換え実験安全研修(実習で行うDNA組換え実験のため、カルタヘナ法講義) 7/11(7-8校時):学内講師:生化学解析センター越智陽城 転写制御機構 7/18(7-8校時):特別講義「RNAワクチンの開発」(学外講師:第一三共株式会社 森田浩司博士) 7/25(7-8校時):特別講義「5-アミノレブリン酸の医薬品開発」(学外講師:キヤンファーマ株式会社 田中徹博士)
期末試験:10/17(木)10:00~11:40 再試験予定:11/13(水) 10:20-12:00
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
事前に指定した教科書の該当箇所を予習する。 講義資料およびスライドを見ながら、講義内容を聴講する。 講義内容の課題を提出するとともに、授業内容の疑問点等を記入して、質問する。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
講義予定に相当する指定教科書の内容を精読する。 講義資料および指定教科書を利用して、課題を提出し、講義内容を復習理解する.
【成績の評価】
・基準
合格(単位取得)の基準は、7割以上の出席かつ、期末試験での基準点を超えること。部活動のための欠席は公休とは認められないので、注意すること。
・方法
成績評価は、期末試験の成績に加え、出席状況、課題の成績、質問・感想の内容と回数を加味して行う。
【テキスト・参考書】
テキスト:Essential細胞生物学〈DVD付〉原書第4版 南江堂(購入が望ましい)
参考書(一部講義で利用): ヒトの分子遺伝学 第4版 メディカル・サイエンス・インターナショナル 12,960円(訳本)
トンプソン&トンプソン 遺伝医学 第2版 メディカル・サイエンス・インターナショナル 10,800円(訳本)
Essential Genetics and Genomics 17th Edition Daniel L Hartl (2020)
ダイナミック図説生物 総合版 東京書籍 第9版
【その他】
・学生へのメッセージ
講義内容を暗記しようとするのではなく、自分の頭で内容を理解し直すようにする。 授業内容は必ずしも平易ではないため、特に、生物未履修の学生はしっかり学習して、内容理解を目指すこと。 出席が7割未満の場合、試験の受験資格を失うので、十分に注意すること。最近、出席不足で留年する1年生が増えているので、余裕をもって出席すること。 カンニング等不正行為が発覚した場合は単位が取れないだけでなく、留年となることを銘記。 他の受講者の集中を妨げるような私語・態度は慎むこと。 トイレは休憩時間内に済ませ、出来る限り、講義中に立ち歩かないようにすること。
・オフィス・アワー
9:00~17:00(事前に連絡があれば、この時間以外でも対応可能) メールnakajima@med.id.yamagata-u.ac.jpでも質問を受け付ける。
<山形大学で教えていること> ゲノム編集技術などを利用した遺伝子改変マウスを使って、生体内での遺伝子の役割を探る方法を学び、疾患の仕組みや治療法開発に繋がる研究手法を具体的に学ぶ。学外講師からは、日本で最初に開発されたRNAワクチンについて学び,さらに,担当教員の研究対象である、生体内物質5-アミノレブリン酸の、ベンチャーファーマによる医薬品への応用研究がどうように行われているかを学ぶ。
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