基礎腫瘍学
 Basic Oncology
 担当教員:北中 千史(KITANAKA Chifumi)
 担当教員の所属:医学部医学科
 担当教員の実務経験の有無:
 担当教員の実務経験の内容(有の場合):脳神経外科臨床医として実際に悪性脳腫瘍診療に携わり、本授業科目で講義する内容を活用して診療にあたっていた。尚、担当教員は脳神経外科専門医資格を取得している。
 開講学年:2年  開講学期:後期  単位数:1単位  開講形態:講義
 開講対象:医学科  科目区分:専門教育・必修 
【授業の目的】
本講義はモデルコアカリキュラム平成28年度改訂版の
C 医学一般
C-4-6 腫瘍
の学修目標
1. 自律性の増殖と、良性腫瘍と悪性腫瘍の違いを説明できる。
2. 癌の原因や遺伝子変化を説明できる。

および
E 全身におよぶ生理的変化、病態、診断、治療

E-3 腫瘍
E-3-1) 定義、病態
の学修目標
1. 腫瘍の定義と病態を説明できる。

に該当し、「細胞の増殖機構とそれらの異常を学び、腫瘍の定義、発生機構と病態を理解する」ことを授業の目的とします。がんは「遺伝子の病気」であることから、特にがんで見られる遺伝子異常や、がん発生の分子メカニズムについての理解を深めることを目的とします。

【授業の到達目標】
上記授業の目的にもあるように、本講義ではどのような発がん要因が染色体やがん遺伝子・がん抑制遺伝子にどのような変化を引き起こし、その結果細胞にどのような変化が生じてがんが発生するのかを理解し説明できるようになることを到達目標とします。

【授業概要(キーワード)】
腫瘍、がんの原因、遺伝子変化

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25%
D-2.事前学習(下調べ、調査等含む)で習得した知識等を踏まえて演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
基礎医学各分野、臨床医学を結びつける要に位置する分野です。他の分野についてのよい復習・予習の機会と捉えて学習に臨んで下さい。
尚、本講義の該当項目は、以下の通りです。

「山形大学医学部医学科教育到達目標(コンピテンシー)」の該当項目
2. 医学的知識と問題対応能力
8. 科学的探求
9. 生涯にわたって共に学ぶ姿勢

「医学教育モデルコアカリキュラム(平成28年度版)」の該当項目
C 医学一般
C-4-6 腫瘍
および
E 全身におよぶ生理的変化、病態、診断、治療
E-3 腫瘍
E-3-1) 定義、病態

【SDGs(持続可能な開発目標)】
03.すべての人に健康と福祉を
04.質の高い教育をみんなに

【授業計画】
・授業の方法
授業内容のハンドアウトを配布した上でパワーポイントを用いたスライド形式の講義を行います。
尚、本年度も昨年度に引き続き授業内容はあらかじめ録画・編集し、随時オンデマンド視聴可能な状態とします。また、このような方法をとることで感染症・自然災害など種々の要因により対面授業が不可となった場合にも対応できるようにし、可能な限り学びの継続性を担保できるようにします。さらに、この方式は、正当な理由で講義を欠席せざるを得なかった場合でも受講が可能となるようにすることも意図しています。
・日程
各回の主要なテーマ(あくまで主要なテーマであり、各回の講義は他のテーマを含む場合があります)と順序は次の通りです。
第1回 基礎腫瘍学講義オリエンテーションと腫瘍の定義
第2回 腫瘍発生の要因(総論)
第3回 腫瘍発生の要因(各論)
第4回 原がん遺伝子の生理機能とその発がんにおける役割・作用メカニズム(前半)
第5回 原がん遺伝子の生理機能とその発がんにおける役割・作用メカニズム(後半)
第6回 がん抑制遺伝子の生理機能とその失活によるがん発生のメカニズム
第7回 プログラム細胞死とがん
第8回 細胞の不死化、がんと免疫、多段階発がん、がんウイルスによる発がん
第9回 がん研究紹介、筆記試験について

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
近年の分子生物学の著しい進歩のため、講義で扱う内容も膨大なものとなっています。その内容を習得するためにはまず内容を「理解」することが不可欠です。講義ではノートを取ることよりも話を聞いて理解することに努めて欲しいと思っています。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
異常(疾患)は正常を知るためのよい手がかりとなり、正常を知ることは異常を理解するうえで必要不可欠です。がん細胞はゲノムDNAの複製・修復機構、分裂増殖(細胞周期)、生存・プログラム細胞死のメカニズム異常に特徴付けられます。従って本講義の内容をよく理解し習得するためには、複製・修復、細胞周期、プログラム細胞死等の生理機構について十分理解を深めておくことが望ましいと考えます。
また授業の進行状況にもよりますが、可能な限り前回(まで)の授業範囲を対象とした復習テストとその解答・解説を行います。各テストは、積極的に活用すれば、習得度確認と知識・理解の定着に威力を発揮するはずです。十分な予習(すなわち復習)をもって臨んで下さい。また、授業に際しては前回(まで)の講義プリントを手元に置かれることを勧めます。通常、講義時間内には内容を「おおまかに理解する」のが限度であり、各論的事項までその場で習得することは困難と考えられます。従って講義終了後、講義内容(及びテストで正答できなかった箇所)についてなるべく速やかに復習を行い、知識・理解を確実にしておくことを強く勧めます。

【成績の評価】
・基準
到達目標に記したがん細胞生物学に関する基礎的知識を身に着けるとともに、それらの知識を活用しながらがんの発生プロセスやがん細胞の特性を含めがんとはどのような病態であるかを理解していることを合格の基準とします。
・方法
出席をチェックし筆記試験受験の要件としています(これは医学科履修規定によるものです)。成績評価のための試験としては、理解度を確認するための確認テスト(このテストは授業各回の最後に行われるもので、上述の前回までの授業範囲を対象とする復習テストとは異なります)ならびに(全基礎腫瘍学講義終了後の)筆記試験を行います。

尚、対面授業が不可となった場合は授業ごとの確認テストを行うことができません。その場合は可能な限り講義シリーズの途中で代替の中間試験(中期確認テスト)を実施します。また何らかの理由で講義シリーズ終了後の筆記試験が実施できなかった場合は、確認テストや中期確認テストの成績に基づいて基礎腫瘍学の成績を決定する場合があります。各種試験ならびにその結果の扱い方についての詳細は第1回の基礎腫瘍学オリエンテーションの中で説明します。

また、本授業科目では筆記試験を経て合格に至ることのできなかった学生に対する再試験は実施しません。不可避かつ正当な事由で筆記試験の本試験を受験できなかった学生に対しては、追試験の実施を考慮します。

【テキスト・参考書】
教科書は指定しません。スライド内容を含むプリントを配布し、それに沿って講義を進めます。参考書としては以下をお勧めしています。
中村桂子、松原謙一監訳「細胞の分子生物学」第7版 ニュートン・プレス
Kumar、 Abbas、 Aster編"Pathologic Basis of Disease"第10版 W.B.Saunders

【その他】
・学生へのメッセージ
今日がんの領域でも分子生物学が臨床の現場に浸透しており、その膨大な知見を理解に基づくことなく断片的に習得することは不可能に近くなっています。従って将来臨床医学でがんを学ぶ際に惑わないためには本講義の履修を通じて「がんの基礎固め」をしておくことが不可欠であることを肝に銘じて欲しいと考えています。
・オフィス・アワー
「山形大学で教えていること」
本講義ではモデルコアカリキュラムが求めるがんの原因や遺伝子変化を学ぶのみならず、それらがいかにして細胞のがん化を引き起こすかという分子的機序についても学ぶことができます。

410002571-2024-0401-40240