社会医学・医療学(法医学)
 Forensic Medicine
 担当教員:水野 大(MIZUNO Dai)、小河原 照正 (OGAWARA Terumasa)
 担当教員の所属:医学部医学科
 担当教員の実務経験の有無:
 担当教員の実務経験の内容(有の場合):担当教員は全て、大学の法医学分野の講座において教育に参加していた経歴があり、いずれも法医解剖と検体検査、死体検案、遺体あるいは生体の遺留物による個人識別、死後画像(Ai)の開発や運営の実務に携わっている。
 開講学年:3年、4年  開講学期:前期  単位数:5単位  開講形態:講義
 開講対象:医学科  科目区分:専門教育・必修 
【授業の目的】
法医学とは医学的解明助言を必要とする法律上の案件、事項について、科学的で公正な医学的判断を下すことによって、個人の基本的人権の擁護、社会の安全、福祉の維持に寄与することを目的とする医学である。従って、いままで学んできた基礎あるいは臨床医学の各項目に関する基本的な理論を十分に理解し、これらの理論を基に医学的事項が社会的、特に法律が関わる案件、にどの様に関与し応用されるのか理解を深めることを目的とする。特に、死の判定、そして死体検案書を作成することは医師のみが行える業務であり義務でもあるので死後の取扱、例えば検案や異状死や法医解剖など、と併せて十分に理解し、死亡診断書(死体検案書)作成や死後の取扱について適正に対応できる必要がある。また死については心臓死のみならず脳死や安楽死についても理解し、人が避けて通れない死に対する総合的な理解を深めることも必須である。加えて、これらの死から生への振り返り、死から生を学ぶことによりこれまで学んだ医学的知識や理論を生への応用へ繋げることも目的とする。

【授業の到達目標】
1,心臓死、社会死、脳死、安楽死の概念と判定方法を説明できる。死を巡る国内あるいは海外における多様な価値観の理解を深め説明できる。
2,死体検案の方法を説明し、死後取扱方法について説明できる。
3,様々な傷病によるショックや臓器不全そして死に至る機序を説明できる。
4,機械的損傷をはじめとした外傷の形成機序を説明できるとともに、これらの形成された創傷の性状から成傷器や成傷機序を推定できる。
5,中毒や高熱・低温などの環境要因による障害機序を説明でき、生じうる症候や死後の形態学的特徴について説明できる。
6,死体現象や死体周囲の状況から死後経過時間を推定できる
7,形態やDNAなどの遺伝子マーカーの特徴を説明でき、個人識別の方法を説明できる。
8,上記の各手法を用いて、死亡診断書(死体検案書)を適正に作成できる。
9,死の判定や、死後取扱における遺族などへの対応方法を説明でき行動できる。
10,医学関連領域について、その解決方法を学び、併せて医療や保健にどの様に生かされていくかを実感し述べることができる。
11,法医学の対象を理解し、法医学で判明しうる事実と限界を理解し述べることができる。

【授業概要(キーワード)】
異状死、検案、死亡診断書(死体検案書)、法医解剖、外因死、中毒、個人識別

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
<山形大学医学部医学科教育到達目標(コンピテンシー)>
1,プロフェッショナリズム 医療人としての倫理観および責任感と社会的責務を自覚できる。
2,医学的知識と問題解決能力 社会医学の知識を医療・保健活動に応用できる。
3,コミュニケーションおよび他職種連携 医師として遺族の心情や行政・司法当局の役割や医師との関係について配慮し適切な対応ができる。
4,医療の質と安全 死体や検体を取り扱うに当たり、感染や中毒などの事故の可能性を想定し対策を取ることができる。
5,社会における医療の実践 法医学で得られた情報や知識を疾病・事故・自他殺予防に活用し、災害時の検案活動や国際的な災害に対する取扱についても考察できる。
6,科学的探求と生涯学習 医学が遭遇する法律的課題の問題解決の道筋が一部解明され、医学の発展にも繋げることができる。
<医学教育モデル・コアカリキュラム(令和4年度改訂版)>
PS-01-03-31, 33: 薬物の有害作用、毒物の反応性、PS-01-04-16~19: 炎症、PS-03-05-14 臓器不全、PS-03-05-04 心停止の原因分類と病態及び診断の要点、SO-03: 法医学

【SDGs(持続可能な開発目標)】
03.すべての人に健康と福祉を
04.質の高い教育をみんなに

【授業計画】
・授業の方法
令和6年度は対面講義を予定しているが、感染症等の影響により変更の可能性がある。
下記の授業計画に従って、系統講義を中心に授業を進めていくが、まとめの段階で実例に則したシミュレーションを設定し質疑応答形式でも進行していく。できるだけスライドを用いて画像を重視した授業進行に努めたい。
・日程
令和5年度3学年2月(既に開始)~令和6年度4学年5月と令和6年度3学年2月に実施する。講義は年度をまたぎ実施するので注意頂きたい。講義は原則として2・4月中は火曜日5・6校時、5月は概ね水曜日5~8校時施予定であるが、例外もあるので講義予定表や掲示に注意すること。
令和6年3年生
2月6日(火)5・6校時: 法医学とは何か、法医学の対象
2月13日(火)5・6校時:生活反応と死後変化
2月20日(火)5・6校時: 創傷・機械的損傷
令和6年4年生
4月2・9日(火)5・6校時: 機械的損傷
4月11日(木)・18日(木)5・6校時: 窒息
4月23日(火)・30日(火) 5・6校時: 中毒
5月7日(火)7・8校時: 異常温熱・低体温
5月8日(水)3・4校時: 診療現場での法医学
5月8日(水)5~8校時: 内因性急死・小児の異状死
5月22日(水)5~8校時: 個人識別(含むDNA分析)
5月23日(木)3・4校時: 死後画像(Ai)
5月29日(水)5~8校時: 死亡診断書と死体検案書、総括
令和7年3年生
2月4日(火)5・6校時: 法医学とは何か、法医学の対象
2月18日(火)5・6校時: 死後変化と生活反応
2月28日(金)3・4校時: 創傷総論
令和7年4月以降予定 4年生
機械的損傷、窒息、中毒、異常温熱その他の外因死、病死(特に内因性急死)、乳幼児の異状死(乳幼児虐待・乳幼児突然死症候群・嬰児殺)、死後画像(Ai)、個人識別、死亡診断書と死体検案書、総括

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
1)配付資料やテキスト・参考書の内容を基に講義を進める。画像や重要事項はパワーポイントのスライドを使用する。
2)配付資料はあくまでもまとめであり、断片的な情報となるので、講義やテキストにより断片の隙間を補填し、体系として理解すること。
3)遅刻、私語、飲食などは他の受講生の迷惑となるので慎むこと。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
1)成書を参考にし、法医学的問題点について自分なりの疑問点を整理しておく。
2)法医学に関する事柄の理解を深めるために、書籍や新聞等を読むように心がける。
3)個人識別の項目では1学年に履修した生命科学演習(基礎遺伝学)の範囲も含む。
4)本学で実施している法医解剖は随時見学可能である。また本講義を修了後は希望すれば東京都監察医務院の検案見学も可能である。また、他大学で主催する公開の法医学セミナーにも参加して見聞を拡げることを推奨する。

【成績の評価】
・基準
必要出席日数の75%出席と、質疑応答に対して適切な応答ができていること(正答である必要はない)、授業を妨害するなど不適切な授業態度がないことをもって平常点合格とする。
筆記試験は、原則として60%の正答を合格とするが、全体の成績を加味して調整することもある。
・方法
出席状況や受講態度ならびに講義中の質疑応答内容をもとに平常点を算出し、基準に達している学生に筆記試験を課す。
筆記試験は講義内容の理解度や応用力を確認するため実施し、マークシート式および論述式筆記試験を1回実施する。本試験が基準に達していない場合は再試験を1回のみ実施する場合がある。
平常点が合格に達し、筆記試験に合格した学生を合格とする。

【テキスト・参考書】
石津日出雄、高津光洋監修 『標準法医学 第8版』 医学書院(2022)
高津光洋編 『検死ハンドブック 第3版』 南山堂(2016)

【その他】
・学生へのメッセージ
法医学を専攻しなくとも、異状死体の検案や死亡診断書(死体検案書)作成など将来医療活動の中で法医学の知識や技能が必要となる場面が必ずある。異質なものと敬遠せず基本的事項は必ず習得して欲しい。
講義では様々な映像や個人情報関する内容もあるので、講義の具体的内容を電子媒体等を通して友人に話すなどの行動を慎み謙虚な態度で授業に臨み学習すること。
・オフィス・アワー
月~金曜日(祝日を除く) 9:00~17:00 法医学講座で受ける。ただし、所用で不在にすることがあるので事前に連絡をとることが望ましい。

<山形大学で教えていること>
死後画像(Ai、 PMCT)に関する講義も予定している。

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