【授業の目的】
医師として求められる基本的な資質として、患者中心の視点の医療を理解し、倫理観とルールを理解し実践できることを目的とする。より質の高い最善の医療の提供のための知識・技術・態度の連携を図り、協働意思決定の理論と姿勢を学ぶ。そのためには、倫理観をもち、医療の安全確保をすすめ、チーム医療を通したより効率的で適材適所の医療サービスを提供のための協働対話の重要性を学ぶ。さらに医療過誤の生じる要因や予防について理解すると共に、医療過誤や患者からの訴えに対する平和構築への対応についても理解することを目的とする。
【授業の到達目標】
1.最善の医療と意思決定について理解し説明できる。 2.医療上の事故の種類を述べ、それぞれが生じる要因を説明できる。 2. 医療上の事故が生じたときの報告方法や対応する組織について説明できる。 3.医療安全管理者や医療安全体制の役割を説明できる。 4、医療上の事故等と合併症の違いを説明できる。 5、医療上の事故・過誤等に関連した刑事・民事責任や行政処分を説明でき、医療訴訟の流れを知り、併せて医師としての責務を説明できる。 6.行動科学としてのリスク管理を学び、コンフリクト・マネジメントの重要性を理解できる。 7.インフォームド・コンセントの重要性と説明義務について理解できる。 8.患者中心医療のためのチーム医療の意義を説明でき、医師としての行動科学としての学習が構成員と各々の役割に影響を及ぼすことを理解できる。 9.医療機関の他に、福祉や行政との関わりや多職種連携について説明できる。 10. ナラティヴの視点を学び、情動と認知を踏まえた医療メディエーションという医療対話推進の考え方を知る。
【授業概要(キーワード)】
インフォームド・コンセント・リスクマネジメント、医療安全、医療事故、医療裁判、法的責任、コンフリクト・マネジメント、臨床倫理、チーム医療、多職種連携、コミュニケーション、メディエーション
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:1~25% A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:26~50%
【科目の位置付け】
<山形大学医学部医学科教育到達目標(コンピテンシー)> 1、プロフェッショナリズム 医療人としての責任感と社会的責務 2、コミュニケーション能力 医療者間コミュニケーション 3、医療の質と安全の管理 安全管理と医療の質 4、チーム医療の実践 多職種連携、同職種連携、リーダーシップ 5、医療の質と安全の管理 感染対策、安全管理、医療の質
<医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)の該当項目> PR. プロフェッショナリズム GE. 総合的に患者・生活者をみる姿勢 CM. コミュニケーション能力 IP. 多職種連携 PS. 専門知識に基づいて問題解決能力 SO. 社会における医療の役割の理解
【SDGs(持続可能な開発目標)】
03.すべての人に健康と福祉を 10.人や国の不平等をなくそう 12.つくる責任つかう責任 16.平和と公正をすべての人に 17.パートナーシップで目標を達成しよう
【授業計画】
・授業の方法
下記の授業計画に従って、授業を進めていく。できるだけスライドを用いて画像を重視した授業進行に努めたい。患者相談窓口等を活用して、実際の患者からの苦情や不満にも共感できるように、Q&A方式も取り入れて、学生と一緒に考える授業を実施する。
・日程
講義予定:下記の予定である。 6月28日(金)1・2校時 医療事故・患者安全・医療裁判・リスク・マネジメント 3・4校時 インフォームド・コンセント・臨床倫理 7月 5日(金)1・2校時 チーム医療・多職種連携・コンフリクト・マネジメント
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
1)体系的な教科書は無いので、配付資料の内容を基に講義を進める。画像や重要事項はパワーポイントのスライドを使用する。許諾を受けたDVDなども用いる。 2)配付資料はあくまでも授業のまとめであり、断片的な情報となるので、講義内容や関連図書や新聞などにより断片の隙間を補填し、体系として理解すること。 3)時間厳守、私語禁止(ただし挙手による許可を得て随時の質問可)、携帯電話の電源を切ること、教室内飲食禁止、積極的参加(メモをとりながらの発言)
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
1)配付資料やスライドを参考にし、自分なりの疑問点を整理しておく。 2)関連する書籍や新聞等を読むように心がける。 3)理解を深めるために、担当教員との質疑応答を推奨する。
【成績の評価】
・基準
必要出席日数の80%出席と、質疑応答に対して適切な応答ができていること(正答である必要はない)、不適切な講義態度がないこと、積極的な講義への姿勢、試験の代わりに、講義に関連した事項について課題を課し、レポートを提出する。再帰的思考や内容が適切であれば合格とする。
・方法
合格の基準は、医師としてのプロフェッショナリズムを理解できる行為として、始業時に出席していること、講義において、積極的・能動的に参画できていることである。また、試験ではなく、レポート提出で評価する。レポートは、講義内容の理解度や応用力を確認するため実施する。講義をとおして得られた知識や経験に基づいて主体的に考察し、論述できることとする。原則として、内容が適切であれば合格とする。
【テキスト・参考書】
体系的な教科書は存在しないが、本学図書館所蔵の書籍には以下の書籍等がある。 Charles Vincent著,相馬孝博/藤澤由和訳.PATIENT SAFETY 患者安全,篠原出版,2015 Albert R Jonsen著,赤林朗監訳.臨床倫理学 新興医学出版社,2006 和田仁孝/手島豊/中西淑美著.医療事故対応の実践-判例と実例に学ぶ,三共法規出版,2009 和田仁孝/中西淑美著.医療メディエーションーナラティヴアプローチ.シーニュ,2011
【その他】
・学生へのメッセージ
学部導入セミナーで学んだ、医の倫理、医師の義務と裁量、インフォームドコンセントについて、医師としてどうあるべきかを再把握してほしい。本講義では病院実習を開始する前段階で、これらのテーマをあわせてより具体的に思索してほしい。この領域は他の科目と異なり、一定の診断基準や現象を扱う内容とはいえない。それだけに暗記というよりは、むしろ正確な認識や判断力を身につけて欲しい。
・オフィス・アワー
月~金曜日(祝日を除く) 9:00~17:00 綜合医学教育センターで受ける。ただし、所用で不在にすることがあるので事前に連絡をとることが望ましい。
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