【授業の目的】
これまでに学んだ有機化学と高分子合成化学を基盤として、有機化合物の効率的な合成経路を決定するための逆合成解析を身につけることを目的とする。また、各反応における有機反応機構に対する理解を深め、自ら合理的な反応機構が書けるようになることを目的とする。
【授業の到達目標】
1)有機反応の種類を理解している。2)塩基性条件における極性反応について例をあげて説明することができる。3)酸性条件における極性反応について例をあげて説明することができる。4)芳香族化合物の反応と合成を理解している。5)有機合成の実例をもとに逆合成経路を自ら設計することができる。
【授業概要(キーワード)】
逆合成、シントン、合成等価体、極性転換、官能基相互変換、保護基、位置選択性、立体選択性、置換反応、付加反応、脱離反応、転位反応、転移反応、求電子性、求核性、カルボカチオン、カルボアニオン、芳香族
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25% A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25% A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
この講義は、高分子・有機材料工学科教育目標の「高分子及び有機材料工学に関する分子レベルから材料レベルにわたる体系的知識と技能を身につける」に対応している。また、ディプロマポリシー「3.専門分野の知識と技能」に対応している。有機化学の基礎を基盤として、有機化合物と材料合成のための合成化学的知識を扱う。有機合成のスキルは、研究室における研究開発プロポーザルおよび卒業研究で必須のスキルである。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
03.すべての人に健康と福祉を 07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに 09.産業と技術革新の基盤をつくろう 12.つくる責任つかう責任
【授業計画】
・授業の方法
講義は基本的にパワーポイントならびに板書で行う。パワーポイント資料は配布しないが板書できる時間を確保するので内容はノートに記述する。
・日程
第1回:イントロダクション:結合の極性 第2回:有機合成の基礎:曲がった矢印の考え方 第3回:逆合成解析(ⅰ):標的分子と官能基 第4回:逆合成解析(ⅱ):シントンと合成等価体 第5回:逆合成解析(ⅲ):塩基性条件における極性反応 第6回:逆合成解析(ⅳ):酸性条件における極性反応 第7回:逆合成解析(ⅴ):官能基変換 第8回:逆合成解析(ⅵ):設計と戦略 第9回:選択性(ⅰ):官能基選択性 第10回:選択性(ⅱ):保護基 第11回:選択性(ⅲ):位置選択性(アルケン・芳香族化合物) 第12回:選択性(ⅳ):位置選択性(カルボニル化合物・エポキシド) 第13回:有機合成の実例(ⅰ):医薬品中間体 第14回:有機合成の実例(ⅱ):天然物 第15回:期末テストとまとめ
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
板書の順序が重要なのでノートをとりながら講義の流れを大切にすること。この講義では有機電子論が重要である。繰り返し書くことで電子の流れに対するイメージを逞しくして欲しい。わからないことは積極的に質問して欲しい。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
講義前に有機化学I,IIの内容を復習しておくことが大切です。
【成績の評価】
・基準
60点以上:シントンと合成等価体について理解している 70点以上:極性転換と官能基相互変換について理解している。 80点以上:官能基選択性と保護基について理解している。 90点以上:自ら逆合成経路を設計できる。
・方法
期末試験(100点満点)を実施し,60 点以上を合格とする。
【テキスト・参考書】
教科書:C.L. ウィリス、M. ウィルス「有機合成の戦略―逆合成のノウハウ」化学同人
参考書:小倉克之、日本化学会 編,「有機人名反応」,朝倉書店
参考書:Robert B. Grossman、 奥山 格(訳)「有機反応機構の書き方 基礎から有機金属反応まで」丸善
有機化学の教科書は良書が多く出版されており、図書館にも用意されています。ぜひ参考にしてみてください。また、丸善等で販売している分子模型を購入することをお勧めします。有機化学の理解がよりスムーズになります。
【その他】
・学生へのメッセージ
有機化学の魅力は、炭素とその周辺の限られた元素から膨大な化合物が形成される多様性にあります。その多様性から暗記の学問と思いがちですが、有機電子論を理解することで多くの化学反応を系統的に説明できるようになります。そして有機電子論の正当性と適用限界を正しく理解することで軌道概念の重要性を知ることができます。
・オフィス・アワー
火曜日午後5時~6時 工学部3号館 3-2101号室。これに限らず在室している時は随時対応します。確実に面談したい場合は事前に予約をお願いします。
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