【授業の目的】
この科目は,学習・教育到達目標(C)機械工学の応用力〔CP3〕に対応しています. 機械設計を行う上で不可欠となる固体材料の力学的挙動の計算機シミュレーションに必要とされる連続体力学,エネルギー原理,有限要素法の基礎理論を習得するとともに,実際にソフトウェアによる演習をとおして数値シミュレーションの実施方法を実践的に身につける. 近年盛んに用いられている計算力学的手法のほとんどが連続体力学にその基礎を置いている.したがって,連続体力学の基礎を知らずして市販されている解析ソフトのマニュアルを読むことすら不可能である.そこで,本講義では,まず,連続体力学の基礎(それに用いる数学も含めて)を修得し,次に,有限要素法の基礎を学んだ後,数値シミュレーションのためのアルゴリズムを順序立てて理解する.このような基礎から実践力までの修得により、自主的・継続学習のあり方を身につける.
【授業の到達目標】
この科目は,学習・教育到達目標(C)機械工学の応用力〔DP4〕に対応しています. (1)3次元の連続体力学を扱うためのテンソル代数(4階テンソルまで)の基礎的な演算(内積,外積,テンソル2重積,テンソルの空間勾配に関する演算)ができる. (2)応力テンソル,ひずみテンソル,3次元のフックの法則について理解し,数値計算に応用できる(平面応力問題への縮約法の理解を含む). (3)平衡方程式(釣合いの式)から仮想仕事の原理を導出することができ,さらに,仮想仕事の原理に基づいて有限要素方程式を導出することができる. (4)各種有限要素(2次元3節点~9節点要素)を用いて線形弾性体の平面(応力・ひずみ)問題に対する有限要素解析を実際に実行することができる. (5)線形弾性体の有限要素解析で得られた数値解の精度を,技術者の視点で正しく評価できる.
【授業概要(キーワード)】
行列式の取り扱い・連立方程式の解法を含む線形代数の応用能力,引張・圧縮・せん断応力とひずみ,応力集中,多軸応力,ひずみエネルギーとエネルギー原理,構造解析,計算機利用の基礎,プログラム言語,数値計算,シミュレーション
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25% D-2.事前学習(下調べ、調査等含む)で習得した知識等を踏まえて演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25% A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
機械システム工学科の学習・教育到達目標のうち,「(C)機械工学の応用力〔CP3, DP4〕」の力を養成するための科目である.
【SDGs(持続可能な開発目標)】
09.産業と技術革新の基盤をつくろう 12.つくる責任つかう責任
【授業計画】
・授業の方法
「授業概要(目標)」に掲げた項目のうち,(1)~(3)は講義形式による説明と理論的内容に対する演習・レポート課題が中心.(4)と(5)については情報センターを利用して,講義と演習を合わせて行う.90分×15回にわたり講義と演習を組み合わせて授業を行う.担当者オリジナルのテキストを使用する. オンラン学習システムWecClassを使用。資料の配布、課題の提出は全てWecClass上で行う。
・日程
第1週 線形代数の知識の確認から連続体力学で用いるベクトル・テンソル解析へ [予習]線形代数の知識の確認(ベクトルの内積,外積,ベクトルの掛け算,転置,逆) [復習]線形代数の知識の確認,配付プリントによる復習課題(レポート提出)
第2週 ベクトルとテンソル1 [予習]オリジナルテキスト「連続体力学入門」のp. 5~8を確認しておく. [復習]ベクトルの座標変換について十分に把握する.
第3週 ベクトルとテンソル2 [予習]オリジナルテキスト「連続体力学入門」のP.9~12を読んでテンソルの意味について大枠を把握しておく. [復習]ベクトルとテンソル演算の実践的演習(プリント配付によるレポート課題).
第4週 ベクトル場,テンソル場の微分,その他の演算則 [予習]オリジナルテキスト「連続体力学入門」のP.12. [復習]ベクトル場,テンソル場の微分,その他の演算則について復習しておく.
第5週 3次元の応力テンソル,ひずみテンソルとHookeの法則とそのマトリクス表記 [予習]材料力学IIで学習した成分表記の応力テンソルについて再度確認しておく.オリジナルテキスト「連続体力学入門」のp.13~14を把握する. [復習]3次元のHookeの法則を2次元に縮退させると平面応力,平面ひずみの式が得られ,さらに1次元化すると基礎材料力学及び演習で学習したσ=Eεとなることを確認する(レポート課題).
第6週 テンソル表記による平衡方程式とCauchyの式 [予習]材料力学IIで学習した成分表記の応力平衡方程式について確認しておく. [復習]テンソル絶対表記と成分表記の違いについて検討し理解を深め,それらの表記に慣れる.
第7週 テンソル表記による仮想仕事の原理式の導出 [予習]材料力学IIで学習した成分表記の仮想仕事の原理式について確認しておく. [復習]テンソル絶対表記と成分表記の違いについて検討し理解を深め,それらの表記に慣れる.
第8週 有限要素の定式化とその仮想仕事の原理式への導入 [予習]オリジナルテキスト「有限要素法に関する学習資料」のp.6~9について大枠を把握しておく. [復習]マトリックス表示とテンソル表記の仮想仕事の原理の両者を同等に扱えるようよく比較しておく(レポート課題).
第8週 有限要素法における問題設定の方法 [予習]オリジナルテキスト「有限要素法に関する学習資料」のp.14~15について大枠を把握しておく. [復習]次週からの実習に備えて机上で,境界条件,荷重条件の設定,節点の定義,要素の定義について確認しておく.
第9回 商用有限要素法ソフトによる演習(片持ちはりの解析1) [予習]オリジナルテキスト「ADIANによる片持ち梁の応力解析」に目を通しておく. [復習]要素分割や要素種類を変更した解析を実施する.
第10週 商用有限要素法ソフトによる演習(片持ちはりの解析2) [予習]要素分割や要素種類を変更した解析を実施する.[復習]要素分割や要素種類を変更した際の有限要素解の収束性について知見をまとめる(レポート提出).
第11週 商用有限要素法ソフトによる演習(孔空き板の応力集中問題) [予習]オリジナルテキスト「ADIANによる線形解析 ボイド問題」の内容を把握しておく. [復習]要要素分割や要素種類を変更した際の有限要素解(応力集中問題における形状係数)の収束性について知見をまとめる(レポート提出).
第12週 ソースコードを用いた有限要素法(平面問題,定ひずみ要素)の学習1 [予習]オリジナルテキスト「コンピュータ言語を用いた有限要素法のプログラミング実習」の内容を把握しておく. [復習]配付されたソースコードを解読する.解析結果を可視化する方法を考える.(レポート提出).
第13週 ソースコードを用いた有限要素法(平面問題,定ひずみ要素)の学習2 [予習]オリジナルテキスト「コンピュータ言語を用いた有限要素法のプログラミング実習」の内容を把握しておく. [復習]配付されたソースコードを平面ひずみ問題が解けるように改変する(レポート提出).
第14週 本授業で学習した内容の適用範囲 [予習]これまでの学習内容をまとめておく. [復習]第1~14回までのすべての内容.
第15回 期末試験および総括 [予習]第1~14回までのすべての内容. [復習]期末試験の全ての問題の完答.
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
講義は理論と実践の両方を重視する.遠慮なく質問する姿勢をもつこと.
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
線形代数,ベクトル解析を多用するので,それらの基礎については事前に予習すること. 理論が理解できていないと,実習課題の遂行も難しくなる.理論を十分に復習しながら実際のシミュレーション課題に望むこと.演習の実施中には,解いている問題の工学的意義について深く考えること.
【成績の評価】
・基準
期末に行う筆記試験(50%)とレポートとしての提出物(50%)に対する評価のうちの60%以上を得点することが単位認定の要件である. 「授業概要(目標)」に挙げた項目に対する評価の比率は(1)20%,(2)20%,(3)20%,(4)20%,(5)20%とする.
・方法
期末筆記試験(50%分)は,「授業概要(目標)」の(1)~(5)についての筆答試験である.レポート(50%分)については5回程度の提出を求め,主たる内容は「授業概要(目標)」のうちの(4)(5)に対するものである.
【テキスト・参考書】
担当者が配布する資料を用いる.(WebClass上で配布)。 参考書: 中村喜代次,森教安,連続体力学の基礎,コロナ社,1998(2800円)、戸川隼人,有限要素法概論,培風館,1981(3600円)
【その他】
・学生へのメッセージ
CGで表示される美しいシミュレーション結果はよく目に触れると思います.本講義ではその裏にある理論の修得と同時に,実際に解析を行い,実践的な学習を重ねます.ソフトウェアは理論と実践が全て含まれているこの上ない学習教材です. FORTRAN77またはFORTRAN90が使える環境(情報センタなど)が必要です.自分のログイン名,パスワード等の情報を事前に確認しておくこと.
・オフィス・アワー
黒田充紀のオフィスアワー:毎週木曜日16:00-17:30.
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