【授業の目的】
鬼退治と云う英雄武勲譚の成立・性質と、背後に見える中世人、更には人間本性の思考、欲望を理解するために、『酒天童子』講読、および関連物語・伝承の検討を通じて、物語の性格・価値・成立について理解を深めることを目的とする。
【授業の到達目標】
講義を通じて学生が、1『酒天童子』の表現の特質について、2物語、人物成立の文学的・民俗的背景について、3、その文学的価値について【以上、知識・理解】を、期末レポートで記述できる。
【授業概要(キーワード)】
酒天童子、伊吹童子、英雄武勲譚、鬼退治譚、鉄人退治譚、山中生長譚、源頼光、渡辺綱、藤原保昌、刀剣説話、国際説話比較
【科目の位置付け】
この授業は、文学や絵画、民間伝承について様々な視点から論理的に考察することで、健全な批判精神に裏打ちされた幅広い知識を習得するものである。
【授業計画】
・授業の方法
テキスト『酒天童子』・『伊吹童子』の講読を中心に講義を進め、授業でお見せする様々な写本・絵巻、関連古文献や、配布する関連資料を併用しながら授業を進めます。
・日程
この授業は原則として毎週火曜日2校時、以下のテーマと順序で行います。 第1回目 講義のすすめ方とガイダンス 第2回目 『酒天童子』物語・関連伝承の全般的紹介 第3回目 『酒天童子』・『伊吹童子』物語・絵巻の成立と展開についての講義 第4回目 『酒天童子』講読第1回 鬼の出現、その性格についての講義 第5回目 『酒天童子』講読第2回 頼光、綱、保昌の性格と地位の変化についての講義 第6回目 『酒天童子』講読第3回 呪具(名刀・隠れ頭巾・毒酒等)についての講義 第7回目 『酒天童子』講読第4回 鬼が城の位置、異界、理想郷としての性格についての講義 第8回目 『酒天童子』講読第5回 酒天童子の形象・誕生譚についての講義 第9回目 『酒天童子』講読第6回 酒天童子と中世人の欲望の深層についての講義 第10回目 『酒天童子』講読第7回 童子退治の方法と死後の力についての講義 第11回目 『伊吹童子』講読第1回 スピンオフとしての性格、伊吹嶽信仰についての講義 第12回目 『伊吹童子』講読第2回 鉄人退治譚、山中生長譚、地主神との関係としての性格についての講義、レポート作成ガイダンス(1) 第13回目 『酒天童子』講読第7回 東アジアの伝承説話についての関係の講義 第14回目 『酒天童子』講読第7回 東アジアの古典・日本古典との関係からする成立についての講義 第15回目 まとめと期末レポート執筆についてのガイダンス(2)
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
1)指定されているテキストの重要箇所・配布資料に線を引く、古資料を撮影するなどして活用する。 2)板書等、講義内容をノートに筆記するなどして内容の理解に努める。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
使用テキスト『酒天童子』・『伊吹童子』を授業前に通読し、各回で講義する関連内容についての文献を授業後、調べ精読、理解する(合わせて15~30時間) 図書資料は米沢女子短大、市立米沢図書館が利用できます。また基本資料は東大史料編纂所HPの大日本史料総合DBの「治安1.7.19」所収の頼光卒伝で、公開されております。
【成績の評価】
・基準
授業の到達目標で示した1,2,3の課題について適切に理解、説明できることを合格の基準とします。
・方法
授業の到達目標で示した1,2,3の課題について適切に理解、説明できることを合格の基準とします。
【テキスト・参考書】
テキスト『酒天童子』(現代語訳付き原文)はコピーを配布します。 この授業の参考書として、佐竹昭広『酒呑童子異聞』平凡社選書(1977)、岩波同時代ライブラリー(1992)が必読。島津久基『羅生門の鬼』平凡社東洋文庫(1970)は関連の伝承を多く載せます。また高橋昌明『酒呑童子の誕生 もうひとつの日本文化史』中公新書(1992)、中公文庫(2005)、岩波現代文庫(2020)は別視点からの立論です。
【その他】
・学生へのメッセージ
古典文学は退屈、鬼退治など空想的で他愛ないオハナシと考えていませんか?酒色への耽溺、特に人肉嗜食をモチーフとする、日本文学史上きっての不穏な文学作品を知らないままで良いですか? しかもそれが時間空間的に広く世界に連続しているとしても?
・オフィス・アワー
授業に関する学生からの質問は、各回の授業終了後又は開始前に受け付けます。
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