日本語教育学概論
 Introduction to Japanese Language Education
 担当教員:今泉 智子(IMAIZUMI Satoko)
 担当教員の所属:学士課程基盤教育院
 担当教員の実務経験の有無:
 担当教員の実務経験の内容(有の場合):国内外の日本語教育現場における教授経験のある教員が、その経験を活かして日本語教育の概要及び具体的な実践に関する講義を行う。
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
この授業は、日本語を外国語として教えるために必要となる基礎的な知識を得ることを目的とする。まず、日頃意識せずに使っている日本語の文法を、異なる言語を母語とする学習者の立場から見ることによって、客観的に分析する目を養う。母語である日本語を「話せる」ことと、その仕組みを「説明できる」ことは全く異なる。日本語のどのような点が学習者にとって問題となるか、それはどうしてか、という疑問から出発し、考えていく。 (例:「この人は田中さんです」と「この人が田中さんです」はどう違う?)また、日本語を教えるにあたってどのような教材があり、どのような教室活動を通して教えるのかを学び、最終的に自分で教案を作ることができるようになることを目指す。

【授業の到達目標】
1) 日本語を客観的に見て、その文法的仕組みを説明することができる。【知識】
2) 学習者の誤用例を見て、誤用の原因を推測することができる。【知識】
3) 初級レベルを対象とした授業の教案を作成することができる。【技能】

【授業概要(キーワード)】
日本語教育、日本語教育文法、誤用分析、教授法、教材、教案

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25%
B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:1~25%
C-1.自分の意見をまとめて発表する機会がある。:1~25%
A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:26~50%
B-2.事前学習(下調べ、調査等含む)をした上で、他の学生の意見を尊重しつつグループとしての結論を出すために議論をする機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
この授業は、グローバル化の進む現代社会においてその需要が広がる日本語教育に従事する人材に必要となる基本的な知識を修得するとともに、言語を通して異なる捉え方や文化に対する理解を深めるものである。(人文社会科学部のディプロマ・ポリシー)

【SDGs(持続可能な開発目標)】
10.人や国の不平等をなくそう
16.平和と公正をすべての人に

【授業計画】
・授業の方法
<第1回> 
日本語教育とはどのようなものか、日本語教育を取り巻く現状について理解する。
<第2回~第9回>
日本語学習者の誤用例や、似ていても意味の異なる文を見て、その原因や意味の違いを考え、学習者の誤用や文法を説明する練習を行う。
<第10回~第15回>
授業で学習した知識を使って、実際に初級学習者向けにどのように説明し、どのような教室活動を行えばよいかを学び、初級レベルを対象とした教案を作成する。
・日程
第1回 ガイダンス、日本語教育とは
第2回 品詞と活用
第3回 格助詞
第4回 は・が
第5回 自他動詞・ヴォイス
第6回 テンス・アスペクト
第7回 モダリティ・語用論
第8回 音声 
第9回 やさしい日本語
第10回 教授法と教材
第11回 教室でのやりとりとフィードバック
第12回 授業の流れと教室活動
第13回 教案作成
第14回 教案の共有と修正
第15回 模擬授業

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
1) 教員による解説を聞くだけでなく、自分が無意識に使っている日本語の文法規則や似ている表現の意味の違いなどを自分で分析してみることが重要になる。
2) 授業ではペアやグループで考えたり、発表したりする活動が中心となる。積極性と協調性をもって参加すること。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
1) 毎週の課題【1~2時間/週】
・毎週、次週のテーマについて自分で考えてみる予習課題を課す。
・毎週、学習した内容に関する課題を課す。
課題は授業中に共有することもあるので、必ず取り組んでくること。
2) 中間レポート【3~6時間/学期】
第2回~第7回の内容に関する中間レポートを課す。
3) 教案作成と模擬授業準備【4~8時間/学期】
初級レベルの授業の教案を各自作成し、クラスで模擬授業を行う。教案作成には時間がかかるため、授業外でも各自で作業する時間が必要になる。
4) 参考書リストに挙げた書籍等を読んで、日本語学の知識の幅を広げること。
5) 積極的に留学生と交流し、学習者の日本語に触れる機会を増やすことを強く勧める。日本語の授業見学も歓迎する。

【成績の評価】
・基準
1) 日本語教育に必要な基本的な文法を理解できているか。(課題、中間レポートによる)
2) 学習者の誤用例の原因や、似ている文の違いをわかりやすく説明することができるか。(課題、中間レポートによる)
3) 学習した内容を活用して、教室活動を考え、教案を作成することができるか。(教案作成による)
・方法
毎週の課題30%、中間レポート35%、教案作成35%

【テキスト・参考書】
<テキスト>
ハンドアウトを配布する。

<参考書>
●日本語学・日本語教育文法
庵功雄他(2000)『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』スリーエーネットワーク
庵功雄(2012)『新しい日本語学入門 : ことばのしくみを考える 第2版』スリーエーネットワーク
太田陽子(編)(2021)『超基礎 日本語教育のための日本語学』くろしお出版
原沢伊都夫(2012)『日本人のための日本語文法入門』講談社現代新書
原沢伊都夫(2023)『日本語教師をめざす人のためのスモールステップで学ぶ文法』スリーエーネットワーク
●第二言語習得・教授法
奥野由紀子(編)(2021)『超基礎 第二言語習得研究』くろしお出版
小林ミナ(2019)『日本語教育よくわかる教授法』アルク
●日本語教育・やさしい日本語
庵功雄(2016)『やさしい日本語-多文化共生社会へ』岩波新書
姫野伴子・小森和子・柳澤絵美(2015)『日本語教育学入門』研究社
森篤嗣(編)(2019)『超基礎 日本語教育』くろしお出版

【その他】
・学生へのメッセージ
普段意識せずに使っている日本語の使い分けを、外国語として説明するのは簡単なことではありません。しかし、わずかな違いで意味が全く変わったり、同じ意味でも言語によって表し方が異なったりするのは、とても興味深いことです。是非、言葉の不思議さと面白さを体験してください。
・オフィス・アワー
木曜日13:00-14:30 今泉研究室(基盤教育1号館2階E-214号室)
または、メールで連絡してください。連絡先は初回授業でお知らせします。

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