【授業の目的】
「身体」の表象 小説や映画、写真、広告などで人間の身体がどのように表象されているかを考察します。この場合の「身体(body)」は、生物学的または物質としての肉体のみならず、人間の意識や精神を表出する媒体としての身体(ジェスチャー、舞踏など)や、時代の慣習、価値観、偏見、流行、思想科学といった文化全体を体現するイメージとしての身体(ファッション、裸体、君主像、社会的マイノ リティの姿など)をも含みます。さらにインターネットやゲーム空間におけるヴァーチャルな身体も、現代人の何らかの意識と関連づけることができるかもしれません。このように「身体」を通してその背後に立ち現れる人格や時代の思考構造を分析することがこの授業のねらいです。
【授業の到達目標】
「身体」という視点から物語やイメージを分析することで、一歩踏み込んだ作品理解ができるようになります。またそれを通じて、批評的な物の見方と自分の考えを言語化する能力を身につけます。
【授業概要(キーワード)】
身体 精神 文学 映画 写真 マンガ アニメ 広告 ファッション 舞踏 メディア 表象
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:76~100% B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:76~100% C-1.自分の意見をまとめて発表する機会がある。:1~25% D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:76~100%
【科目の位置付け】
この授業は、文化的諸問題について表象文化論の観点から論理的に分析し、解決策を提案する力を身につけるために編成される科目である(人文社会科学部人文社会科学科人間文化コースのカリキュラム・ポリシー)。
【授業計画】
・授業の方法
毎回、担当者が自分の設定したテーマにかんする研究発表をおこないます。その後、受講者全員でディスカッションをおこない、問題を掘り下げていきます。
・日程
受講者の数と関心にしたがって日程を決定します。
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
発表者は各々の関心にもとづいてテーマを選び、自分の視点がどこにあるかを常に意識しながら論を組み立ててください。他の受講者は積極的に議論に参加する姿勢が求められます。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
「身体」についての問題意識と議論の方向性をまずは明確化してください。十分な時間をかけて発表準備をする必要がありますが、随時、担当教員がアシストします。 議論の内容をふりかえり、自分の意見とつきあわせてみましょう。授業をきっかけにさらに問題を発展させることが大切です。
【成績の評価】
・基準
授業への取り組み(平常点)と期末レポートにより、知識の修得、理解の度合い、汎用的技能(論理的思考力、文章表現力)、参加の度合いを判定します。基準は、1) 「身体」概念の表象文化論的分析法を把握している、2) 文化現象と社会との関係をさまざまな事例を通してとらえることができる、の二点です。
・方法
発表40%、学期末レポート40%、議論への参加度20%
【テキスト・参考書】
教科書は指定しません。 授業のテーマに関係する書籍としては以下があります(他の文献については授業内で紹介します)。 ・ 小林康夫・松浦寿輝(編)『身体:皮膚の修辞学』、東京大学出版会、2000年 ・ 鷲田清一・野村雅一(編)『表象としての身体』、大修館書店、2005年 ・ A・コルバン、J-J・クルティーヌ、G・ヴィガレロ(監修)『身体の歴史』鷲見洋一他訳、藤原書店、全3巻、2010年 ・ ミシェル・フーコー『性の歴史』(全四巻)、新潮社、1986-2020年 ・ バーバラ・M・スタフォード『ボディ・クリティシズム―啓蒙時代のアートと医学における見えざるもののイメージ化』高山宏訳、国書刊行会、2006年 ・ 岡田温司『キリストの身体』中央公論新社、2009年 ・ 小池寿子『内臓の発見 ー 西洋美術における身体とイメージ』筑摩書房、2011年 ・ 鈴木杜幾子『フランス革命の身体表象』東京大学出版会、2011年 ・ 宇野邦一『映像身体論』みすず書房、2008年 ・ 塚田幸光(編著)『映画の身体論』、ミネルヴァ書房、2011年 ・ 大塚英志『アトムの命題 ー 手塚治虫と戦後まんがの主題』、角川書店、2009年 ・ 清水知子『ディズニーと動物』筑摩書房、2021年 ・ 長滝祥司『メディアとしての身体』、東京大学出版会、2022年 ・ 鷲田清一『ちぐはぐな身体 ―ファッションって何?』、ちくま文庫、2005年 ・ 黄順姫『身体文化・メディア・象徴的権力 ― 化粧とファッションの社会学』2019年、学文社
【その他】
・学生へのメッセージ
自分の発表だけでなく、他の人の発表もよく聞き、質問や意見を述べる姿勢が大切です。
・オフィス・アワー
金曜日16:20-17:50 (その他在室時随時)石澤靖典研究室(1号館4階) メールアドレス:ishizys@human.kj.yamagata-u.ac.jp
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