民法基礎(総則)
 Civil law Ⅰ
 担当教員:森 勇斗(MORI Yuto)
 担当教員の所属:人文社会科学部人文社会科学科総合法律コース
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
 本講義は、民法入門も兼ねて、日本民法典の全体構造を踏まえると、民法総則(1-174条)がどのように位置付けられ、どのように解釈・検討されるかの知識・手法を身につけることを目的とする。そのため、本講義では、逐次、物権編・債権編・親族編・相続編との関わりも述べるものとする。
 本講義では、第一に民法は「民法典」という法典の形で制定された法律であることを抜きにしても、どれほど密接不可分に我々の生活に関わっているのかの感覚を得るべく、具体的な「身近な物事」の中でどういったものが本法に規定されるものであるかをディスカッション形式で話し合ってもらい、それを踏まえて、民法典の内容に踏み込んでいく。
 第二に、本講義に於いては上記目的に則し、本邦民法典の構成・趣旨を理解するべく、民法典前史を比較法的に概観し、本邦民法典がどのような性質を備えるに至ったかを述べる。
 第三に、これらを踏まえて、法典上、法律としての「民法」がどのように解釈・適用されるかを主に判例と各条文の関係を意識した上で逐条的に解説していく。

【授業の到達目標】
1. 民法は何故「技術」ではなく「学問」として検討されてきたかという疑問にある程度答えられるようにすること(知識・理解)。
2. 民法総則が民法典全体でどのように位置付けられ、具体的にどのように他編と関わっているかを捉えられるようにすること(知識・理解)。
3. 民法総則に於ける各条文の解釈手法を身につけ、自ら該当する具体的問題に対して、(あくまで総則の範囲で)解決がなされうるかを導けるようにすること(技術)。

【授業概要(キーワード)】
民法、民事法、人、物、法律行為、意思表示、代理

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25%
A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:76~100%

【科目の位置付け】
(1) 本講義の導入科目として、「私法入門」及び「金融法入門」という講義もありますので、履修を推奨します(強制ではない)。
(2) 民法総則とも関わるため、「民法基礎(総則)」も履修していることが望ましい。
(3) 民法は、特に法典(コード)全体での体系(矛盾がないか、特則がないか)が問題となるため、今後も民法他分野の講義も履修することが望ましい。
(4) また、金融関係・行政関係の基礎知識ともなりうるため、これらに関係する科目を履修する場合、本講義を受講することで理解の促進となるため、上記の履修予定者は、本講義を履修して戴きたい。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに
08.働きがいも経済成長も
09.産業と技術革新の基盤をつくろう
11.住み続けられるまちづくりを
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう

【授業計画】
・授業の方法
原則、講義形式で行うが、適宜学生諸君にも思考訓練の一環として、教員側から議論を求めることがある。その場合、上記の趣旨に照らして、答えが誤っていても減点することはしないし、寧ろ、諸君の率直な考えを聞いた上で、授業内容も適宜調整し、より理解の進む講義としたいため、誤りを恐れずに積極的に議論に参加して戴きたい。
・日程
1. 「民法」とは何か?: 「法」としての民法、「法律」としての民法①
日常生活の具体的な事例のどのようなことが民法に該当するかを、ディスカッションの上考えてみる。
2. 「民法」とは何か?: 「法」としての民法、「法律」としての民法②
現在通用している、法典としての「民法」以外にも法典としての「民法」ではない民法に相当する法(コモンロー上のContract, Torts等)の存在を知った上で、法典法のメリット・デメリットを考える。また、法典法であっても、その形式にはどのようなものがあるかを考える。
3. 「民法」とは何か?: 「法」としての民法、「法律」としての民法③
今日の日本民法典に至るまで、どのように議論がなされてきたか、ローマ法(特に提要法学の発展)から、ナポレオン法典、ドイツ民法典、本邦への継受といった史的文脈を概観する。
4. 民法の基本原則(信義則と権利濫用)
ここでは、民法総則のうち、特に民法の基礎ともいえる、信義則及び権利濫用について、判例をベースに学習する(教科書2.第9章)。
5. 人①
民法における「主体」はなにかを学習する。とりわけ、私権の享有から喪失時期について(「時期」がどのような影響を及ぼすか。同時死亡推定の意義)。
6. 人②
民法における「主体」はなにかを学習する。とりわけ、権利能力の制限について。
7. 人③
民法における「主体」はなにかを学習する。とりわけ、法人や権利能力なき社団とは何かについて。
8. 物
民法における「客体」はなにかを学習する。
9. 法律行為①(総論)
法律行為とは何か。概要を説明した上で、具体的にどのようなものがこれにあたるか、ディスカッションを行う。その後、ディスカッションを踏まえてその概要について説明する。
10. 法律行為②
法律行為の成立について。特に、「意思表示」の意義をめぐって。
11. 法律行為③
無効な法律行為について。公序良俗、心裡留保、虚偽表示とは何か。
12. 法律行為④
取消しの意義と取り消されうる法律行為について。錯誤についての検討。
13. 法律行為⑤
取り消されうる法律行為について。詐欺・強迫について。
14. 代理・条件・時効
代理に関する基礎理論と、条件、時効。
15. 教場試験
後述。

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
① 講義内容について、必ずしも全ての内容のノートテイクは求めませんが、必要に応じて配布するレジュメに各人のメモを加えるなどの形で、後で自身が見直した際に理解できるようにしておくことを求めます。
② 六法は常に持参してください。特に、条文中のどの文言にどのような解釈・争いがあるかは、民法典解釈に於いて最も重要なものとなります(テクスト研究的手法)。
③ 適宜ディスカッションを行うため、授業中は集中し、自身の考えをまとめておいてください。尤も、理解できないという場合は人間である以上誰しもありますので、その際は直ちに挙手の上、質問してください。この世に愚問はありません。あるとすれば、それは「これは愚問であるか?」という問いのみです。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
・予習: 上記・授業計画に挙げたキーワードを指定教科書や図書館などで調べてみてください。
・復習: レジュメを読んだ上で、レジュメにも指定教科書のページを予め脚注に書いておきますので、それに従って併せて復習してください。
・教員への個別質問: 授業後に質問に来るでも良いですし、下記オフィスアワーに弊研究室にいらっしゃった場合、対応致します。本講義の担当教員は質問されるのが大好きなので、恐れずに質問に来てください。

【成績の評価】
・基準
民法総則分野の基礎知識の定義を適切に理解しているか、そして、その内容を個別具体的事案に適用し、扱うことができるかを問う。その意味で、定義・議論に関して記述する抽象問題を二題(30点*2)、事例問題を一題(40点)の100点満点とする(評価への割合はこれを以て100%とする)。
・方法
方法としては、上記の通り、期末試験100%とするが、上に述べたように、本講義は講義内にて適宜学生の発言を促す目的で、積極的な発言を行なったものは、その正誤に関わらず加点する場合がある(評価は試験100%として行うが、加点要素とする)。

【テキスト・参考書】
① 潮見佳男=滝沢昌彦=沖野眞已『民法1 総則』(有斐閣, 2024)
② 民法判例百選Ⅰ 総則・物権 [第9版](2023)

【その他】
・学生へのメッセージ
民法は、体系の学問であり、また、その体系自体が算法を為しているものであります。従って、学習に於いては、常に「自分が今、どの体系のどこにいるか」を意識してください。この上で、民法という、具体的事象を検討する上でのアルゴリズムがどのように形作られているのかを考えて之くと、学問としての法学が楽しくなると思います。
・オフィス・アワー
月曜日14:00-15:00。

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