【授業の目的】
環境経済学1は、ミクロ経済学の考え方や分析手法を応用しながら、環境問題発生の潜在的原因や、環境政策に関する理論的背景や意義を理解する。そして、環境経済学が取り扱う問題とはどのようなものであり、環境経済学が提供する回答とはどのようなものであるかについて、大局的な理解を獲得することを目的とする。
【授業の到達目標】
本講義の到達目標は以下の3点である。
1. 環境問題とはどのような問題であるか理解できる。そして、その発生メカニズムについて、経済学的観点から説明できる。
2. 環境問題への対応として用いられる経済学的アプローチについて理解できる。
3. 今後の環境政策への応用を念頭に、データを用いた実証的研究を読み、内容について討議できる。
【授業概要（キーワード）】
環境問題、公害問題、SDGs、経済学、政策
【科目の位置付け】
本講義は、経済学的観点から環境問題およびその対策について理論的に考察し、今日における諸問題に対する体系的な理解を獲得するものである。
【SDGs（持続可能な開発目標）】
06.安全な水とトイレを世界中に
09.産業と技術革新の基盤をつくろう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
【授業計画】
・授業の方法
教科書の精読を中心に講義を進める。また、毎回の講義ではトピックに応じた学術論文を配布し、内容に関する議論を併用しながら講義を実施する
・日程
1. イントロダクション：経済発展と環境問題（4/12（金））
様々な環境問題の事例を取り上げ、その具体的内容について議論する。特に、経済の拡大とそれに伴う環境問題の拡大について理解する。さらに、加害（原因）と被害の時間的・空間的広がりについて考えるとともに、その解決の難しさについて概観する。
2. ローカル環境問題：廃棄物問題と循環型社会（4/19（金））
環境問題の中でもローカル・レベルで発生する廃棄物問題を取り上げる。現在の大量廃棄社会が環境にもたらす悪影響を理解し、循環型社会の実現に向けた取り組みについて理解する。
3. グローバル環境問題：気候変動（4/26（金））
環境問題の中でも、グローバル・レベルに発生する気候変動問題を取り上げる。気候変動問題への対応として、どのような国際的な枠組みが実行されているのか、そしてその影響について理解する。
4. ミニテスト1（5/10（金））
5. 環境問題の潜在的原因（1）：外部性と市場の失敗（5/17（金））
環境問題をもたらす潜在的な原因を、経済学的観点に基づいて理解する。今回は外部性に着目し、外部性がどのように環境問題を発生させるのか、そのメカニズムを学ぶ
6. 環境問題の潜在的原因（2）：共有資源の利用と管理（5/24（金））
環境問題をもたらす潜在的な原因を、経済学的観点に基づいて理解する。今回は共有資源に着目し、環境発生のメカニズムを学ぶ。
7. 環境問題の潜在的原因（3）：公共財とフリーライド問題（5/31（金））
環境問題をもたらす潜在的な原因を、経済学的観点に基づいて理解する。今回は公共財に着目し、環境発生のメカニズムを学び、また、環境問題が解決に向かわない潜在的原因を学ぶ。
8. ミニテスト2（6/7（金））
9. 環境政策の基礎的理論（1）：直接規制（6/14（金））
環境問題に対応するために、どのような環境政策が実行されているのか、経済学の観点から理解する。今回は、直接規制と呼ばれる政策を学び、その影響や利点・欠点について学ぶ。
10. 環境政策の基礎的理論（2）：環境税と補助金政策（6/21（金））
環境問題に対応するために、どのような環境政策が実行されているのか、経済学の観点から理解する。今回は、経済学的手法である環境税や補助金政策を学び、その影響や利点・欠点に付いて学ぶ。
11. 環境政策の基礎的理論（3）：直接交渉（6/28（金））
環境問題に対応するために、どのような環境政策が実行されているのか、経済学の観点から理解する。今回は、加害者と被害者の間の直接交渉による解決について学び、その影響や利点・欠点に付いて学ぶ。
12. 環境政策の基礎的理論（4）：排出量取引（7/5（金））
環境問題に対応するために、どのような環境政策が実行されているのか、経済学の観点から理解する。今回は、経済学的手法である排出量取引政策を学び、その影響や利点・欠点に付いて学ぶ。
13. 環境政策を考える：政策手段の選択（7/12（金））
実際に実行される環境政策はどのように選択されるのだろうか。複数の環境政策の種類のうち、どの政策を選択することが望ましいのかについて学ぶ。
14. ミニテスト3（7/19（金））
15. レビュー・フィードバック（7/26（金））
本講義のまとめとして、講義全体を振り返る。講義中に課した課題についてのフィードバックを通して、学生の理解を促進する。
なお、講義の進み具合、時事問題への言及、環境経済学分野の最新の研究動向を反映し、講義内容を一部変化させることがある。その際には、事前に学生に周知することとする。
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
指定されるテキストを入手することを推奨する。
共有される論文は必ず目を通すこと。
・授業時間外学習（予習・復習）のアドバイス
授業の宿題として指定された問題は必ず提出するとともに、テキストや参考文献に目を通して、内容の適切な理解に努めること。
与えられた課題を理解できるよう、図書館やインターネットを活用し情報収集や配布資料の事前学習を行い、自分の考えをまとめておくことを推奨する。
【成績の評価】
・基準
環境問題とはどのような問題であり、その発生メカニズムを経済学的観点から説明でき、環境問題への経済学的アプローチについて理解できることを最低限の合格の基準とする。さらに、今後の環境政策への応用を念頭に、データを用いた実証的研究を読み、その内容について討議できることを求める。
・方法
ミニテスト30点（10点×3）、期末レポート70点の配点とする。
【テキスト・参考書】
この講義の参考書は以下の通り。
『栗山浩一, 馬奈木俊介著，「環境経済学をつかむ（第4版）」，有斐閣，2020年』
『ニック・ハンレー, ジェイソン・ショグレン, ベン・ホワイト著;田中勝也編訳「環境経済学入門」，昭和堂，2021年』
【その他】
・学生へのメッセージ
講義では、学生からの意見やコメント、質問など、積極的な講義への参加を歓迎します。また、本講義の受講にあたっては、ミクロ経済学の入門レベルの知識を有することが望ましいですが、適宜、講義中あるいはオフィス・アワーの時間を使って理解の促進に努めます。
・オフィス・アワー
初回講義でアナウンスします。
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