【授業の目的】
私たちは、この世に生を受けたまさにその日から弛むことなくこの身に降り注ぐ「当たり前」を真っさらな心で飲み込み、それを羅針盤のようにして生きてきた。そしてその一部始終はほとんど私たちの無意識下で行われてきた。この当たり前が、あるときは私たちを助け、あるときには私たちをきつく縛り、いずれにせよ常に私たちと共にあった。人類学という学問は、この当たり前を私たちの意識下に晒し、詳らかにするとともに、新しい自分を手に入れるきっかけをもたらす。世界を見るための新しいレンズを与えてくれるといってもいい。この授業では、新しく手に入れたレンズで山形(および日本社会全体)が抱える諸問題をあぶり出し、新しくなった自分でそれらに立ち向かっていく。
【授業の到達目標】
・自己の相対化をとおして、世界を見るための新しいレンズを手に入れる。 ・フィールドワークを通じて、山形の地域社会における現状の一端を知る。 ・自らの目で見つけた問題について、その解決方法を考察し、自らの言葉で説明できるようになる。
【授業概要(キーワード)】
放置林・耕作放棄地、自然災害、有害鳥獣被害、離農、エネルギーの創出と消費、伝統文化の消失、高齢者・障害者のケア・介護
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
C-1.自分の意見をまとめて発表する機会がある。:1~25% D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25% C-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を発表し理解してもらえるようプレゼンテーション、質疑応答、リフレクションを行う機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
本授業では、山形が抱える社会問題についての学びを通して、地域を構成し運営できる自立した「人間力」を身につけていくことを目指す。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
01.貧困をなくそう 02.飢餓をゼロに 05.ジェンダー平等を実現しよう 07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに 08.働きがいも経済成長も 09.産業と技術革新の基盤をつくろう 10.人や国の不平等をなくそう 11.住み続けられるまちづくりを 12.つくる責任つかう責任 14.海の豊かさを守ろう 15.陸の豊かさも守ろう 16.平和と公正をすべての人に
【授業計画】
・授業の方法
事前学習としての講義の内容を踏まえた上で、山形市内や西置賜郡小国町などにおいてフィールドワークを実施し、山形が抱える諸問題をあぶり出す。それらの諸問題にどう立ち向かうのか、具体的に何をすべきなのかを共に考える。
・日程
DAY1(7/6 土):事前学習とフィールドワーク(山形市内) 【午前】講義:人類学とは/人類学の視点から社会問題を考える 社会問題に取り組む実例の紹介①:鬼越の森再生プロジェクト 〜放置林および有害鳥獣がもたらす諸問題への取り組み 【午後】社会問題に取り組む実例の紹介②:消えゆく伝統を前に何をすべきか を考える〜山形の離島・飛島の「塩辛」調査から 社会問題に取り組む実例の紹介③:「日本をごちゃまぜにします!」 〜壁のない世界での多様性の追求/高齢者・障害者のケアや介護ついて (招待講師:JOCA東北・河合憲太さん)
DAY2(7/13 土):フィールドワーク(西置賜郡小国町) ※山形大学から小国町までマイクロバスで移動します。 【午前】社会問題に取り組む実例の紹介④:山形のエネルギー事情と 木質エネルギー利用の推進について(招待講師:ペレットマン 小国・高橋睦人さん) 【午後】社会問題に取り組む実例の紹介⑤:離農やハンターの激減が 引き起こす諸問題について(招待講師:奥川入・横山隆蔵さん) 民宿「奥川入」に宿泊
DAY3(7/14 日):フィールドワーク(西置賜郡小国町) 【午前】伝統的な山での暮らしを見学・体験
DAY4(7/27 土):成果発表 【午前】学生による文献・実地調査の成果発表
参加費用:11,000円(宿泊費・3日間の弁当代込み) ※初日の授業開始前に徴収します。
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
教員や招待講師による一方通行の講義ではなく、フィールドワークをとおして、履修学生との対話のなかで授業を進めていく。学生たちは漠然と受講するのではなく、質疑応答に積極的に参加し、自分の考えを述べることが期待される。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
・授業で扱うテーマについて、授業前にテキストを精読しておく。 ・さらに理解を深めるために図書館やインターネットで調べてみる。
【成績の評価】
・基準
合格の基準は次のとおり: ・人類学の基本的な概念や用語、考え方を正しく理解していること。 ・授業をとおして得られた知識や経験にもとづいて主体的に考察し、積極的・能動的に発言できること。
・方法
・平常点(20%)と成果発表の評価(80%)の合計をもって評点とする。 ・毎回の授業後にWebClassで設置される「出席カード」に、授業を聞いて感じたこと・考えたこと・質問・要望などを書いて提出してもらう。これを平常点として換算する。
【テキスト・参考書】
・T.インゴルド(著)『人類学とは何か』亜紀書房 2020年 ・松村圭一郎(著)『はみだしの人類学』NHK出版 2020年 ・奥野克巳(著)『これからの時代を生き抜くための文化人類学入門』辰巳出版 2022年 ・白石哲也・松本剛・奥野貴士(編著)『わたしたちの調味料のルーツを探る旅① 研究者、魚醤と出会う 〜山形の離島・飛島塩辛を追って』文学通信 2024年
【その他】
・学生へのメッセージ
・すべての活動が週末におこわなれ、スタート時刻が早くに設定されていますので、遠方から通学する人は気をつけてください。 ・バスや宿の手配がありますので、スケジュール調整を万全にしてから履修登録してください。履修登録完了以降のキャンセルは基本的には受け付けないことをご了承ください。
・オフィス・アワー
・水曜日11:00~12:30(人文社会科学部3号館8階 松本剛研究室) ・連絡先:gocito@human.kj.yamagata-u.ac.jp ・事前に電子メールでアポイントメントをとること。
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