【授業の目的】
ふだん何も意識することなく使っていることばを少し立ち止まって眺め,TVドラマのビデオや4コマ漫画なども題材としながら,身近に出会うことばの興味深い現象を取り上げて,「言語学」でそれをどのように分析・研究しているかを理解することを目的とする。その際,私たちが日常使っている「ことば」について「なぜ?」という問を発することから出発し,ことばをさまざまな角度から分析することによってその問に答えようと試みる。
【授業の到達目標】
この授業を履修した学生は, (1) 言語学の基本的な考え方を理解し,自分たちが使っている「ことば」のさまざまな現象を分析・説明することができる。【知識・理解】 (2) 自分たちが使っている「ことば」について考える態度・能力を身につけることができる。【態度・習慣】
【授業概要(キーワード)】
言語学入門,ことばの分析,語用論,意味論,統語論,形態論,音声学・音韻論
【科目の位置付け】
ことばに関する学問的問題に関心を導き,問題解決のための手がかりを与え,論理的かつ批判的な思考力の涵養を図ります。
【授業計画】
・授業の方法
ゴミ収集日の朝,妻が夫に「まだゴミ出ていないわよ」と言います。この言葉を聞いた夫の多くは,おそらく出勤途中に家庭のゴミを集積所に持って行くことになるでしょう。もし,夫が「そうだね」と一言だけ言ってそのあとに何も行動を起こさなかったらどうなるでしょうか。実は「まだゴミ出ていないわよ」という妻の言葉は,一種の命令の効力を持っていると考えなければなりません。妻の言葉の中には文法でいう「命令形」は一切使われていないのになぜでしょうか。これは,「言語学」という学問の中の「語用論」という分野で扱う問題の一例です。このような実際の言語現象を一例として,言語学がそれにどのように答えているのかを見ながら,ことばの仕組みについて講義形式で解説します。対面授業です。
・日程
・第1回 ガイダンス ・第2回-第5回 「まだゴミ出ていないわよ」―発話の伝達上の効力[語用論] 第2回:語用論とは 第3回:直示表現,前提 第4回:協調の原則,発話行為 第5回:関連性 ・第6回-第10回 鶴(英語crane)とクレーン―メタファーの世界[意味論] 第6回:意味の成分分析 第7回:語と語の意味関係(上下関係,反義関係,構造的意味関係) 第8回:カテゴリー化 第9回:多義性 第10回:メタファー,メトニミー,シネクドキー ・第11回 黒い目のきれいな女の子(「きれいな」のは何でしょう)―文の構造の解明[統語論] ・第12回-第13回 「馬糞ウニ」は食べられますが「ウニ馬糞」なら食べられません―語の構造を解明する[形態論] 第12回:形態素 第13回:語形成 ・第14回 「フリーマーケット」は「自由な市場」?―日本人にはなぜRとLの区別が困難か[音声学・音韻論] ・第15回 まとめと学期末筆記試験
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
ノートを取りながら講義を聴き,不明な点は遠慮なく質問してください。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
ノートと配付資料を読み返し,講義内容を確実に理解して下さい。また,質問に対する回答や講義内容に対する発展的事項をWebClassに載せますので,毎週必ず読んで疑問点を解決し,理解を深める努力をしてください。
【成績の評価】
・基準
(1)言語学の基本的な考え方を理解していること,(2)ことばのさまざまな現象を分析・説明することができること,および,それらを自分のことばで的確に表現できることが合格の基準です。
・方法
学期末筆記試験(配付資料・ノート・参考書(辞典類は除く)の持ち込み可)90点,授業参加度10点。授業を6回以上欠席した場合には,筆記試験の受験資格が与えられません。
【テキスト・参考書】
《テキスト》使用しません。配付資料は,WebClassのシステムから閲覧できるようにします(教員側で印刷して全員に配付する資料もあります)。 《参考書》言語学全般について体系的に理解したい人には,次の一冊を薦めます。 ジョージ・ユール著,今井邦彦・中島平三訳(1987)『現代言語学20章』大修館書店 「ことば」について考える材料として,以下の一冊を薦めます。 川添愛(2023)『世にもあいまいなことばの秘密』ちくまプリマー新書
【その他】
・学生へのメッセージ
「ことば」を題材に,身近に見られる現象が学問の対象となることを知り,それがどのように分析されるかを理解しましょう。
・オフィス・アワー
月曜日:16時30分から17時30分,金曜日:12時から12時30分(池田光則研究室)
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