【授業の目的】
近年、発展のめざましい脳科学の知見をわかりやすく整理して、教育現場で必要とされる科学的知識とそれらを根拠とした障害児への支援の可能性を探る。主として、知的障害および発達障害を対象とするが、視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・病虚弱に至るまでを幅広くカバーし、それら障害に関わる諸問題に関して定型発達児との比較を通じながら、脳科学の観点から、特別支援学校での障害児から通常学級での健常児への支援までを視野に入れて、基礎的知識の習得から学校場面で必要となる実践的な知識の獲得を目指す。知識の教育現場へのフィードバックにより、科学的実証に基づく知見(evidence-based)から考案された個別の支援方法の開発にまで発展させられるような科学的基礎思考力を身につけることを目的とする。
【授業の到達目標】
(1)脳科学の知識を正しく理解し、初等・中等学校において、科学的成果に基づく実証的な教育を授業場面に活かしていくことができる。【知識・理解】 (2)知識の習得に対して、受け身ではなく、積極的に国内外の科学的動向に目を向ける探求心を持ち、それらを正しく捉え、得られたアイデアを子どもたちの支援に反映できる。【技能】
【授業概要(キーワード)】
認知神経科学、認知行動特性、障害特性、科学的知識、教育支援
【科目の位置付け】
(1)論理的思考力を養い、科学的根拠に基づく教育を展開できる教員としての基礎的能力の獲得と教室場面におけるその運用への発展を目指す。 (2)教職実践研究科の特別支援教育に関する科目として、脳科学研究から障害特性の理解とその教育支援への活用方法を習得するものである。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
03.すべての人に健康と福祉を 04.質の高い教育をみんなに
【授業計画】
・授業の方法
1)パワーポイントによるプレゼンテーションを中心に講義形式で実施する。 2)授業計画(日程)のテーマに沿って、関連する最新のトピックにも触れながら、多様な視点で授業を展開する。 3)授業支援システムWebclassから事前に資料をダウンロード配布する。 4)講義期間中に、教育相談活動や附属特別支援学校で開催される公開研究会等に参加し、現場への知識の還元を視野に入れた取り組みを行う。
・日程
第1回 障害理解のための脳科学(特に特別支援教育に関わる教職に必要とされる脳科学の定義と学習意義) 第2回 脳神経系の基礎知識(脳に関する科学情報を誤解なく読み解くための脳神経系に関する知識習得) 第3回 脳機能の基礎知識(脳に関する科学情報を誤解なく読み解くための脳機能に関する知識習得) 第4回 脳と発達(発達段階からみた脳の成長過程を理解し、定型・非定型発達の分化過程を把握) 第5回 脳科学からみた障害児(主として知的障害児・発達障害児の行動を脳科学の視点から検討) 第6回 知的障害の定義(脳科学の視点からダウン症等知的障害の定義に関する知識を習得) 第7回 知的障害のアセスメント(脳科学の視点からダウン症等知的障害のアセスメントに関する知識を習得) 第8回 知的障害の障害特性(脳科学の視点からダウン症等知的障害の障害特性に関する知識を習得) 第9回 発達障害の定義(脳科学の視点からLD・ADHD・ASD等の定義に関する知識を習得) 第10回 発達障害のアセスメント(脳科学の視点からLD・ADHD・ASD等のアセスメントに関する知識を習得) 第11回 LDの障害特性と神経基盤(脳科学の視点からLDの障害特性と神経基盤に関する知識を習得) 第12回 ADHDの障害特性と神経基盤(脳科学の視点からADHDの障害特性と神経基盤に関する知識を習得) 第13回 ASDの障害特性と神経基盤(脳科学の視点からASDの障害特性と神経基盤に関する知識を習得) 第14回 視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・病虚弱の特徴(脳科学の視点から視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・病虚弱に関する知識を習得) 第15回 脳科学の活用(特別支援領域の学校現場における脳科学の活用方法を検討し、支援方法をプレゼンテーションにより提案) レポート課題
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
1)関連科目に目を通しておく。 2)授業のポイントを押さえながら聴講する。 3)授業内容のポイントを中心にノートを整理してまとめる。 4)配布資料とプレゼンテーションから授業内容の理解に努める。 5)授業でおこなう活動に積極的・能動的に参画する。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
1)予習のあり方:事前配布の資料をよく読んでおくこと。 2)復習のあり方:授業で使用した資料をよく読み返し理解しておくこと。 3)その他:授業内容に関連する事項などを図書館やインターネットで調べてみること。
【成績の評価】
・基準
C (合格に必要な最低限度)基準: 授業で得た知識を自ら正しく咀嚼し、積極的に学校・授業場面に取り入れていくことができる。 1)学部卒院生:各障害児の特徴的な内容を理解しながら、その課題を考察し、記述できる。 2)現職院生:各障害児の特徴的な内容を理解するとともに、支援方法の開発を提案することができる。
・方法
以下の観点から、授業中の口頭による発表や討論、支援方法のレポートなどを中心に総合的に評価します。 1)授業における参加態度(10点)、プレゼンテーション(20点)およびレポート課題(70点)等を総合的に評価します。 2)課題発表の内容に創意工夫が見られたか。 3)主体的かつ積極的に参加し、設定された目標の到達に向けて努力しているか。
【テキスト・参考書】
1)テキスト:授業支援システムWebclassによりダウンロード配布 2)参考書:脳の学習力-子育てと教育へのアドバイス S.J.ブレイクモア/U.フリス 乾敏郎・山下博志・吉田千里 訳 岩波書店
【その他】
・学生へのメッセージ
1)障害や生きづらさに関連することについて、常に問題意識を持って、多様な視点から考えることが大切です。 2)学習した知識を教育指導・支援の中でどのように生かすことができるのかを考えながら受講しましょう。
・オフィス・アワー
1)金曜日12:10〜13:00に大村研究室(地域教育文化学部3号館5階)にて応じます。 2)その他講義で日時調整に柔軟に対応します。大村までメールしてください。
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