【授業の目的】
化学現象・生物学現象はその多様性や意外性に注目されがちだが,いずれも電子と原子核の集団運動の現れである点にかわりなく,物理学に基づく演繹的・統一的な考察がしばしば新たな知見をもたらす.この授業では,化学・生物学を含む広義の物質科学を分子レベルで理解する際に不可欠な手法として,電子状態や分子振動に関する量子理論を学ぶ.
【授業の到達目標】
1. 基礎的な多粒子系の量子力学を理解し,応用できる. 【知識・理解】 2. Born-Oppenheimer近似とHartree-Fock近似について正しく説明できる. 【知識・理解】 3. 化学・生物学の様々な話題について物理学の理論・近似手法で考察できる. 【知識・理解】 4. 授業に積極的に参加し,議題について他人に論理的に説明できる. 【態度・習慣】
【授業概要(キーワード)】
分子科学,量子化学,Born-Oppenheimer近似,Hartree-Fock近似,電子相関,学生主体型授業(アクティブラーニング)
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25% C-2.事前学習(下調べ、調査等含む)をした上で、プレゼンテーションを行い、互いに質疑応答や議論を行う機会がある。:26~50%
【科目の位置付け】
この授業は,自然科学や先端科学技術の高度で体系的な専門的知識と経験をもち,応用するための科目である(理工学研究科理学専攻博士前期課程ディプロマ・ポリシー).幅広い視野に立ち柔軟な発想のもとで多元的に考察するための素養を身につける.
【SDGs(持続可能な開発目標)】
07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに 09.産業と技術革新の基盤をつくろう
【授業計画】
・授業の方法
輪講・発表と講義を組みあわせた形式(対面)で進め,分子科学の標準的なテーマについて問題演習も実施する.関連した項目について適宜レポート課題を出す.
・日程
第1回 ガイダンスと量子力学のおさらい 第2回 水素原子 第3回 角運動量と群論 第4回 Born-Oppenheimer近似 第5回 分子の電子状態 - Hartree-Fock近似(1) 第6回 分子の電子状態 - Hartree-Fock近似(2) 第7回 分子の電子状態 - Hartree-Fock近似(3) 第8回 分子の電子状態 - Hartree-Fock近似(4) 第9回 分子の電子状態 - 二原子分子の分子軌道と電子配置 第10回 分子の電子状態 - 電子相関と配置間相互作用法 第11回 分子の電子状態 - 電子相関と密度汎関数法 第12回 分子の電子状態 - いくつかの応用例 第13回 二原子分子の振動・回転状態 第14回 多原子分子の振動・回転状態 第15回 まとめ
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
分子科学の概念を量子力学の基礎事項と関連づけながら整理・理解し,実在系へ応用するなかで理解を深めましょう.受講者には積極的な議論への参加を求め,プレゼンテーションもしてもらいます.
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
1. 準備学修に必要な学修時間の目安は,90分の授業あたり4時間です. 2. 次回の範囲を各自予習し,必ず自分で式を導出すること.この授業では予習を前提とし,レポート課題も課します.なお,量子力学の基礎知識が必須です(授業でも適宜説明しますが,自学自習もしておいて下さい).
【成績の評価】
・基準
授業の到達目標で示した基礎的事項について,理論的な概念や数式を正しく理解・応用できていることを合格の基準とします.とりわけ以下の事項を中心に評価します. 1. 分子科学の理論手法に関する基礎事項を理解し,授業で扱う程度の基本的な問題を独力で解ける. 2. テキストを予習し,内容を理解・整理して正確にプレゼンテーションできる.
・方法
レポート点(70%),輪講・プレゼンテーションへの参加(30%)をもとに理解度を確認し,成績評価します.
【テキスト・参考書】
テキスト: 幸田清一郎ほか著,大学院講義 物理化学(東京化学同人) 参考書: 授業中に適宜紹介する.
【その他】
・学生へのメッセージ
本授業は,基礎的な一体問題を自力で解ける程度の量子力学の知識とテキストの予習が必要です.量子力学の観点から,自身の研究テーマを捉え直す機会にしてください.
・オフィス・アワー
授業時間外に学生の質問に答える「オフィス・アワー」は火曜日12時から13時で,場所はC308号室です.
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