数学特講C
 Special Lectures of Mathematics C
 担当教員:藤原 彰夫(FUJIWARA Akio)
 担当教員の所属:理学部非常勤講師
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:3年,4年  開講学期:集中  単位数:1単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
 情報の世界には,物理世界とは異なる独自の構造が潜んでいる.情報の世界を司る幾何構造の解明を目指す情報幾何学は,確率分布の集まりが内包する自然な微分幾何構造の探究を源流とする比較的新しい研究分野である.情報幾何学は当初,統計学において輝かしい成功を収めたが,確率分布族は物理学・情報理論・人工知能(AI)・システム理論・数理生物学など,他の多くの分野でも中心的な役割を担っているため,情報幾何学の適用範囲は,近年,急速な拡がりを見せている.本授業では,線形代数学や解析学の基礎的な知識のみを前提として,情報幾何学の誕生から最近の発展までを概説したいと思う.

【授業の到達目標】
(1)情報幾何学の考え方の鍵となる双対アファイン接続の概念を理解し,説明できる.【知識・理解】
(2)古典統計学および量子統計学への応用を理解し,説明できる.【知識・理解】  

【授業概要(キーワード)】
 情報幾何学,双対アファイン接続,確率分布空間,量子状態空間,統計的推測

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
 この授業は,理学部ディプロマ・ポリシー「選択したコースカリキュラムの専門的知識を身に付け,その分野の先端的な研究内容を理解し,説明できる能力を身に付けている.」に関連する.


【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに

【授業計画】
・授業の方法
 授業は次の二つから構成される.    
(1)講義:授業時間内に用語や定理の主張・証明を解説する.  
(2)演習:授業時間内に演習の時間を設ける.  
 尚,適宜,受講生からの質問やコメントを受け付ける時間を設ける.  
・日程
 次のように進める.  
第1回: 情報幾何学とは?     
第2回: 多様体のアファイン接続  
第3回: 双対アファイン接続  
第4回: 双対平坦多様体  
第5回: 確率分布空間の幾何構造  
第6回: 古典統計学への応用  
第7回: 量子状態空間の幾何構造  
第8回: 量子統計学への応用

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
(1)板書された講義内容をノートに記録したり,配布資料にメモ書きを追記するなどして,講義内容の理解に努める.分からない箇所や知らない専門用語に遭遇したら,その場で質問するか,もしくは後から自分で調べられるようにメモ等を残しておくとよい.
(2)演習の時間は,積極的に手を動かして計算する.
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
【予習】線形代数学(双対空間,テンソル,エルミート行列のスペクトル分解など)や解析学(逆写像定理,常微分方程式の解の存在・一意性など)について復習しておく.多様体に関する知識は必須ではないが,もし余裕があればその概要を学んでおくとよい.
【復習】講義中に登場した専門用語や講義内容の理解に不十分な点があった場合には,ノートやテキスト,参考資料等を参照しながら理解を深める.   

【成績の評価】
・基準
 双対アファイン接続の概念を理解し,説明することができる.古典および量子統計学における情報幾何学の応用を理解し,説明することができる.
・方法
 平常点 20%,レポート 80 %

【テキスト・参考書】
・テキスト:藤原彰夫「情報幾何学の基礎 – 情報の内的構造を捉える新たな地平 – 」(共立出版)  
・参考書:村上信吾「多様体」(共立出版)
     S. Amari and H. Nagaoka: Methods of Information Geometry (AMS and Oxford)

【その他】
・学生へのメッセージ
 本授業では,教養レベルの予備知識のみを仮定して,情報幾何学の誕生から最近の話題までを概説するので,学生諸君が現在どの分野を専門としているかに関わらず,講義を楽しんでもらえると思う.特に,数学が他の分野に働きかける柔軟さと力強さを実感してもらえたら幸いである.
・オフィス・アワー
 授業全般に関する学生からの質問は,各回の授業終了後または開始前に受け付ける.

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