量子力学演習Ⅰ
 Recitation of Quantum Mechanics I
 担当教員:安東 秀峰 (ANDO Hideo)
 担当教員の所属:理学部理学科
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:演習
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
量子力学はミクロの世界の支配法則であり,現代物理学と現代技術を支えている.干渉効果や不確定性,トンネル効果等の奇異な量子現象は身近な経験の延長線上で説明できず,古典力学とは全く視座を異にする量子力学が必要になる.この授業では,量子力学の基本的な理論構成を学び,いくつかの具体系へ応用するなかでミクロの現象を深く理解し,より発展的な内容を学ぶための素養を身につけることを目標とする.
はじめに,現代的な視点で整理された量子力学の理論体系をみる.特に状態ベクトル(波動関数)と測定にまつわる五つの原理,正準量子化について学ぶ.保存力をうけながら一次元空間を運動する粒子に量子力学を実際に適用し,その運動がいかに記述され,どこが古典的な粒子と異なるか詳解する.また,量子力学に必須の線型代数や微分積分,基礎的な複素解析について,レポート課題等を通して計算力を養う.

【授業の到達目標】
1. 量子力学で使われる数学を説明でき,適切に応用できる. 【技能】
2. 量子力学の原理と定理を,基礎的な概念と数式で説明できる. 【知識・理解】
3. 正準量子化の手続きに習熟し,実際の問題に適用できる. 【知識・理解】
4. 一体ポテンシャル問題について定常・非定常状態の波動関数を計算できる. 【知識・理解】

【授業概要(キーワード)】
状態ベクトル,波動関数,測定,シュレディンガー方程式,正準量子化,定常・非定常状態

【科目の位置付け】
この授業は,選択したコースの専門的知識を身につけ,その分野の先端的な研究内容を理解し,説明できる能力を身につけるための1科目である(理学部ディプロマ・ポリシー).選択したコース以外の幅広い理学の基礎的知識も身につける.

【SDGs(持続可能な開発目標)】
07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
09.産業と技術革新の基盤をつくろう

【授業計画】
・授業の方法
量子力学の体系を提示した後,実際に幾つかの一体ポテンシャル問題を解く.適宜レポート課題を出し,量子力学の理解とともに数学の力を向上させる.対面で実施する.
・日程
学生の学習状況に合わせて以下の内容で行う.
第1回 古典論の破綻と量子力学の基本的枠組み
第2〜4回 複素ヒルベルト空間の線型代数と量子状態
第5回 自己共役演算子と可観測量
第6回 ボルンの確率規則と物理量の測定値・期待値
第7回 射影仮説
第8回 交換関係と不確定性原理
第9回 シュレディンガー方程式
第10回 正準量子化
第11回 シュレディンガー表現
第12回 一次元自由粒子
第13回 無限に深い井戸型ポテンシャル
第14回 有限深さの井戸型ポテンシャル
第15回 期末テストとまとめ

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
数学の復習から量子力学の理論構成,具体系への応用に至るまで,数式と抽象的な概念が出てきます.授業中に基本的な概念・数式の物理的意味合いや位置づけを逐一説明します.数式の意味合いを自らよく考える姿勢を心がけ,レポート課題や自学自習に授業内容を活かしてください.
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
1. 準備学修に必要な学修時間の目安は4時間/週です.
2. 次回の範囲を各自予習しておくこと.本文の式はすべて自分で導出し,不明な点は質問してください.適宜レポートを課すので必ず提出してください.初等的な線型代数で躓く学生がいます.不安な人は講義がはじまる前に復習をすませておいてください.

【成績の評価】
・基準
授業の到達目標で示した事項について,基本的な概念や数式を正しく理解・応用できることを合格の基準とする.とりわけ以下の事項を中心に評価する.
1. 一体ポテンシャル問題を解くのに必要な程度の線型代数と微分積分を自在に使える.
2. 量子力学の原理や基本概念を理解し,それらを使って量子力学の枠組みを説明できる.
3. 測定値の確率分布や期待値を計算できる.
4. 状態ベクトルと波動関数の概念・特徴を正しく理解する.
5. 簡単な一体ポテンシャル問題を解くことができる.
・方法
レポート点(30~40%),期末テスト(60~70%)の結果をもとに理解度を確認し,成績評価する.

【テキスト・参考書】
テキスト: 清水明 著,新版 量子論の基礎(サイエンス社)
参考書: シッフ 著,量子力学 上・下(吉岡書店),J. J. サクライ 著,現代の量子力学 上・下(吉岡書店),北野正雄 著,量子力学の基礎(共立出版)

【その他】
・学生へのメッセージ
量子力学は現代科学の花形であり,物質科学の柱です.自学自習を欠かさず,数式の意味合いを一つ一つよく考えながら理解を深めましょう.講義や予習で分からなかった点は後回しにせず,その週のうちに解決するように心がけましょう.
・オフィス・アワー
授業時間外に学生の質問に答える「オフィス・アワー」は火曜日12時から13時で,場所はC308号室です.

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