【授業の目的】
法医学とは医学的解明助言を必要とする法律上の案件、事項について、科学的で公正な医学的判断を下すことによって、個人の基本的人権の擁護、社会の安全、福祉の維持に寄与することを目的とする医学である。法医学の授業では、基礎あるいは臨床医学の各項目に関する基本的な理論を基に医学的事項が社会的、特に法律が関わる案件にどの様に関与し応用されるのか理解を深めることを目的とする。特に死の判定や死亡診断書(死体検案書)の作成は(原則)医師のみが行える業務であり義務でもあるので、これらについて理解し適切に対応できる必要がある。また人が避けて通れない死に対する総合的な理解を深めることも必須であり、死から生を学ぶことによりこれまで学んだ医学的知識や理論を生への応用へ繋げることも目的とする。
【授業の到達目標】
1,法医学の対象を理解し、法医学で判明しうる事実と限界について説明できる。 2,死亡判定後などでの適切な法的対応について説明できる。 3,窒息や異常環境温度による死について説明できる。 4,機械的損傷をはじめとした外傷の形成機序を説明できるとともに、これらの形成された創傷の性状から成傷器や成傷機序を推定できる。 5,中毒による障害機序を説明でき、生じうる所見や特徴について説明できる。 6,死体現象について説明できる。 7,個人識別の方法について説明できる。 8,乳児急死や児童虐待について説明できる。 9,死後画像検査について説明できる。 10,死亡診断書(死体検案書)を正しく作成できる。
【授業概要(キーワード)】
異状死、検案、死亡診断書(死体検案書)、法医解剖、外因死、中毒、個人識別
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
<山形大学医学部医学科教育到達目標(コンピテンシー)> 1,プロフェッショナリズム 医療人としての倫理観および責任感と社会的責務を自覚できる。 2,医学的知識と問題解決能力 社会医学の知識を医療・保健活動に応用できる。 3,コミュニケーションおよび他職種連携 医師として遺族の心情や行政・司法当局の役割や医師との関係について配慮し適切な対応ができる。 4,医療の質と安全 死体や検体を取り扱うに当たり、感染や中毒などの事故の可能性を想定し対策を取ることができる。 5,社会における医療の実践 法医学で得られた情報や知識を疾病・事故・自他殺予防に活用し、災害時の検案活動や国際的な災害に対する取扱についても考察できる。 6,科学的探求と生涯学習 医学が遭遇する法律的課題の問題解決の道筋が一部解明され、医学の発展にも繋げることができる。 <医学教育モデル・コアカリキュラム(令和4年度改訂版)> PS-01-03-31, 33: 薬物の有害作用、毒物の反応性 PS-01-04-16~19: 炎症 PS-03-05-14 臓器不全 PS-03-05-04 心停止の原因分類と病態及び診断の要点 SO-03: 法医学
【SDGs(持続可能な開発目標)】
03.すべての人に健康と福祉を 04.質の高い教育をみんなに
【授業計画】
・授業の方法
対面講義を予定しているが、感染症等の影響により変更の可能性がある。下記の授業計画に従って、講義を中心に進めていくが、「死亡診断書・死体検案書作成」の講義では演習をおこなう。
・日程
令和6年度3学年2月(既に開始)~令和7年度4学年4・5月と令和8年度3学年2月に実施する。講義は年度をまたぎ実施するので注意頂きたい。講義は下記の通り実施予定であるが、変更となる場合もある。変更の際は事前にmoodle等で事前に告知するので注意すること。 令和7年3年生 2月4日(火) 5・6校時: 法医学イントロダクション 2月18日(火)5・6校時: 異常環境温度と死 令和7年4年生 4月1日(火) 5・6校時: 体表損傷1 4月3日(木) 5・6校時: 体表損傷2 4月8日(火) 5・6校時: 小児虐待死・乳児急死 4月10日(木) 5・6校時: 死後画像 4月15日(火) 5・6校時: 中毒1 4月16日(水) 5・6校時: 中毒2 4月17日(木) 5・6校時: 診療現場での法医学 4月22日(火) 5・6校時: 死後変化 4月23日(水) 5・6校時: 個人識別(含むDNA分析) 1 4月24日(木) 5・6校時: 個人識別(含むDNA分析) 2 4月30日(水) 5・6校時: 死亡診断書・死体検案書の作成(演習)1 5月1日(木) 5・6校時: 死亡診断書・死体検案書の作成(演習)2 5月7日(水) 5・6校時: 死亡診断書・死体検案書の作成(演習)3 5月22日(水) 5・6校時: 窒息 5月22日(水) 7・8校時: 日本の死因究明制度とその問題点 令和8年3年生 2月3日(火)5・6校時: 法医学イントロダクション 2月10日(火)5・6校時: 異常環境温度と死 令和8年4月以降予定 4年生 体表損傷、小児虐待死・乳児急死、死後画像、中毒、診療現場での法医学、死後変化、個人識別、死亡診断書・死体検案書の作成(演習)、窒息、日本の死因究明制度とその問題点
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
1)配付資料はあくまでもまとめであり、断片的な情報となるので、講義やテキストにより断片の隙間を補填し、体系として理解すること。 2)遅刻、私語、飲食などは他の受講生の迷惑となるので慎むこと。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
1)成書を参考にし、法医学的問題点について自分なりの疑問点を整理しておく。 2)法医学に関する事柄の理解を深めるために、書籍や新聞等を読むように心がける。 3)個人識別の項目では1学年に履修した生命科学演習(基礎遺伝学)の範囲も含む。 4)本学で実施している法医解剖は随時見学可能である。見学を希望する場合、事前にメールで連絡のこと。
【成績の評価】
・基準
まず講義への75%以上の出席が必須である。また、授業を妨害するなど不適切な授業態度がないことをもって平常点合格とする。 筆記試験は、60%以上の正答を合格とする。
・方法
出席状況や受講態度をもとにした平常点が基準に達している学生に筆記試験を課す。 筆記試験は講義内容の理解度や応用力を確認するため実施し、マークシート式および論述式筆記試験を1回実施する。合格基準に達していない場合は再試験を1回のみ実施する場合がある。
【テキスト・参考書】
標準法医学 第8版 池田典昭・木下博之編 医学書院 法医学 改訂第4版 福島弘文監修 舟山眞人・齋藤一之編 南山堂 NEWエッセンシャル法医学 第6版 髙取健彦監修 長尾正崇編 医歯薬出版株式会社
【その他】
・学生へのメッセージ
法医学を専攻しなくとも、異状死体の検案や死亡診断書(死体検案書)作成など将来臨床の現場でも医学の知識や技能が必要となる場面が必ずある。異質なものと敬遠せず基本的事項は必ず習得して欲しい。 個人情報に関する内容もあるため、講義中にスライドを撮影することを禁ずる。
・オフィス・アワー
月~金曜日(祝日を除く)9:00~17:00法医学講座で受ける。事前に連絡をとることが望ましい。
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