物理化学Ⅲ(化学・バイオ)
 Physical chemistry III
 担当教員:右田 聖 (MIGITA Satoshi)
 担当教員の所属:工学部
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:3年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:化学・バイオ工学科  科目区分:専門科目・選択必修 
【授業の目的】
自然界は、原子や分子などのミクロな粒子の集合体からなる物質系によって構成されている。この物質系を的確に把握するには、巨視的視点からの「化学熱力学」と微視的視点からの「量子化学」の両方の理解が不可欠である。量子化学は、物質系の構造・性質・反応性の本質的な理解を可能にし、現代の自然観を形作る基盤となる学問である。
本講義では、量子化学の基本概念と基礎理論の修得に重点を置く。特に、量子論の枠組みを用いて原子・分子のエネルギー、構造、反応性を定量的に議論できる力の養成を目指す。
講義では、まず簡単な力学系を例に、古典論との対比を通して量子論特有の非直感的な性質を理解する。その後、より複雑な系への応用を学び、原子・分子の構造、性質、反応性について理論的・定量的な考察を行う。また、高校までの化学と異なる特徴として、エネルギーを指標とした定量的理解の重要性を強調する。

【授業の到達目標】
(1)量子論の基本概念と原理を理解し、原子・分子の構造や性質を量子化学的な観点から説明できる【知識・理解】
(2)シュレーディンガー方程式を解き、簡単な系のエネルギー準位や波動関数を求め、その物理的な意味を考察できる【技能】
(3)量子論的な思考方法を身につけ、ミクロな世界の現象を定量的に分析できる【習慣・態度】

【授業概要(キーワード)】
シュレーディンガー方程式、波動関数、極座標、球面調和関数、動径波動関数、多電子原子、1電子近似、周期律、分子軌道法、線形結合法、変分原理、クーロン積分、共鳴積分、重なり積分、規格化、永年方程式、結合エネルギー、非局在化エネルギー、電子密度、結合次数、フロンティア軌道

【科目の位置付け】
この科目は、化学・バイオ工学科のディプロマ・ポリシー「3.(1)応用化学・化学工学及びバイオ工学の基礎知識と、それらを応用する能力を身につけている。」に対応する。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに
07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
09.産業と技術革新の基盤をつくろう

【授業計画】
・授業の方法
教科書を中心として講義を進める。
・日程
第1-3回:量子論とシュレディンガー方程式
第4-5回:箱の中の粒子モデル
第6-7回:原子構造
第8回:前半のまとめと復習
第9-11回:化学結合
第12-14回:固体の結合様式
第15回:後半のまとめと復習

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
講義では演習を含めながら進めるため、単に聴講するだけでなく、実際に計算問題に取り組むこと。また、古典力学との違いを意識しながら、量子論特有の考え方を理解するよう努めること。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
予習:教科書の該当箇所を読み、基本的な概念や用語を確認する。高校物理の波動分野と微分・積分の基礎を思い出しておくと、講義での理解がスムーズである。

復習:講義で扱った問題は、必ず自分で解き直し、その過程と解答を確認する。

【成績の評価】
・基準
授業の到達目標を達成し,基本的な問題に解答できることを合格の判断基準とする。
・方法
中間及び期末テストで評価する。合計が60点以上を合格とする。

【テキスト・参考書】
テキスト
「アトキンス物理化学要論」P. Atkins, J. de Paila著 千原秀明、稲葉章訳 東京化学同人

参考書
「アトキンス 物理化学(上),(下)」東京化学同人
「量子化学 (物理化学入門シリーズ) 」裳華房
「量子化学 基礎から応用まで(エキスパート応用化学テキストシリーズ)」講談社
「マッカーリ・サイモン 物理化学(上)」東京化学同人

【その他】
・学生へのメッセージ
分からないところは持ち越さないこと。
講義中の私語,飲食,携帯電話・スマートフォンの使用など,他の受講者の迷惑となる行為をしないこと。
・オフィス・アワー
会議や出張等で不在にすることもあるため、確実に面談したい場合は事前の連絡をおすすめします。連絡先は、初回の授業でお知らせします。

51000431-2025-05-52252