【授業の目的】
金属錯体について理解する.錯体は,実際は特殊な化合物ではなく,古くから私たちの身のまわりに存在していた.ところが,錯体の結合や性質などが詳細に理解されはじめたのは20世紀初め,Alfred Wernerが配位説を提唱して錯体化学を体系化してからである.錯体の理論は金属化合物の性質を理解するためには必要不可欠であり,生体内の金属タンパク質の性質の理解に役立つだけでなく,金属触媒を利用する合成化学工業にも大きな変化をもたらした.本授業では,以下の到達目標に沿った形で錯体の諸理論を解説する.
【授業の到達目標】
(1)錯体の命名や化学式の記述法を身につける.【知識・理解】 (2)錯体の結合様式や立体構造が理解できるようになる.【知識・理解】 (3)配位子場によるd軌道の分裂が理解できるようになる.【知識・理解】 (4)磁性・色の原因について議論できるようになる.【知識・理解】【態度・習慣】 (5)錯体の化学的性質としての配位子置換反応や電子移動反応などが理解できるようになる.【知識・理解】
【授業概要(キーワード)】
錯体;材料;陰イオン;陽イオン;磁性;錯塩;命名;軌道;色;安定度;電子移動;反応;構造;配位;配位子;配位子場;結合;d-d遷移;電荷移動;置換活性;置換不活性;有機金属;逆供与
【科目の位置付け】
この科目は,化学・バイオ工学科のディプロマ・ポリシー3およびカリキュラム・ポリシー1(2)に該当する.学生便覧中の「履修の流れ」では,3学期開講「無機化学Ⅰ」,5学期開講「エネルギー化学」「無機工業化学」,6学期開講「マテリアル化学」と密接に関連している.
【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに 09.産業と技術革新の基盤をつくろう
【授業計画】
・授業の方法
90分の講義を13回,中間試験(と正解の解説)1回,期末試験(と正解の解説)1回を実施する.
・日程
1週 錯体化学への誘い 2週 配位子の種類と錯体の結合 3週 錯体の化学式の書き方と名称のつけ方 4週 異性体①(イオン化(水和)異性体、連結異性体、配位異性体) 5週 異性体②(幾何異性体、光学異性体) 6週 d電子の方向性とd軌道の分裂 7週 錯体の性質①(色) 8週 錯体の性質②(磁性) 9週 中間試験とその解説 10週 錯体の安定度①(錯体安定度定数) 11週 錯体の安定度②(安定度を支配する因子) 12週 錯体の反応①(配位子置換反応) 13週 錯体の反応②(電子移動反応) 14週 有機金属錯体 15週 期末試験とその解説
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
原則対面形式で講義する.対面で実施できないやむを得ない理由がある場合には,リアルタイム遠隔形式またはオンデマンド遠隔形式のみで講義することもある. 教室での私語,飲食,喫煙,そのほか他の受講生の迷惑となる行為を行った場合は,受講を遠慮していただく.
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
講義で宿題が出された場合には,次回までに取り組んでおくこと. 講義内容に対する質問,感想,コメントがあればWebClassのメッセージ機能を利用してコンタクトをとること. 適宜講義内容の理解度を確認するため,試験のほかWebClassで数週おきに設問に回答してもらうことがあります.テキストと配布物の該当部分をよく復習しておくこと.
【成績の評価】
・基準
授業の到達目標のうち項目(1)~(3)の内容を中間試験で,(4),(5)の内容を期末試験でそれぞれ問う.中間試験=50点,期末試験=50点,合計100点満点として,60点以上を合格とする. ただし,対面(筆記)試験ができないことも想定し,各試験問題の一部をレポート課題等で置き換えることもある.
・方法
成績評価の必須条件として,中間および期末試験を必ず受験すること.中間試験と期末試験の結果をもとに,成績を評価する. ただし,WebClassで課した設問の回答内容を一部評価の対象とする場合もある.
【テキスト・参考書】
テキスト:理工系基礎レクチャー「無機化学」鵜沼英郎・尾形健明著,化学同人 参考書:「配位化学(第2版)」-金属錯体の化学-F.BASOLO・R.C.JOHNSON共著,山田祥一郎訳,化学同人
【その他】
・学生へのメッセージ
「無機化学I」を履修していることが望ましい.また、無機化学および有機化学の基礎を理解していることが望ましい.
・オフィス・アワー
火曜日16:00~17:00, 3号館3-3302号室 上記以外の曜日や時間帯でも,事前に相談頂ければ対応可能です. メールやWebClassのメッセージ機能も活用してください.
|