【授業の目的】
全元素化学としての無機化学の基礎、元素と分子の構造と性質に関わる共通的概念を学習すると共に、無機化学反応や物性の応用の取り扱いに関する基礎的能力を獲得することを目的とする。
【授業の到達目標】
学習を通じて、工学全般に共通の以下の能力を身に着けることを目標とします。 (1)反応の定量的取り扱いや化学反応を正しく記述できるようになる。 (2)物質の性質や反応性、機能を左右する元素の周期的性質の由来を理解し、説明出来る様になる。 (3)各族元素の基本的性質や反応性、機能性を理解し、説明できるようになる。 (4)金属錯体の構造と光化学的性質、酸化還元触媒機能について理解し、実用技術におけるそれらの応用について知識を身につける。
【授業概要(キーワード)】
元素、周期律、電子配置、分子、化学結合、酸と塩基、酸化還元、金属錯体
【科目の位置付け】
この科目は、高分子・有機材料工学科ディプロマポリシーの3「専門分野の知識と技能」について、特に高分子や有機材料というキーワードに縛られず、実用材料に対する理解や材料合成、デバイス・システムの創出に必須となる全元素化学としての無機化学について、基礎的知識の獲得とそれを実践的に利用できる能力を養うことを目標とします。また、カリキュラムポリシーの1.(7)と2.(4)に対応し、特これからの安全安心社会の構築に必要とされる産業技術を構想できる様になるための、広範な物質化学的知識の獲得を目指します。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに 09.産業と技術革新の基盤をつくろう 12.つくる責任つかう責任 13.気候変動に具体的な対策を
【授業計画】
・授業の方法
講義はパワーポイントを使用して進める。教科書の該当箇所を説明するので、教科書の情報も併用して理解を深めることが出来る。必要に応じて、教科書に書き込んだり、ノートを取ることを推奨する。毎回授業内容の復習を兼ねた簡単な小テストを行う。
・日程
第1回 無機化学への招待、単位と有効数字のおはなし 第2回 濃度の定義と表し方、pHのおはなし 第3回 酸化数の求め方と化学反応式の立て方、無機化合物の命名法 第4回 原子の構造と電子配置、量子化学の基礎 第5回 元素の周期性、電気陰性度、イオン化エネルギー、酸化還元電位 第6回 化学結合の種類と性質、分子軌道 第7回 中間テストと解説 第8回 酸と塩基、酸化と還元 第9回 典型元素① 第10回 典型元素② 第11回 遷移元素 第12回 金属錯体の構造と性質 第13回 電気化学平衡と電荷移動反応 第14回 無機工業化学 第15回 期末テストと解説、授業のまとめ
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
テキストを購入し、講義中に気づいたことなどを書き込むようにして活用することと、パワーポイントで示される講義内容について、丸写しではなく、重要と感じたことをノートに記入したり、口頭で説明されたことで「なるほど」と思ったことをメモする様にすると自分にとって有用になります。一般的な知識は、教科書により正確かつ完全に記載されていますから、丸写しは時間の無駄です。色々な用語の説明も、参考書やWeb等ですぐに調べることが出来ます。むしろ、「自分にはそう言ってもらえると分かった様に感じた」ということをメモするのが有効です。同じ事柄であっても、人によって捉え方が若干違うのが普通ですから、「自分の理解」の助けになる記録を残すのがノートの良い使い方になります。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
毎回授業の内容に関連した基本的な内容や簡単な演習問題の小テストを実施します。予習、復習において、その小テストの内容も振り返りながら、自分自身が内容を理解出来ているかどうかをチェックする様にしてください。 自分の理解が足らないと感じたり、講義や教科書の内容がどうも良く分からない、自分は正しく理解しているのか疑問だと感じたりする場合は、指定の教科書以外の参考書(無機化学の教科書として出版されている本)やWeb情報などを通じて別の言葉での説明を読んでみると良いです。それでも良く分からない場合などは、オフィスアワーを活用したり、個別にアポイントをとったりして、積極的に教員に質問、相談してください。
【成績の評価】
・基準
授業の前半では上記到達目標の(1)(2)に関わる内容を講義し、その内容の理解を中間テストで評価します。後半では(3)(4)に関わる内容を講義し、その理解を期末テストで評価します。また、毎回の授業への参加状況、学習への取組み状況とチェックするための小テストを実施し、全般的な達成度の評価とします。
・方法
小テスト(学習への取組み状況)40点、中間テスト30点、期末テスト30点の計100点で、60点以上を合格とします。
【テキスト・参考書】
テキスト 「理工系基礎レクチャー 無機化学」、鵜沼英郎・尾形健明著、化学同人 参考書 「無機化学」、長尾宏隆、大山 大著、裳華房 「無機化学」、平野眞一著、丸善
【その他】
・学生へのメッセージ
「高分子・有機材料工学科」なのになぜ「無機化学」?と思わないで下さい。例えば炭素で出来ていても、グラフェンやカーボンナノチューブは「無機材料」です。「物質」と「材料」の違いは何でしょう?有用な性質があって、それを利用することが出来る物質が「材料」です。その創出と機能応用に関する「材料化学」において、そもそも有機とか無機という様にカテゴライズすることにはあまり意味がありません。物質の性質に応じて、適材適所に材料を設計、合成、利用すれば良いのです。「有機」に拘る理由はありませんね?無機化学の真の姿は、全ての元素を相手にする「全元素化学」なのです。周期律表を眺めながら、「どんな新材料が出来るだろうか?」と構想する力がついたらしめたものです。この講義ではそういう知識と応用力を身につけることを目指します。
・オフィス・アワー
個別にメール等でアポイントをとってください
|