【授業の目的】
森林は動的生態システムであり、周辺環境からさまざまな影響を受け、その構造や種組成、形態を変化させる。一方、森林が成立することにより、周囲の環境が変化することも多々ある。森林の、あるいは流域・地域の管理や保全を考える上では、この森林生物群集と周辺環境間の動的な相互関係を把握することが重要である。これを認識・理解することが本講義のねらいである。このことにより、森林・林業・林産業および社会の実態を理解し、物事を多面的かつ重層的に考える能力を身につけることができる。
【授業の到達目標】
森林が周囲から受ける影響や、森林が周囲に与える影響についての知見を習得し、その相互関連を保護・保全・修復するための方策について、得られた知見を用いて論理的に考えることを目標とする。このことにより、森林環境資源の基礎知識を習得して、自主的、継続的に学習する能力を身につけたり、森林・林業・林産業および社会の実態を理解し、物事を多面的かつ重層的に考える能力を身につけることができる。【知識・理解】
【授業概要(キーワード)】
森林・流域生態系、立地環境因子、相互関係、動的システム、保全、修復、再生
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25% A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
この科目は、カリキュラム・ポリシーの「(1) 自主的、継続的に学習する能力を身につけるための、森林科学の基礎科目」、「(2) 森林・林業・林産業および社会の実態を理解し、物事を多面的かつ重層的に考えるための科目」にあたる。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
13.気候変動に具体的な対策を 14.海の豊かさを守ろう 15.陸の豊かさも守ろう
【授業計画】
・授業の方法
この授業は主として面接授業で行う。スライド映像と配布資料・文献により講義を進める。毎回、内容に沿った小レポート課題を提示し、講義時間内に記述・提出してもらう。
・日程
1.動的生態システム、攪乱とは何か 火山活動、流水、風、重力、人為 2.生物に残された攪乱履歴 変異樹形、年輪、森林構造、種組成 3~5.動的環境への生物の適応 流水環境、洪水攪乱、河畔林、水生植物群集 火山攪乱、荒廃地、植生侵入、パッチ状植生、成立と破壊 6~8.森林が周囲に与える影響 侵食、水環境、飛砂、微気象、雪 9.森林の環境保全機能 人間社会が望む機能、森林の保護・保全の歴史、保安林 10~11.人の行為が森林に与える影響 森林伐採、地表攪乱、更新動態、長期モニタリング 12~13.荒廃地の緑化 緑化の意義、生育環境改善、周囲環境にローインパクトな技術 14.森林の修復・再生 相互関係の分断、新たな試み、今後の課題、誰が担うのか、役割分担 15.まとめ 森林の影響や、その機能を保全する方策等に関するレポートの作成
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
パソコンによるスライド映像により主に講義を進めるため、スライドをよく見て、口頭説明を良く聞きながら要点をノートすることが内容理解には効果的である。理解できなかった点についても忘れずに書き留め、その日のうちに質問し、理解してほしい。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
小レポート課題は、毎回の講義内容を理解するポイントとなる。講義内容を復習する際に役立ててほしい。
【成績の評価】
・基準
出席率が7割以上の受講者を成績評価対象とする。毎回の小レポートと、最終レポートの内容により成績を評価する。
レポートの成績評価にあたっては、授業の到達目標で示した「森林と環境の相互関連についての知見を習得し、その保護・保全・修復の方策について、得られた知見を用いて論理的に考え適切に説明できる」ことを合格の基準とする。
・方法
毎回行う小レポート(計30点満点)と最終レポート(70点満点)を基に評価する。
【テキスト・参考書】
【テキスト】講義内容に関連する論文・資料等を講義時に適宜配布する。
【参考書】 『流域学事典 -人間による川と大地の変貌-』:新谷 融・黒木幹男編著、2006年、北海道大学出版会、ISBN4-8329-8151-X 『森林の科学 -森林生態系科学入門-』:中村太士・小池孝良編著、2005年、朝倉書店、ISBN4-254-47038-X 『砂防学講座第2巻「土砂の生成・水の流出と森林の影響」』:(社)砂防学会監修、1993年、山海堂、ISBN4-381-08137-4
【その他】
・学生へのメッセージ
地球生態システムが未来永劫持続するためには、大きな影響力を持つ私たち人間がそのシステムをよく理解し、健全な状態を保つこと、すなわち「保全的視点(アプローチ)」が必須です。講義で紹介される研究成果を学びながら、この「保全的視点(アプローチ)」の重要性について気づき、考えはじめて欲しい。
・オフィス・アワー
昼休みに研究室を訪問ください。ただし、野外フィールドに調査・外出していることも多いため、事前にメールでアポイントメントを取ってもらえると確実です。kikku@tds1.tr.yamagata-u.ac.jp
|