【授業の目的】
受講した学生が,農地・農村・森林を対象に,以下の三つの観点(テーマ)に関する近年の研究や成功事例を学び,それぞれのテーマに関する基本的な概念と基礎的な知識を得ることによって,これまでに明らかになっている『空気と水と大地』と『生き物』との相互メカニズムの理解を深めることを目的とする。特にそれぞれのテーマについて,現状ではそうした自然物を人間がマネジメント(管理・運営)できるのだろうか,どの部分ができて,どの部分がまだできていないのだろうか,どうしたら自然物を適切にマネジメントできるのだろうか,という疑問点に焦点を当てて検討する。 1.水質環境と水質保全 2.温室効果ガスと脱炭素社会 3.エネルギー転換
【授業の到達目標】
この授業を受講した学生は,授業終了段階で,それぞれのテーマについて, 1)その実態を述べることができる。【知識・理解】 2)その問題点や改善方法について主体的に考え,準備し,模倣できる。【技能】 3)その諸問題に関する基本的な概念や用語を正しく理解し,自分自身の『環境問題,食料問題,エネルギー問題』として捉え,討議できる。【態度・習慣】
【授業概要(キーワード)】
SDGs(持続可能な開発目標),水質環境保全,森林環境保全,地球温暖化,砂漠化,自然再生,バイオマスエネルギー,脱炭素社会,循環型社会,再生可能エネルギー,アクティブラーニング
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
この授業は「大地(農地と道路)」「水(水利用)」「空気と緑とエネルギー(農山村環境)」「人(社会)」の統合体を対象に,農山村の自然環境の保全と整備について様々な視点から理論的に考察で,技術者および研究者として相応しい健全な精神に裏付けられた幅広い知識を習得し,解決策を提案する力を身につけるものであり,以下のディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーに該当する。 【ディプロマ・ポリシー:】 1.豊かな人間性と社会性 (1)人類の叡智と多様性に関心を持ち,洞察力をもって主体的,自律的に学び続けることができる。 (2)健全な批判精神を持つ良識ある市民としての倫理観と責任感を持っている。 (3)変化する社会の諸問題に他者と協働的に挑戦し,地域から世界へ羽ばたく勇気がある。 2.幅広い教養と汎用的技能 (1)自分がどのような社会状況の中で生きているかを認識し,それをもとに判断し,行動できる。 (2)現代社会を生き抜くための基本技能として,論理的思考力とチームワーク力及び膨大な情報の取捨選択力を身につけ,社会生活に活用できる。 (3)他者の多様な価値観を理解し,自らの考えを論理的に説明することにより,相互理解を促進するコミュニケーション能力がある。 3.専門分野の知識と技能 (1)食料,生命,環境科学について総合的な判断力とバランス感覚を身につけている。 (2)食料,生命,環境科学について強い好奇心と探求心を身につけている。 (3)選択したコースの専門的な知識,技術,情報処理方法,語学力を身につけている。 (4)基礎科学と基礎技術に関する知識を多角的に使うことができ,多面的に応用できる技能を身につけている。 (5)研究実行力,科学的思考力,問題解決力を身につけている。 (6)「基幹プログラム」の履修者は,上記(1)~(5)に加えて,選択したコースにおけるより高度な専門知識や技術を身につけている。 【カリキュラム・ポリシー:】 1.教育課程の編成・実施等 (4)各コースにおいて定める専門的知識と能力が身につくよう,各コースに専門科目を配置する。 2.教育方法 (1)生涯を通じて主体的に学び続ける動機づけとなるような,多様で学際的な知識と技能が身につく初年次教育を展開する。また,必要に応じて,基礎学力の定着を目的とした授業時間外学習を促す。 3.教育評価 (1)学習者が到達度を確認できる明確な成績評価基準を策定し,不断の教育課程の点検と学生の学習成果を組織的に評価する。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
02.飢餓をゼロに 06.安全な水とトイレを世界中に 07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに 09.産業と技術革新の基盤をつくろう 12.つくる責任つかう責任 13.気候変動に具体的な対策を 15.陸の豊かさも守ろう
【授業計画】
・授業の方法
この授業は面接授業です。 1)テキストの精読を中心に進め,映像教材なども併用します。 2)毎回,授業の最後に授業の内容について小テストによる質疑を行います。 3)かなり平易に基礎から解説します。 4)なるべく1コマごとに内容を区切るようにします。
・日程
この授業は原則として毎週月曜日5~6校時,以下のテーマと順序で行います。 第1回目 1.技術と人間-技術の価値観と倫理観 2.地下水枯渇問題に内在する汚染物質と酸性化現象(インド・米国) 第2回目 1.水質成分と用語 2.環境管理における『持続可能な未来』と『持続可能な社会』 3.エコロジカル・フットプリントと南北格差 4.フェアトレードと循環型社会 5.地元学 第3回目 1.水質成分の分類 2.水質汚濁と被害 3.河川の水質 4.中国北京市と十堰市での水質問題 第4回目 1.法規制と環境基準-国の排水基準と汚濁物質の総量規制 2.湖沼の富栄養化 3.中国での水処理膜技術の現状と上海近郊の蘇州市(太湖や水路)での水質浄化事業 第5回目 1.水質と作物生育 2.水質と生物-琵琶湖の湖底で繁殖しているバクテリアと琵琶湖の深呼吸 2.港湾でのネガティブスパイラル 3.米国チェサピーク湾での大規模な自然再生事業 第6回目 1.農業用排水とため池の水質環境 2.リンの高度処理技術 3.干潟での同位体分析とアマモプロジェクト 第7回目 1.地下水の水質 2.降水の水質 3.埼玉県旧芝川での自然再生事業の成功事例 第8回目 1.水質変動を引き起こす要因 2.自浄作用と自濁作用 3.河川や閉鎖系水域での水質変動特性 4.西アフリカ・ベナン共和国での自然再生事業の成功事例 第9回目 1.水質調査と水質分析 2.窒素・リンの発生源 3.都市水道水の水質の現状と課題 第10回目 1.畑地や水田,森林からの窒素の流出とその浄化 2.畜産汚染 3.集水域での窒素とリンの流れ 4.広域水質環境をめぐる課題 第11回目 1.温室効果ガスと排出量取引 2.ティッピング・ポイント 3.気候変動の経済学 第12回目 1.温室効果ガス削減に取り組む国際協定 2.脱炭素社会への転換と課題 3.ドイツ・中国・米国・英国の環境戦略 第13回目 1.日本の高効率石炭火力発電技術 2.再生可能エネルギーへの転換と新技術 第14回目 1.風力発電と小型水力発電 2.太陽光発電とFIT『固定価格買い取り制度』 第15回目 まとめ-1.農地農村基盤の新たな創成 2.森林の環境保全効果 3.限りある資源から産み出す資源への転換
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
1)指定されているテキストを購入し,重要箇所は本文に線を引くなどして活用してください。 2)授業で示されるパワーポイントを参考に授業内容をノートなどに筆記するなどして内容の理解に努めてください。その際,言われたことを鵜呑みせず,自分の頭で考えてください。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
本授業科目では,以下の課題等を課します。単位制度の実質化のため,授業外における以下の予習・復習等の自主的な学修に取組んでください。 1)準備学修に必要な学修時間の目安は以下のとおりです。 2時間/週 2)各回の授業において,授業内容について小テストを実施します。毎回,しっかり準備してください。 3)テキストや参考書に目を通し,重要箇所は本文に線を引くなどして,内容の適切な理解に努めてください。 4)小テストの内容について,正解と照合し解き直すとともに,図書館やインターネットを活用し,情報を収集し,整理しながら復習し,自分の考えをまとめておく。 5)回を重ねるごとに知識の連携が必要になるので,テキストと小テストの該当箇所を自分で探し関連づける。 6)わからないことは担当教員に遠慮無く質問すること。
【成績の評価】
・基準
合格の基準:授業終了時に,授業の到達目標に示した以下の三つの事項について,授業をとおして得られた知識や経験に基づいて主体的に考察し,適切に説明・論述できることが合格の基準です。 1)三つのテーマの実態について,基礎的な事項を適切に述べることができる。 2)三つのテーマの問題点の改善方法について,主体的に考え,模倣できる。 3)三つのテーマの諸問題に関する基本的な概念や用語を正しく理解し,農地・農村・森林における『大気・水・緑・土壌に対する人為的な管理』に対して,水質環境や温室効果,燃料資源の観点から対比でき,自分自身の『環境問題,食料問題,エネルギー問題』として関係づけながら,討議できる。
・方法
授業出席回数が大学基準(「1/3を超える欠席」は不可)を満たす者について,小テスト(各100点満点)の合計を,テスト回数を考慮して100点に圧縮し,成績を評価します。 1)小テストの合計を100点に圧縮。
【テキスト・参考書】
1)この授業ではテキストとして『「清らかな水のサイエンスー水質環境学ー」((社)農業農村工学会),1998年』を使用します。 2)参考書としては『田渕俊雄 著「湖の水質保全を考える 霞ヶ浦からの発信」(技報堂出版),2005年』や『「水環境ハンドブック」((社)日本水環境学会),2006年』,『「環境白書」(国および県で毎年発行)』,『塩沢昌,山路永司,吉田修一郎編「農地環境工学(第2版)」(文永堂出版),2016年』があります。
【その他】
・学生へのメッセージ
1)「学生は単位を取得するためだけでなく,心から学びたがっている」という前提のもとで授業を行います。 2)学生を尊敬し,丁重に接します。しかし「甘やかすこと」はしません。 3)特に,窒素を中心とした水質環境や温室効果ガス,再生可能エネルギーについて,日本ならびに世界の事例を紹介しながら,相当濃密に授業します。この課題に関心があり,熱意のある人は,受講してください。 4)理系・文系を問わず,学生の積極的な参加を前提とした授業です。
・オフィス・アワー
1)授業時間外に学生の質問に答える「オフィス・アワー」を石川雅也研究室(2号館2階2252号室)において,授業終了後(月曜日)から1時間と木曜日の12:00~13:00の間に設けます。 2)会議や出張などで不在にすることもあるため,確実に面談したい場合は事前にWebClassでのメールなどで予約をお願いします。メールアドレスなどの連絡先についてはWebClassと初回の授業,コース・オフィスアワーの掲示(掲示板)でお知らせします。
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