樹木の生態と生理
 Tree Ecophysiology
 担当教員:吉村 謙一(YOSHIMURA Kenichi)
 担当教員の所属:農学部食料生命環境学科
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:3年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
樹木は環境に応じて成長し、場合によっては枯死する。「樹木の成長・枯死」を把握することは更新や植生遷移などの森林動態や炭素蓄積等の森林機能を捉える上で重要なテーマとなる。また、樹木は細胞や組織が集まったものであり、樹木が集まると森林になることから、細胞の機能は樹木の機能につながり、樹木の機能は森林の機能につながるといった「細胞―樹木―森林」のスケール横断的な視野が必要となる。そこで、本講義では「樹木の成長・枯死と環境要因の関係」をテーマとして、「樹木はどのように成長するのか?」「樹木の生死を決めるメカニズムは何か?」「樹木の成長・枯死は森林全体の構造・機能にどのような影響をもたらすか?」について「細胞―樹木―森林」のスケール横断的な視野から学ぶことを目的とする。

【授業の到達目標】
1.樹木がもつ機能を理解して、樹木が成長・枯死するメカニズムを説明できる[知識・理解]
2.小さなスケールの物事と大きなスケールの物事を関連付けて考えることができる[態度・習慣]
3.身近な樹木をよく観察し、樹木の健康状態の変化に気づく[態度・習慣]
4.おもしろいことを発見する喜びや、おもしろい発想をする楽しみを味わうことができる[態度・習慣]

【授業概要(キーワード)】
樹木生理生態、樹木の生育、森林環境、細胞から生態系まで

【科目の位置付け】
この授業は森林の構造や機能に関する諸現象に対して、そのメカニズムを説明するものである。少し物理化学的な内容を含むが、それは論理的に説明するためのツールであり、森林管理や自然観察に必要な「論理的な妄想力」や「妄想を含む観察力」を養うことを重視する。

【授業計画】
・授業の方法
スライドを印刷した配布資料をもとに授業を進める。樹木に関するミクロな機能からマクロな機能まで幅広いスケールの現象を紹介する。身近な樹木の観察から地球環境問題まで自然環境に興味が湧くような題材を準備したいと考えている。
・日程
第1回 樹木生理生態学入門~物理学が得意な樹木たち
第2回 ミクロな環境・マクロな環境~細胞内環境から地球環境まで
第3回 樹木の構造~樹木を解剖学的にみる
第4回 樹木の機能1~物質の輸送
第5回 樹木の機能2~樹木の水利用
第6回 樹木の機能3~樹木の炭素利用
第7回 樹木の成長~成長のしくみとその制限
第8回 樹木の形態~環境に応答した樹形構造
第9回 樹木の環境適応~環境ストレスに対する生理的変化
第10回 樹木の枯死~枯死のしくみと樹木医学
第11回 森林の保護~樹木病害のしくみと生態系への影響
第12回 樹木のフェノロジーと生活史
第13回 気候および立地環境と森林植生
第14回 森林の物質生産生態学と造林への応用
第15回 試験とまとめ

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
疑問点があれば積極的に質問してほしい
自然界には反例はいくらでもあるので、授業で示したことが成立しない例などの積極的な意見は大歓迎
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
日頃から樹木をよく観察してください。変な形の木や枝枯れ等には理由があるのでその理由を妄想していると樹木の見方が変わると思います。

【成績の評価】
・基準
樹木の成長・枯死のしくみを理解し、森林生態系と関連付けて論理的に説明できることを合格の基準とする。
・方法
レポート点50点+期末試験50点
レポート点の詳細についてはガイダンス時に説明する

【テキスト・参考書】
テキストは指定しないが、授業を聞いてより専門的なことに興味が湧いたら以下の参考書などを読んでもらえば知識が深まります。
Larcher 植物生態生理学 Springer
深澤和三 樹体の解剖 海青社
Campbell, Norman 生物環境物理学の基礎 森北出版
四手井綱英 森林保護学 朝倉書店
樹木医学会編 樹木医学の基礎講座 海青社

【その他】
・学生へのメッセージ
高校化学の「蒸気圧と気液平衡」「浸透圧」「凝固点降下」は復習しておいてください。
レポート課題には堅い内容を求めないので、柔軟な発想力・妄想力を発揮してください。
欠席時の補講や質問、「おもしろい木をみつけた」等の雑談は随時歓迎です。

アグリコースの受講生へ:
エココースの実習との関連で時間割表とは異なる時間に講義をおこなう場合があります。不利益にならないように工夫したいと思いますのでご相談ください。
・オフィス・アワー
いつでもどこでもだれでも対応します。廊下などでよく雑談しているのでお気軽に。
連絡先はshimuken@tds1.tr.yamagata-u.ac.jpです。

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