【授業の目的】
「手紙と音楽でたどるベートーヴェン(1770-1827)の生涯」 ベートーヴェンと言うと,音楽室に貼ってあった恐い顔を思い浮かべる人も多いと思いますが,そのイメージは,言ってみればベートーヴェンの「仮の姿」です。30歳頃からだんだんと耳が聞こえづらくなっていったのですが,当時作曲家として成功し始めていた彼は,ばれると自分の作曲家としての地位も危うくなると考え,苦虫をかみつぶしたような顔で「恐い人」という雰囲気を発しながらウィーンの街を歩くようになりました。しかし,親しい友人たちへ書いた手紙に映るベートーヴェンはそれとはまったく別人で,時に冗談を飛ばしながら,彼らとのやり取りを楽しむ姿が見て取れます。この授業では,若い頃から最晩年へと,手紙とともに彼の人生を追っていきながら,ベートーヴェンの新しい姿に触れることを目指します。 古いドイツ語は難しいのではないかと思うかもしれませんが,授業者が部分的に表現を現代風に改めますし,時代背景に関する説明もしますので,それほど心配は要りません。
【授業の到達目標】
1)文法学習用に作られたドイツ語ではなく,ドイツ人が実際に使用する生のドイツ語を理解し(一部の簡単な表現については、実際に自分でも使えるようにする),その内容を日本語で的確にまとめ発信できるようになる。 2)ドイツ語を通じて学んだことを,他言語に対しても応用できるようになる。 3)18世紀末から19世紀初頭にかけてのヨーロッパ事情,およびそこに生きた人々の思いについて,自分なりの理解を持つことができる。
【授業概要(キーワード)】
文法,読解,他言語への応用,フランス革命,ウィーン体制
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:1~25% A-3.習得した知識を活用する中で、学生自身がテーマや目的などを主体的に定めて課題探究型学習を行い、その成果を記述する機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
この授業は,18世紀から19世紀にかけてのヨーロッパ事情を学ぶことによって,さまざまな時代・地域に関する高度な理解力を養うために編成される科目です(グローバル・スタディーズコースのカリキュラム・ポリシー)。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
10.人や国の不平等をなくそう 16.平和と公正をすべての人に
【授業計画】
・授業の方法
1回の授業は、以下のように構成されます。資料はすべて,WebClassを通じて事前に配付します。 0.予習 つぎの「本文プリント」に出てくる単語を網羅した「単語リスト」によって行います。これらの単語の意味を調べることが主となります。 1.ドイツ語の読解練習 「本文プリント」に従って行います。「本文プリント」には,あらかじめ授業者による「読解のためのヒント」が掲載されていますので,それに従って授業中に試訳を作成してもらいます。 ※必要に応じて,さらに文法説明を加えます。 2.練習問題 「復習プリント」(これもその場で解いてもらいます)により,その日に学んだ文法事項・表現を復習し,実際に自分でも使える(つまり,それを使って会話できる)ものにしていきます。
・日程
※各項目につき、1回ないし2回の時間をかけて,ベートーヴェン自身が書いた手紙を読み解いていきます(進度等により,若干変更されることがあります)。 0.ガイダンス:ドイツ語では「ベートーヴェン」ではない! 1.1794年:フランス革命と反動のウィーン 2.1801年:難聴の告白 3.1803年:「ハイリゲンシュタットの遺書」 4.1804年~07年:ヨゼフィーネ・ダイム伯爵夫人との恋 5.1810年:ベッティーナ・ブレンターノとの邂逅 6.1812年:「不滅の恋人」への手紙 7.1815年:名声と苦悩、「我々は歓喜のために生まれてきているのです」 ※この辺りから,僕なりのベートーヴェン像も紹介していきたいと思います(なぜ苦難続きの人生を歩んだ彼が,最後に「歓喜」のテーマに行き着いたのか,という点に関するものです)。それを聞いて,ぜひ自分なりのベートーヴェン像を持ってみてください。 8.1815年~16年:弟カールの死と、甥の後見人問題 9.1818年:停滞期からの復活 10.1822年~24年:「交響曲第9番「ニ短調」」
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
〇背景説明:18世紀末から19世紀初頭を理解するために必要なキーワードがいくつか登場します。説明をよく聞いてください。 〇ドイツ語の読解:手紙の原文を読むために必要な文法事項をまとめます。1年次の教科書を持参し,参照しながら聞くことも有効です ※密閉容器の清涼飲料水のみ,持ち込み・飲用可とします。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
授業で扱うテキスト(「予習」「本文」「復習」の3点)はすべて,授業前日(日曜日)の15時までにWebClassにアップします。必要に応じてプリントアウトし,教室に持って来てください。授業前に行うのは「予習プリント」のみでかまいません。プリンターがない場合には,ノートパソコン等端末を持ち込んでもけっこうです。
【成績の評価】
・基準
主体的な参加の度合い,知識の修得の度合い,理解の度合い,汎用的技能(論理的思考力・文章表現力など)取得の度合いのそれぞれの項目について判定し,その合計点を用いて評価します。
・方法
授業への取り組みとレポートで評価します。授業への取り組みでは,主に主体的な参加の度合い,知識の修得の度合い,理解の度合い,レポートでは主に汎用的技能(論理的思考力・文章表現力など)取得の度合いを見ます。 授業への取り組み60点、レポート40点 ※ただし,レポート提出は必須とします。また,全授業時数の3分の2以上出席していなければなりません。
【テキスト・参考書】
プリントを配付します。 また,教員が文法表を持参し,必要に応じて黒板上に提示します。
【その他】
・学生へのメッセージ
外国語学習は,それ自体で十分目標になり得ますが,同時にいろいろな問題を考えるための非常に有効な手段にもなります。本演習では,そのどちらの側面をも視野に入れ,両者の相乗効果をねらいます。つまり,ドイツ語文をきっかけに問題を考えることによって,ドイツ語能力が向上し,また,ドイツ語能力が向上することによって,さらに様々な問題をより深く考察できるようになる,ということです。
・オフィス・アワー
木曜日12時〜13時,渡辺将尚研究室(人文社会科学部2号館3階東端(基盤教育棟側))。 ※会議・出張等が入る場合があります。事前にメール等で照会することをお勧めします。
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